▼全面的な外注化
整備部門の実情は、もはや本体整備員だけでは定例整備をこなせず、定例の機体整備の半数近くを海外に外注し、なおかつ、国内でもはるかに低品質(未だ未熟練者が多数)の下請け関連会社に委託を重ね、自社整備の解体(2004年度の機体自社整備比率は24%)に突き進んでいる。なおこの問題は、「規制緩和」と称して安全のタガを緩めた国交省にも責任がある。
日航には、子会社が275社、関連会社が99社ある。その内、機体・エンジン・装備関係の整備をする子会社は9社である。
▼格差が技術伝承を解体
これらの会社の従業員は、長時間・低賃金労働を強いられている。本工から出向した整備員は、自らの労働条件を決して彼らに話してはならないと口止めされている。整備の作業指示書は、本工も下請けも全く同一のものを使っていながら、それぞれの雇用身分が違うというだけで、賃金・諸手当・休暇・福利厚生等々のさまざまな労働条件・の高低差がかなりのものだからである。
当然のごとく、両者の間には感情的なしこりを拭えず、目に見えぬ垣根がつくられ、技術的な伝承の妨げになっている。
▼職場の歪みの果てに
この格差の歪みは、整備現場で、その機体の電気配線が人為的に切断されるという事件まで惹起させている。この事件を聞いたときには「まさか!」と信じがたい驚きを覚えている。個人的経験に照らしても、会社職制(管理者)によりどんな理不尽極まりない事がなされても、その怒りを職制に向け、満身の怒りの抗議を叩きつけることはあっても、「人さまの生命」にかかわる飛行機に傷をつけるようなことは決してなかった。その労働者としての節度さえ、もはや失われてしまっているのである。
▼下請け社員の「行列」
このような無節操がはびこる中で、下請け社員の「行列」ができていると聞く。それは依願退職者が続出し、順番待ちだというのである。整備従事者の国家資格を取得すると、我慢も限界となり辞めていくのである。……
空港のカウンター業務部門でも、退職者が引きも切らず続き「採用・教育・退職」の繰り返しで、低賃金労働による委託化の弊害が出ている。
▼業務を知らない管理者
日航は問題が起こると、組織・マニュアルを作るのが実にうまい。だが、作ってもそれを見る者がいない。組織も機能しない。ただ作るだけである。当事者が逃げに回り何をやるのか、何を確認するのか分からない者がいるからである。職制(管理者)は、労務政策は一生懸命やるが、業務そのものを知らない。
この厳しい指摘に、整備担当執行役員は、「中間管理職が弱かった」との苦しい答弁であった。
▼分断・差別・対立・不信
日航内の人心の荒廃は計り知れないほど深刻な状況にある。この状況の元凶は、1965年来の「組合分裂政策」こそが、今日の危機的な疲弊状況を生み出した根源的なものである。この「分裂労務政策」は、人の絆を徹底的に分断し、差別し、対立と不信を醸成し、自己保身に汲々とする小心集団を作り出してきた。………とりわけ問題なのは、安全運航を背負う運航・整備という企業存立の要となるその現場の隅々にまでこの病原が寝食していることである。
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