労働法制改悪攻撃の現段階⑤ 労働政策の歴史的転換攻撃許すな!

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⑥最低賃金制度をめぐる「異変」
労働基準関係法制をめぐっては、もう一つ焦点となっている問題がある。この間、法定最低賃金の決定をめぐって「異変」が起きており、経団連がそれに「懸念」を表明して制度や運用の見直しを求めているのである。昨年度の最低賃金決定をめぐり、中央最低賃金審議会が示した「目安額」を上回る答申が、地方最低賃金審議会で相次いだのだ。目安額と同額の答申をだしたのはわずか8都道府県で、31県は目安額を上回る答申を出している。それをめぐって審議会の場は紛糾し、6県で採決時に委員が退席し、さらにこれまでほとんどの地域で10月に新最賃が発効していたが、使用者側の抵抗で、27県で11月以降にずれ込み、その内6県では発効が年越しとなったのである。全体を見渡して見ると、地方ほど「目安額」を上回る傾向が強くなっている。
背景にあるのは、賃金の低さ故に労働力が他県に流失してしまうことへの地方自治体の危機感であった。それは経団連も「近隣地域への人材流出防止が強く意識された」と認めている。「あまりの低賃金」「地方崩壊」が限界をこえて進行しようとしている現実がこうした形をとってあらわとなったのである。社会の崩壊とともにこれまでの最低賃金制度も機能しなくなっている現実。それは、労働者を支配する手段が失われようとしていることを示している。それは労働運動が荒々しく力をとり戻す条件が煮つまっていることを示している。
最低賃金要求は、戦後の労働運動史をみても労働者の最も切実な課題の一つで、全繊の産別最賃確立の闘いなど、数多のストライキが闘われてきた。多くの逮捕者や解雇者を出す激突となった国鉄新潟闘争も、元はと言えば、政府や国鉄当局が最賃要求の取り下げを迫ったことを発端とした闘いであった。こうした幾多の闘いと弾圧を経て作られた最賃制度は、労働運動を体制内的にとり込んでいく性格を強くもつものである。一方、この間「最賃」が大きな注目を集めるようになったのは、膨大な労働者が法定最低賃金ギリギリの状態に突き落とされていった雇用破壊攻撃と、労働運動の後退によって、とくに非正規職労働者は法定最低賃金の改訂でしか賃金が上がらないという状況が放置され続けてきたことの結果であった。経団連は「賃金引き上げの力強いモメンタムの定着」なる言辞を弄し、連合は「満額回答」を誇っているが、これが労働者が置かれた偽らざる現実である。そしてついに最賃制度そのものが崩壊しようとしているのだ。支配者階級は労働者を支配する手段を失おうとしている。階級的労働運動の復権か、戦時体制にのみ込まれていくのか、われわれは歴史の岐路に立っている。

3.26年版『経労委報告』が投げかけたもの

①「賃上げのモメンタム」「労働移動」「働き方改革」
26年版『経労委報告』のタイトルは「賃金引き上げの力強いモメンタムのさらなる定着へ」である。「モメンタム」は「勢い」という意味だが、経団連はその「勢い」が、何か自分とは関係のないところからおし寄せてきた仕方のない現実であるかのように語っている。賃金の低さも、困窮する生活も、物価高も、「いきおいかくなった次第は賃上げを唱える以外に道はない」といった感じで、すべてが徹底して自らの責任を逃れる形で述べられているのである。
少なくとも一昨年までは「構造的な賃金引き上げを加速できるかどうかに日本経済の未来がかかっているという極めて強い危機感がある」(24年版経労委報告)と、日本が主要な帝国主義陣営の一角からずり落ちようとしていることへの危機感が正面から語られていた。が、今年の報告ではそうした構えすら無くなっている。「発展途上国並みの賃金にして国際競争に勝つ」という『日経連プロジェクト報告』(1995年)以来の日本資本主義の基本路線が完全に破綻したことを総括できないのだ。
そして経団連の主張は次の2つの問題に絞り込まれていく。1つは「労働移動の推進」、もう1つは「働き方改革の深化、再構築」である。この2つは「賃金引き上げの原資の安定的確保のためには不可欠」の条件だとして賃上げと結びつけられ、“労働移動の推進なくして賃上げなし”“働き方改革の深度化なくして賃上げなし”という論理でくくられていく。さらにその背景には、「資源をもたない島国」「人口急減社会への突入」という「2つの大きな供給制約」があり、それが激しい物価高騰を生み出しているのだと危機感が煽られる。そしてそれが防衛力の抜本的強化、安全保障と経済の好循環、戦時統制経済化を求めるような主張へと集約されていくのである。

②「労働移動の推進」の本質
「労働移動の推進」は、軍需産業をはじめとした17の戦略分野への労働移動を行うことが、現在求められている労働政策の最大の課題であるとする主張だ。「政府による制度整備」も含め、ある種の強制力をもって実行しなければならないとしている。それがができなければ日本の未来はないというのである。経団連が出した別の提言では、労働移動が「国家のスクラップ&ビルド」と一体で語られている。
この問題でとくに注目すべきは、昨年の経労委報告に書き込まれた内容である。かつて戦時下で出された「労務調整令」「重要事業場労務管理令」(いずれも1942年に出された国家総動員法に基づく勅令)や戦時統制経済、産業報国連盟の結成、戦後朝鮮戦争下で制定された企業合理化促進法等をもち出して、戦時下における労働政策の問題が語られたのである。それらはすべて戦時の労働力不足に対応した「労働力封鎖政策」であったというのが経団連の主張だ。これは直接的には、定期昇給制度の歴史を述べるという形をとって書かれたものであるが、その内容は、昇給制度によって戦時経済を支えたというよりも、戦略的産業への強制的な労働移動の問題であり、今あえてこんな問題をもち出したことも含め、かつての「労働封鎖」が現在の「労働移動」と重ね合わせて主張されていることは明らかだ。

③転機となった「安保3文書改訂」
経済政策や労働政策が「戦時」を基準として語られるようになったのは、22年に「安保3文書」が改訂されたことを転機としている。ここで「国力としての国防」という考え方がこの国の基本路線となり、あらゆる省庁の予備費や基金などを「国防」に注ぎ込む体制が確立されるが、それがどれほど重大な歴史的転換点であったのか、1つだけ例をあげたい。日本の軍需産業の断トツの一位は三菱重工業だが、安保3文書改訂によって、防衛省との契約額は、22年度の3652億円から、23年度は1兆6803億円へと一気に4・6倍激増している。さらにそれが契機となって事態は一変し、「安全保障と経済成長の好循環を追求すべき歴史的転換点に入った」「防衛力の抜本的強化が日本経済の課題の解決にもつながり得るという意識をもて」(防衛省有識者会議)といった主張が溢れるようになり、「軍事関連企業の集約、国営工廠・防衛公社・公的防衛ファンドの設立」(同有識者会議)が提言されるに至る。そして今や歯止めは完全に外れようとしている。殺傷兵器の輸出が全面解禁され、「継戦能力の確立」、安保3文書の前倒し再改訂が叫ばれ、改憲へと情勢を突き動かしている。経団連が主張する「労働移動の推進」がこうした事態と表裏一体をなしていることを忘れてはならない。しかしそれは、労働者が生きるための最低限の条件、生活に不可欠なものすべてを今以上に暴力的になぎ倒して進むことをも意味しており、激しい怒りの声の噴出は不可避である。

④労働基準法制解体に向けた「働き方改革の深度化」
「働き方改革の深度化」についても、経団連はとんでもない認識を披瀝する。この間の働き方改革が「日本の労働生産性の国際的な低迷を招いた可能性がある」というのである。長時間労働の是正にウエイトが置かれすぎたためにそうなったというのだ。こんな中途半端なやり方ではダメだ、国際競争に負けるぞ、働け、稼げ、付加価値を最大化しろというのだ。
安倍政権以来のこの間の「働き方改革」攻撃は決して中途半端なものではなかった。雇用や権利を激しく破壊し、非正規職化や果てしなく続く低賃金化を進め、職場は一変していった。それによって従来の労働関係法の維持が困難になるところまで規制緩和が進められ、「抜本的見直し」が高唱されるようになった現実こそが、その攻撃がどれほど苛烈なものであったのかを示している。ところが盗人猛々しくも「時間外労働の削減に過度に注力したこと」が間違いだったというのだ。労働生産性が低下したというのなら、それは労働者をいじめ過ぎたからに他ならない。しかし経団連は経労委報告で、「労働時間をベースとしない処遇が可能な労働時間法制への見直し」を提言する。つまり「働き方改革の深度化、再構築」とは、当面する課題としての裁量労働制や変形労働時間制の全面的拡大であり、労働基準関係法制や労働基本権の抜本的解体、労働組合を社会から駆逐することをさしているのである。一昨年経団連が提言した「労使協創協議制」も、すでに前提化され、「(各企業は)各ステークホルダーと『協創』した付加価値を適切に分配する視点に立て」といった“檄“が発せられている。ここで言うステークホルダー(利害関係者)が労働組合ではなく社友会を指していることは明らかだ。憲法第28条がそんなに簡単にはつぶせないとしても、「社友会路線」によって労働組合を無きものにしていけば、労働基本権を有名無実化することができると考えているのである。

⑤高市を倒せ、戦争を止める労働者の大反乱を!
時代は大きく動き出そうとしている。ずっと抑えつけられてきた怒りの声がいよいよ我慢の限界をこえて燃え上がろうとしている。労働運動再生の条件がこれまでとは全く違う形で生まれようとしている。戦時下における労働政策の歴史的転換攻撃に立ち向かおう。反戦闘争を労働組合の本質的課題として位置づけることが求められている。イランへの侵略戦争、中国への侵略戦争を阻止しよう。高市を倒せ!
中野さんは「資本主義がつぶれるかどうかの危機の時に、本物の階級的労働運動を貫くことができるかが核心問題だ」と訴えている。そうした闘いを今の時代にこそ甦らせなければならない。(了)

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