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車内消毒 こんなやり方は絶対反対だ!(下)

予備勤務の廃止が狙い?

「社員の自発的行為」だと言って、予備勤務のときに運転士や車掌に車内消毒をさせようとする背景には、予備勤務を廃止しようというJR東日本の意図が隠されている。「感染症対策」をそのための“露払い”として利用しようとしていることは明らかだ。

実際JR東日本は、昨年3月に導入された改悪乗務員勤務制度をめぐる交渉の過程で、「これからは運転士の標準数100名の職場では、実際の配置は90名でいい」と平然と言っている。

今はまだ改悪制度が導入されたばかりでそこまで踏み込めていない。しかし、コロナ感染症を奇貨として、予備勤務など無くしてしまいたいと考えていることは間違いない。いざというときは、内勤や指導員、支社課員を動員すればいいと考えているのだ。

しかし、現在でも「休勤」を前提とした要員配置しかされていないのが現実だ。そんなことをしたら年休もまともにとれない職場になる。内勤・指導・支社課員などが乗る「単時間行路」が作られたことで、その分が一般行路に付けられて長大化し、運転士・車掌の労働条件は限界ギリギリだ。これ以上要員が減らされたら間違いなく重大事故が起きる。自分の首を自分で締めることはできない。私たちは感染症対策をこんな形で利用するやり方には絶対反対だ。

予備は必要不可欠な勤務だ

そもそも乗務員の予備勤務とは、急な病気・怪我、輸送障害等で乗務員が出勤できなくなった場合や、輸送混乱で乗務員の送り込みが必要な場合などに、直ちに対応するために絶対不可欠のものだ。公共交通機関である鉄道は止むを得ない時以外は止めるわけにはいかない。

しかも、鉄道業務の特性から、例え一線区の一ヶ所が何らかの理由で止まってしまっただけでも、その後続列車も全部動けなくなる。多くの運転士・車掌がその車内に長時間拘束されることになり、その前途の乗務も不可能になる。乗務員が確保できないことで他線区まで列車の遅れや運休が拡大していく等の事態が日常不断に起きる。だからこそ、予備勤務は絶対不可欠、絶対必要なものだ。

しかし、これからはそんなものは要らないというのが改悪乗務員勤務制度だった。いざという時は、内勤や指導員、支社の課員が乗務すればいいという。

だが、それは机上の数合わせだけの話だ。それぞれにはそれぞれの仕事がある。急きょ乗務することなどできない。とくに輸送混乱時の内勤の本来の仕事は、一刻も早く収束させるためにどの列車を生かし、どの列車を収容し、どこに乗務員を送り込むのか等を判断することだ。

会社の責任で発熱・体調管理を

しかもそれは、予備勤務を廃止しようという会社の意図の問題や将来の問題ではない。直ちに起きる今現在の問題だ。運転士・車掌の予備勤務の者をみんな「車内消毒」に出してしまったら、いざという時に一体どうするのか?

さらに、本当に重大な問題がある。コロナ感染症対策を真剣に考えるというのなら、本来予備勤務をもっと拡充させなければならない。

少なくとも駅員や乗務員など多くの乗客と接する仕事に従事する者については、発熱している状態で勤務させるわけにはいかないはずだ。体調管理の徹底が必要なのだ。体調管理を徹底すれば、急な欠務で予備が代務しなければならないケースが増える。

「発熱等社員の体調管理の徹底」は、「新型コロナ感染症対策ガイドライン」で自ら社会的に公表している。しかし実際は何もやっていない。

この間われわれは、出勤点呼の時に会社の責任で体温測定などをやるようくり返し求めてきた。だが、その声は全部無視され続けた。

個人にまかせたら誰でも「回りに迷惑をかけたくない」と考えて無理をする。しかも体温測定は体温計さえ置けばできることで、今やスーパーだってやっている。それを絶対やらない。

なぜか? とにかく利益のためには要員を減らしたい、運転士・車掌を極限まで削減したい、予備勤務などなくしたいと考えているからだとしか考えられない。

これが職場の現実だ。見せかけの、パフォーマンスとしての「車内消毒」など絶対反対だ。

競争で職場を引き裂くな!

JR東日本は、乗務員勤務制度を改悪した途端、今度は「運転士」「車掌」の職名まで廃止するという前代未聞の暴挙にうって出た。提案資料では、ただの「乗務係」となる運転士・車掌には、「運転法規の基本を習得すること」や「運転士の役割を理解し輸送障害対応ができること」という、従来の基本中の基本すら必要ないという書き方がされている。

そして「運転士になっても最長10年で担務変更」が制度化された。運転士や車掌は「先のキャリアを自ら描く」ための期間で、その仕事自体には何の価値もないように言い出したのだ。

そして、その間に管理者になれない者は使い捨てられていく。おそらく下請会社への出向・転籍を想定した制度だと考えられる。

職場は愕然とした思いに突き落とされた。これがコロナ禍の渦中の4月1日のことであった。JRは鉄道会社としての本義を投げ捨ててしまったのだ。

今回の「車内消毒」は「一班4人の希望者で実施する」としている。しかし、こんな職場条件のもとで行うということは、労働者同士を生き残りをかけた競争に駆り立てることを意味する。こんなことをしたら職場にゴマスリと競争、足の引っ張り合いが蔓延することになる。そんな職場には絶対したくない。

尼崎事故を思いだしてほしい。停止位置オーバーで列車を遅らせてしまった運転士は「また日勤教育で苛められる」と我を忘れて車掌に「お願いだから黙っていてくれ」と連絡し、信じられない速度で突っ走った。そして107名の生命が失われた。こんな職場にしてはならない。職場を引き裂くようなやり方は絶対反対だ!

組織拡大! 闘う労働 組合を歴史の最前線に登場させよう!

 
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