――19年は施策の面でも東労組の状況からも、労働組合の真価が問われた年ではないかと思います。
半田 東労組が崩壊したことは大きい。ほとんど抜けちゃった。社友会も幕張ではうわさ話だけ。その中で、現場では労働者代表選をやってきた。 自分も3回立候補してきたけど、票数は増えてきている。4月には現職最後の選挙に出る。ここまでくると最後くらいとってやろうという気持になったよね。助役なんかにやらせるんじゃなくてさ。
でも、おかしいと思っているのはいるんだよ。ただ、「半田に入れた」って見られるのが怖いんだと思う。会社が「ミライの車両サービス&エンジニアリング構創」とか「変革2027」を打ち出してるしね。そんな中でも票を入れてくれるのは大きいんだよね。
佐野 これまででは考えられないことが起きてますよね。会社が東労組を潰していく。業務的にもミライ構創とか、何十年かかるかなってことが1年の間に変わってきて驚きます。会社は今までのあり方を全部覆すといってる。
半田 動きも早いよね。会社の仕掛けだけど、第一組合の東労組がこうなったのは会社にとって都合のいい状況だよ。
渡辺 若い人の中には、組合の呪縛から解放されたって感じもある。いいか悪いかではなく、そう思っている人もいるんじゃないかなと。ただ、会社はそういう気持ちも利用して会社側に組織しようとしますよね。それは労働組合としてマイナスであることは間違いないですね。
――会社が東労組解体に乗り出す中、職場の状況はいかがですか。
佐野 結局、安倍の「働き方改革」で、非正規問題ではなく、正社員を保護しすぎたことが問題だって始まったことが発端でしょう。経団連の労働法規委員会の委員長がJR東の冨田会長。東労組潰しも当時の冨田社長が官邸に呼ばれて始まった。結局JRが先頭になって社会全体に拡大しろってことでしょう。分割・民営化と一緒だよ。繰り返してる。その中で自分だけしか見えなくなっちゃってる。
半田 職場の中で競争しあって、人を蹴落として自分がって職場にされちゃうよね。会社にとっては好都合だよ。
佐野 分割・民営化の時、組合がなくなったら職場だってクビになるかもしれないとやってきた。外注化に対しても、自分たちの子どもたちが非正規職で働くしかない時代にさせたくないって闘ってきた。それで俺らは10年間止めてきた。
今、JR東は国のあり方を変えるために動いてる。自分の子供を非正規職に叩き込む先頭になってるんだよね。
半田 悪い意味で「リーディングカンパニー」だよ。
佐野 そう。でも、その先頭になる会社にいるんだから止められるチャンスがある。それを考えてほしい。
――車両検修では、工場で行う保全検査の周期が60万㌔から80万㌔に延伸されるなど、象徴的に大きなことがありました。
半田 これだけじゃ済まないよね。ミライ構創とリンクしている。これからできる車両が主だから、現車両はそんなに当てはまらない。ミライ構創は30年スパンで、当面10年は基本作りといっている。それに合わせて車も作っていく。これから現場が変えられようとしているよね。
当然、周期も伸ばしてくる。今も現場と上とでギャップがある。それが大きく開いていった時、必ず事故が起きる。現場でも、みんなが出世競争になったら技術力は崩壊するよね。
佐野 会社ははっきり、現場に携わるのはグループ会社、それを管理するのがJRだって言ってますよね。JRに技術は必要ないっていう形で。それで何かあったら、業者が来てポンと交換する。
半田 それも技官次第だよ。ブラックボックスっていっても話せばある程度教えてくれる。本当に親身になって現場といろんな知識や技術を現場と共有する。そういう事ができるかどうかだと思うよ。
渡辺 会社の姿勢も伝わっちゃってますよね。ミライ構創で管理だけやればいいっていってる。技官の人も管理している側だと思っちゃってる。そうすると現場がないがしろにされる。
――会社はCBMを打ち出しています。
渡辺 会社はそう言うけど、全部データで管理すればいいってものじゃないんじゃないかと思います。データではわからないところがある。
半田 CBMって宇宙や原発関係の技術なんだよね。人がそこに行けないから、状況判断をコンピュータに任せるしかない。じゃあ鉄道はといえば、目的はコスト削減だけ。安全を守るためじゃなくて、人を減らしていかにコストをかけないかだけ。本来の目的と違う。だからろくなものじゃないんだよ。
渡辺 やったところで、人はなくせないですよね。現場で反対だって意思を表明するのが大事じゃないかと思います。
――AI化、機械化はあっても、労働者の立場がどうなるかなどはまったくないですよね。
佐野 実際に現場の人達の処遇がどうなるかとか、現場を不安にさせますよね。
半田 それも狙いだよね。あえて出してる。本体に残すのは一部だけだぞ、考えろ、どう動くか見ているぞって。そうやって不安をあおってる。
――そういう意味では課題はこれからですね。構内外注化は8年目に入り、会社の言う目安の10年まで3年をきりました。
渡辺 7年過ぎても現場は大して変わってないと思います。結局、外注化ってなんだったのか。グループ会社に技術をもたせるとか、エルダーの雇用の場の確保って言われた。だけど結局、管理者のポストづくりだったんじゃないのか。
半田 CTSプロパー社員は京葉でまた一人辞める。これで13人目の退職だよ。その中で、プロパー社員の年齢給をあげてる。この1月には契約とパートの時給を30円上げた。責任ある仕事をやらされて賃金が安い、生活できない。その中で辞めちゃう。外注化で低賃金化しようっていう施策の破綻だよね。
――今年は勝負の年になると思います。改めて職場代表選についていかがですか。
渡辺 東労組解体は会社の攻撃だけど、新しい矛盾もあります。会社も各職場で代表者選挙をやらないといけなくなった。CTS幕張事業所では、強制出向になっていた関委員長が代表をとってる。
半田 18年は3回投票をやったけど、19年は1回で過半数をとるところまで前進してるよね。自分も票数は増えてきている。何とか取りたいなと思いますよね。そもそも助役が代表なんておかしい。新聞でも「名ばかり労働者代表」って話題になった。
渡辺 30代で助役って昔はほとんどいないですよね。そういう若い世代の人達が臨検とか、現場の最先頭で活躍してもらわないといけない。それなのに、助役になっちゃう。
半田 やっぱり職場代表をかちとりたい。あと組織拡大のチャンスなんだね。組織拡大なくして安全なしだよ。会社がコスト削減するほど安全が犠牲になる。労働組合が組織を拡大して安全を守る。現場で物言って、安全を守らないと。
佐野 木更津のCTSで組合に入ってくれる人が増えてわかったんですが、みんなJRから所長で来た人は偉い人ってイメージ。逆らっちゃいけないって思ってる。
この間、動労千葉の組合員が増えたから、所長も変わってきた。ちゃんと寝る時間は休みなよとか。それも、所長がやってくれたことみたいに思っちゃう。実はこういう経緯があるんですよって話してます。少しずつ変わってきてるとは思います。労働者っていうのはこうなんだよと広めていきたい。
渡辺 現場を残そうってことは大事だと思う。自分たちの職場をどう守っていくのか。自分は先輩たちの年代まで検修一本でいきたい。自分がどう出世するかだけだと職場が関係なくなっちゃう。それじゃダメかなと。労働組合の存在意義は守っていかないと。
――動労千葉にとって、大量退職への対応は大きな課題です。
半田 車両技術分科も半分以上がエルダーになる中だから、エルダー組合員の協力なしでは進まないよね。
佐野 エルダー協議会も重視して続けたいですね。そういう中でエルダーになっても動労千葉の存在が必要だと感じてもらえるように。
渡辺 先輩方には、是非がんばっていただきたいです。
――最後に2020年の抱負をお願いします。
半田 職場代表をなんとしてもかちとりたい。CTSの職場でも、幕張では山田支部長がエルダーにいる。また幕張に来る人もいて、おもしろい状況になる。会社も幕張の関新委員長になったことは見ている。ここでJR本体、CTSの組織拡大をかちとりたい。
佐野 やっぱり組織拡大です。分割・民営化と同じで、国から言われて会社の上部が攻撃をしてきている。JR東が、労働者の権利を奪うように社会のあり方を変える先頭にたとうとしている。
若い人たちにも、自分たちがその会社にいることを考えてほしい。子どもたちの未来がかかっている。黙っていたら子どもたちの未来が潰される。それでいいのか。自分たちの子どもが大きくなって、なんだこの世の中はって言われた時、ちゃんと答えが出せる生き方をしてもらいたい。
自分たちは、非正規職だけにしたくないから外注化に反対してきた。強制出向に反対してきた。みんなにも考えてほしいって思う。
あとは組合員がニコニコ笑えるように、少しでも笑顔にできるように頑張りたい。
渡辺 一丸となって組織拡大に向けてがんばります!
(了)