安全崩壊―この現実を座視することはできない
6月30日、総武緩行線で発生した二件の線路故障について団体交渉が行なわれた。一件は4月4日に錦糸町~亀戸間(十間川橋梁上)で マクラギがずれて犬クギが絶縁継目部で接触し軌道きょう絡を起こした事故であり、もう一件は5月24日に津田沼駅構内でクロッシングレールが折損した事故 である。
とくに「マクラギのズレ」は、同様の事故がちょうど一ヵ月前に総武快速線、荒川橋梁上で起きたばかりのことであり、会社はそのときも「前例のないことだ」と言っていたことを考えると事態は深刻だと考えざるを得ない。
緩行線で枕木ずれ
そもそもこの箇所は、3月25日の橋マクラギ検査の際に「直角くるい」が40㎜あることが発見されていながら、「急激な変化には至ら ない」という判断で補修が先送りされていた。しかし現実にはその後わずか10日余りの間に110㎜まで拡大し、犬クギが絶縁継目部分で接触したために軌道 きょう絡を起こしたのである。
3月25日と言えば、荒川橋梁上でマクラギがずれた事故の直後のことである。会社は一斉点検を実施した等称していたが、実際は何の対策もとられないまま放置されていたのだ。
荒川橋梁の際も、昨年12月の軌道検査測で軌間がマイナス9㎜であったにも係わらず、修繕されていなかったためにマイナス14㎜まで拡大したのである。 ここには全く危機感ももたなければ、教訓化もしない、抜本的な安全対策など何ひとつ考えもしない現在のJR東日本の経営姿勢が示されている。
それだけではない。この箇所はマクラギの移動防止用のけい材が図のようにマクラギの両端にボルト止めされていた。そのボルトも折損していたというのだ。
不誠実な対応!
しかし千葉支社は、団交の席では組合側が追及するまで、これらの事実を明らかにしようともしない不誠実な対応に終始した。
組 この箇所は直前の検査でマクラギの「直角くるい」が40㎜あったことが判っていたと聞いているが事実か。
会 そのとおりです。
組 荒川橋梁の事故の直後にも係わらずなぜ直ちに修繕しなかったのか。
会 その時点たでは直ちに拡大するとは判断しなかった。結果としてはは判断の甘さがあったかもしれない。
組 この箇所はマクラギの両端に移動防止用の金具も設置されていたと聞いているが。
会 それはどうだったか?普通はカーブに付けるものだ。
組 当該箇所の現場の図面では設置されていることになっている。
会 たしかに設置されていた。
組 だとすれば、直前の検査で40㎜ずれ ていた時点で、その金具を止めてあるボルトも抜け落ちていたと考えざるを得ない。なぜ現場の状況をきちんと報告しようとしないのか。運転保安という問題を めぐって交渉しているのに、事実すら明らかにしなような対応では議論にもならないではないか。
会 おっしゃる通りです。
組 荒川橋梁の件といい、今回の件といい、事前に判っていたにも係わらず手を入れなかったことにより起きている。検査のあり方、判断の在り方について総合的に考え直さなければならないということではないか。
会 そうですね。
全く同じキロ程で
だが、問題はそれだけではない。今回のマクラギのずれは、総武緩行下り線5㎞564mで発生しているが、ちょうど1年前の4月7日、 同じ十間川橋梁の全く同じキロ程の快速下り線で、レールの継目ボルトが折損し、フックボルトと接触して軌道短絡が発生するという事故が起きている。
さらに昨年6月には荒川橋梁上で、レールボンドが脱落しやはり軌道短絡を起こしている。これは3月の荒川橋梁でマクラギがずれた事故と40mしか違わないキロ程だ。
会社は「因果関係はないものと考えている」としているが、果たして偶然だと考えることができるのだろうか、重大な疑問が残る。何らか異常な力がかかっていることは間違いない訳で、橋梁そのものにも問題が発生しているのではないかと考えざるをえない。
クロッシング損傷
津田沼駅構内で発生したクロッシング(X型に鋳造されたレール)の折損事故も原因不明のままである。1996年3月に製造され、 1999年9月に敷設されたものだというから、経過年数はいくらも経っていないクロッシングだ。しかも2週間ほど前の総合巡視では発見されていない。それ がレールの下から上に向けて約10㎝の「ひび」(15㎝という説もある)が入っていたというのである。トウ面にでは約18㎝だから単純に「ひび」と言って 済ますことのできない折損だ。
しかも支社は、「列車に影響はでなかったから事故報告はない」と称している。そんなことはあり得ないことだ。こんな姿勢こそが安全を崩壊させるものだ。断じて許すことはできない。
背景にある問題は
こうした事態が続発する背景にあるのはメンテナンス合理化-業務外注化攻撃である。保線に携わっている国労の仲間たちは総武快速線・緩行線で頻発する線路破断等について次のように訴えている。
修繕などできない現実
▼ 設備メンテナンス実施以前は2保線区(新小岩・船橋)あったが現在は1保線技術センター(新小岩)になっている。以前は新小岩、船橋にそれぞれ2つの 管理グループがあり、担当エリアを巡回・検査し不具合があれば小規模な修繕などもしていた。しかし現在は2保線区分のエリアを1つの管理グループで巡回し ているため、エリアが広くなり人が減らされ、巡回周期も延伸されているので、具合箇所を発見する機会が少なくなり、また巡回と直轄で残っている検査業務で 目一杯の状況で、ちょっとした修繕などもほとんど出来ないようになっている。
外注会社の現実
▼ 直轄の巡回は巡視員1名と管理 者1名の2名体制で行なっている ので、見通し距離の良いところは、ボルト類の緩みなどを発見すればその場で補修でき るが、退避余裕距離が取れない場合は出来ない。以前であれば後で見張り員を増員して修繕するとか、その場で応援を要請して修繕するなどしてきた。枕木のず れなど早めに補修しなければならないものは、人の手配をして応急的に直轄で補修してきた。現在でも緊急の場合は外注業者に依頼するが、業者も「慈善事業」 で会社をやっているわけではないのでボルト2、3本締めるのに人を集めても儲けにならないので、ある程度作業がまとまらないと仕事はやらない。
修繕計画を作る能力無し
▼ 直轄の巡視した人が線路の悪いところを記録し、外注会社からは外注化された検査のデータをシステムを通じて送ってくるが、管理者はそれをただ見ているだけで補修計画を立てる能力が無いという実態もある。
現場から指摘しても
▼ 荒川橋梁のマクラギは、昨年の検査で不良数が多いことがわかっていたにも係わらず、不良数の一番少ない緩行上り線から施行したことにも原因があるので はないか。快速線の不良マクラギを20~30本位交換することになっているのに 未だ交換していないことも問題だ。特に快速下り線は連続して3本、5本、 7本の不良箇所があるが、その付近には絶縁部がないから、移動や破損しても短絡することはないからやらないのか ……? いずれにせよ、安全上問題のあるところは現場から何度も指摘している。事故が起きないと何もしない姿勢は以前と全然変わっていない。現場管理者こそ決めら れたルールを守るべきだ。
▼ 荒川橋梁は前回の検測でも軌間がマイナス9㎜で、その前後の軌間も縮小していた箇所であった。チョットした油断で大きな事故も起きてしまう。現場から は「悪いから早く直せ」と言っても直さないのが現実で、逆に何かあると事情を聞かれ、責任を負わされるのは結局現場労働者だ。
報告しても無駄
▼ ルールでは枕木は3本連続不良で計画交換ということになっているが、最高8本連続して穴不良の箇所があるし、飛び飛びでの連続 不良箇所も多い。この ような実態を把握しているのに、会社はすぐにはやろうとしない姿勢だ。現場 では「報告してもやってもらえないので無駄だ」「何のための検査・調査なのか 分からない」「もし事故が起きたらどうするんだ」等々、 多くの批判がでている現状だ。
運転保安闘争へ!
また、総武緩行線などで、レール交換の際に「経費節減」を理由として、探傷検査をしているかどうかも分からない古レールが使用されて いるような実態も報告されている。さらに多くの仲間が強制出向に駆り立てられている外注先企業の労働条件の酷さには、悲鳴に近い声が多く上がっているのが 現実だ。
これがJRの現実である。こんな現実を座視するわけにはいかない。今こそ、反合・運転保安闘争の強化・再構築が求められている。闘いにたちあがろう。