JR東日本が昨秋発表した、「ニューフロンティア21」は、今国会で成立した、JR会社法(本州三社)を前提とした、鉄道会社の根幹さえをも転換するものであり、その枢軸をなすものが、「シニア制度」と保守部門の全面外注化攻撃である。
「シニア制度」ー外注化攻撃を裏切り、推進するJR東労組!
この攻撃の先兵となり、JRで働く労働者の権利と生活を売り渡しているものこそ、東労組の裏切りにある。東労組は、「シニア制度」と、これと一体となった全面外注化について、3月30日に裏切り妥結をしたが、その協定文の冒頭には、こう列記されている。
「シニア雇用に関する協定」第三項に基づき、運輸車両関係については、グループ企業と一体となった業務体制を構築する。そして、基本的な考え方では、運転士は国家資格を有し、車掌は営業制度の幅広いノウハウを持っている。また、車両職は車両メンテナンスの技術等を有しているが、シニア社員のウエイトが高くなっている。こうしたシニア社員に、より相応しい雇用の場の確保を図るとともに、効率的な作業体制とするためとして、日刊5321号でも詳報したように、委託可能とする業務を、
(1)車両検修業務では、
1.交番検査の、在来線の従来型車両の交番検査を整備会社に委託、電車については、ユニット単位の委託を基本とする。
2.在来線車両の車輪削正業務及びその附帯業務とKATC特性検査及びATS特性検査業務を委託。
3.事故復旧に関する業務を委託。
4.その他、車両の消耗品取替え等の業務を委託する。
(2)構内入換業務では、
1.入換業務として、運転関係区所及び駅構内における車両の運転操縦業務と出区点検・入区整備業務。作業ダイヤ単位での委託を基本。
2.同様に運転関係区所及び駅構内における車両の誘導業務。
3.車両の解放及び連結業務。
4.運転関係区所構内の構内計画業務。
5.その他構内に係わる業務として、ポイント等の清掃業務、自動給油器の取扱い、カンテラの取扱い及びポイントの手回し鎖錠等があげられ、さらには、引取検査については書面で行うとある。
以上のように、検修職場のほとんどを外注化する、そこに「シニア社員」をあてはめるという、断じて許せない内容となっている。これは、単に合理化という域を越えたものであり、鉄道業務の根幹をなしてきた、運転保安の根底的危機に直面するものに他ならない。われわれは幾度でもこの「シニア制度」ー保守部門の全面外注化攻撃に対して、鉄路に生きる労働者として警鐘を乱打し、闘いに起ちあがらなければならない。
社会保障制度の解体攻撃と密接不可分な、
悪辣な「シニア制度」を根底から粉砕しよう!
そもそもこの「シニア制度」とは、「社会保障制度改革」の中心をなす、年金制度の改悪がその根底にある。年金制度の改悪の骨子は、すでに明らかになっているとおり、
1.基礎年金の段階的引上げ-報酬比例部分の段階的引上げ
2.賃金スライドの凍結
3.保険料率の段階的引上げー支給率の引下げ
4.企業年金の解体、があげられる。
この年金制度の改悪を徹底して悪用したのが、JR東日本の「シニア制度」に他ならない。今後この「JR東日本」方式が、現在の産業再生法、民事再生法、会社分割法の先鞭をつけたように、あの「分割・民営化」方式と同様な攻撃として、全労働者に襲いかかることは火をみるよりも明らかなことだ。すでに貨物会社においては、JR東日本と同様の「シニア制度」が提案されているではないか。
また、この「シニア制度」と一体となった全面外注化攻撃は、電気、保線、信通などの保守部門において、出向ー転籍攻撃として顕在化しようとしている。これも現在、NTTにおいて、さらにはあらゆる業種において全面展開されようとしている。
以上のように、われわれが、この攻撃を単に個別の課題としてだけでなく、「第2の分割・民営化攻撃」との対決として位置づけたことの意義は明々白々だ。この視点なくして、この攻撃との対決など覚束ないものなのだ。
「シニア制度」その不当労働行為の実態!
そして「シニア協定」をめぐる不当労働行為の数々を列記してみれば、よりこの攻撃の本質が鮮明となる。昨年度すでに表面化したように、その「採用」をめぐって露骨な組合差別が行われたこと。本年度においては、来年度の退職者-1947年生まれの方たちに対する面談の中で、「シニア協定を締結していない組合に所属している人には再雇用先の資料を送付しない」ということが明らかとなっている。
何よりも、JR東日本のこの「シニア制度」そのものが、法の精神にも背いて、「雇用延長」に関する事業主の社会的責任を放棄し、逆に年金制度の改悪を悪用して総額人件費の徹底した抑制を図り、それを大合理化の推進と組合潰しの道具にするという意図に貫かれている攻撃なのだ。
この定年延長ということに関しては、2000年に改正された高年齢者雇用安定法があり、どの企業においても、従業員を60歳以降も引き続き雇い続ける努力義務が課せられている。その基本は、定年の引き上げ、継続雇用=現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度となっている。この法の精神にそって、各企業では様々な形式で、「再雇用制度」を実施し、ライフプランを提供している。
まさに、その例から言っても、JR東日本の「シニア制度」は悪辣極まりないものなのだ。
われわれは、「シニア制度」地労委闘争において、その実態を暴露し、三名の仲間を守り抜き、職場から外注化攻撃を粉砕していかなければならない。