●時代が動きはじめた!
青年や女性たちが続々と闘いに立ち上がりはじめている。戦争への危機感、時代への怒りが彼らを行動へとつき動かしている。国会前は数万の若者の怒りの声が溢れ、それをおしつぶそうとする警察権力や右翼、秩序の枠の中におし込めようとする既成の指導部との攻防が続いている。時代が大きく動こうとしている。しかしそこに立つ労働組合の旗はごくわずかだ。それどころか連合は、会長自らが政府の戦略会議に加わって、大軍拡―防衛産業の全面的な強化を推進しているあり様だ。今こそ闘う労働組合を甦らせなければならない。
●戦時体制への転換
戦争が社会をのみ込もうとしている。「台湾有事」を掲げた中国侵略戦争につき進む高市政権は、7月21日、『骨太方針2026』(経済財政運営と改革の基本方針)を閣議決定した。「戦略17分野」に国力のすべてを集中することがその骨子となっている。それは、『日本成長戦略会議』と『総合的な国力から安全保障を考える有識者会議』を土台としてつくられた経緯からも明らかなように、一般的な意味で「経済財政方針」と呼べるようなものではない。それと表裏一体で秋には「安保三文書」が、22年の大改訂からわずか4年で再改訂されようとしている。防衛省有識者会議はこの事態を、「安全保障と経済成長の好循環を追求すべき歴史的転換点に入った」と胸を張っているが、高市政権の下で、戦時体制、国家総動員体制への大転換が開始されたのだ。
●「戦略17分野」とは?
今後370兆円を投資するという「戦略17分野」の中心中の中心は防衛産業である。すでに殺傷兵器を含む武器輸出が全面解禁され、「継戦能力」の確立が最重要課題として叫ばれ、軍需産業トップ・三菱重工の防衛省との契約額は5倍に跳ね上がり、日本には全く生産体制のない(9割中国に依存)ドローン等無人兵器の生産体制確立が防衛上の最大の課題とされ、防衛省は国営兵器工廠の設立まで提言しているのが現実だ。
しかも、骨太方針がうたう「17分野」のほとんどが防衛関連産業に他ならない。17分野とは、①AI・半導体、②造船、③量子、④合成生物学・バイオ、⑤航空・宇宙、⑥デジタル・サイバーセキュリティー、⑦コンテンツ、⑧フードテック、⑨資源・エネルギー安全保障・GX、⑩防災・国土強靭化、⑪創薬・最先端医療、⑫フュージョン(核融合)エネルギー、⑬マテリアル、⑬(重要鉱物・部素材)、⑭港湾ロジスティクス、⑮防衛産業、⑯情報通信、⑰海洋である。ここには、物価高や生活インフラの崩壊、格差・困窮に苦しむ労働者の姿はまったくない。
●防衛産業に関する経団連提言
経団連は、『骨太方針』の閣議決定に先だって『防衛基盤・技術基盤の抜本的強化に向けて」と題する提言を政府に提出している。その内容は、軍需産業が長期的に需要を見通せるよう、①複数年にわたり武器等を調達する一括契約の締結、②利益率の保障、③生産に時間を要する兵器については完成前に費用を支払うこと、④生産設備の増強に対する補助金の増額、⑤敵からの攻撃に備えて(軍需工場への)軍事的な防御措置を施すこと等を政府に求めたものである。マスコミはこうしたことを全く報道しない。が、こうやって社会が戦時体制にのみ込まれようとしているのである。
葬儀会社の事業組合が、沢山の戦死者がでることを想定して自衛隊との事業協定を締結したことが報道されているし、医療従事者は有事の際の後方支援ではなく「最前線職域」として位置づけ直しが行われ、鉄道でもJR貨物の事業計画に初めて「防衛省との連携強化」が明記されるなど、戦争はすでに社会の隅々を浸蝕して進んでいる。
●「骨太方針」と「労働市場改革」
『骨太方針2026』は、「戦略17分野」を横断的に貫くものとして「労働市場改革」を掲げている。この点についてはこの間も提起してきたので全面的に省略するが、その核心は、戦後労働法―労働基本権(団結権・団交権・争議権)を解体し「労組なき社会」つくろうとする攻撃で、その先兵の役割を果たしているのがJRである。17分野への「労働移動」が強引に進められようとしている。われわれは、労働法制定80年(2027年)に向け、改憲攻撃と一体で労働法大改悪攻撃が準備されていることを見すえなければならない。
『骨太方針』に基づく国家総動員体制づくりは、膨大な国家財政支出を構造化させるものだ。財政赤字は再現なく膨れあがり、その矛盾は労働者に転嫁される。それは経済に絶えずインフレの圧力がかかりつづけることも意味する。すべてが矛盾をきたし、社会の崩壊が底無しに進む。その危機がさらに戦争への衝動を激化させる。怒りの声は積みあがっている。今こそ闘う労働組合を甦らせよう。


