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No.

進行の指示運転の問題点E

事故を起こせと言わんばかり!

こんな規程は根本的な間違いだ

複雑怪奇な取扱に

 「進行の指示運転」は、さらに重大な問題点をもっている。先に触れた ように、指示の方法は、@CTC指令が無線で指示する場合、A駅長等が指示書で指示する場合、B駅長等が構内無線で指示する場合、C駅長等が指令を介して無線通告する場合の4つのケースが定められているが、 これに加え、D代用手信号による方法、E誘導による方法を加えれば、これだけでも、場内信号機故障時の取扱いに6つものケースが存在することになる。
 しかも実際はそればかりではないのだ。「手信号代用器」が設置されている駅については、さらに3つのケースが存在することになる。

「特殊な取扱い」!

 さらには、@千葉駅での佐倉方から千葉駅に進入する場合の上り第二場内信号機、A総武緩行線西千葉駅から千葉駅に進入する場合の第一場内信号機、B二俣支線・高谷支線の1RA・5L・6LF・10R及び、総武快速B線、市川−新小岩間にある30LWは、「進行の指示運転」を行なわない、Cいわゆる構内閉そく信号機(新浦安・市川塩浜・二俣新町)は場内に対する進行の指示と同様の取扱いをする、という「特殊な取扱い」が存在し、D車内信号区間の場合、「東京駅の第一閉そく進路内では、場内冒進が考えられるのため基本的には行なわない。ただし、これを越えて運転する必要があるときは、指令が場内進路標識が見える箇所まで運転を指示する」(千葉運転区で配布された教育資料)とされている。
 こうしたことに加え、千葉支社では本社の回答はくつがえされたが( 前号参照)、同じ場内信号機故障でも、代用手信号による場合は進行できるのは第二場内までであるのに、「進行の指示」だった場合は停車場の所定停止位置までとなるという混乱の要素まである。

何をもたらすのか

 まさに複雑怪奇としか言いようのないものとなったのである。率直に 言って、運転士がこうしたことを全て明確に記憶しつづけることなど不可能に近いことだ。実際、教育・訓練が行なわれたばかりの現時点ですら、こうしたことを全て理解できている運転士や駅の係員はほとんど居ないといっていい。それどころか、指導員や指令員、支社の幹部ですら大差ない状態だ。
 こんなことを教育され場合、運転士の記憶に残るのは、「信号機が故障していようが停止現示だろうが、 指令や駅から何か言われたら、とにかく列車を動かさなければならない」 ということだけになるのはごく自然 な流れに他ならない。これが一年経ち、三年経ち、五年経ったらどうなるのか。またこれまでのように「絶対信号機」という教育を受けた世代 が居なくなり、初めからこのような 教育だけを受けた世代になったらどうなるのか、恐ろしいことだ。

「事故を起こせ!」

 しかも、場内信号機故障などの異常時に遭遇した場合、運転士や指令員は多かれ少なかれパニックになる。
大月駅の事故などはその典型だが、冷静に考えれば絶対にやってはならないことをやってしまうのが、異常時に遭遇したときの運転士の心理である。こんな複雑なことを決めるということは、「事故を起こせ」と言っているに等しいことだ。
 実際、「閉そく指示運転」のような 単純な取扱いでも、他の列車の無線を聞いていた運転士が行っていいものだと思い込んで、指令の指示を受けないまま閉そく信号機を越えてしまうという事故が千葉支社管内で発生しているのだ。
 また、JR貨物では「特殊な取扱い」などは、未だ運転士には全く教育すらされておらず、運転士は誰ひとり知らないのが現状だ。JR東日本のなかでも、「特殊な取扱い」の一部(京葉線内)は、実施の数日前になって、千葉−東京の支社間で調整ができていなかったことが発覚して、 掲示一枚で、「当面従来の運転取扱いを行なう」ということで出発せざるを得ない状態であった。

根本的に間違いだ

 要するにこれは、「場内に対する 進行の指示運転」なる取扱いが根本的に間違っているということ、無理に無理を重ねて、とにかく列車を進めろという発想だけが先行したため に、現実の場面では決定的な矛盾が 噴きだしていることを示している。
 運転取扱い等の規程にとって、最低必要かつ最も重要な条件は、何よりも、人間の判断は完全で はないことや保安装置等の動作も 異常をきたすことがあることを前 提として、それでも安全が確保で きること。単純明快であること。の二点である。このいずれの点からしても、「進行の指示運転」は、運転取扱いに関する定めとしての体をなしていないと言わざるをえない。直ちに中止すべきである。
 つづく

大失業と戦争の時代に通用する新しい世代の動労千葉を創りあげよう!
 
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