4 もう一つの柱としての社会保障制度解体攻撃
国家の存亡に直結した問題として提起
もう一つの攻撃の柱である社会保障制度問題についても簡単に触れておきたい。『FD2040』では、「税と社会保障の一体改革」が最大の課題として位置づけられている。言うまでもなく狙いは「改革」ではない。抜本的な「解体」である。
二つの問題がやり玉にあげられている。一つは、「消費税で国費負担分を賄えていない現状」で、「悪化の一途をたどるわが国の財政問題は、社会保障の財源問題そのものである」と主張されている。もう一つは、「年々増加する社会保険料への過度な依存」。こちらの方は「現役世代にとって大きな負担となり、可処分所得を圧迫し、将来不安を惹起させている」「持続可能性を失っている」というのだ。
いずれも盗人猛々しい主張だが、社会保障制度の問題を“国家の存亡”に直結した問題、多少の手直しで持続することなど不可能な問題として真っ向から打ち出したことに最大の特徴がある。ここでも出口のない危機と矛盾を抱えながら「国力としての国防」路線を突っ走ろうとしているのである。
医療・介護・年金制度の抜本的改悪
「全世代型社会保障」と称して世代対立を煽る形で事が進められているが、どの世代も例外なく生きる条件が解体されようとしている。
先にも述べたように最大の焦点になっているのは、社会保障給付の4割を占める医療・介護である。すでに医療・介護で働く仲間たちは大規模な整理・淘汰攻撃の渦中ある。今春闘で医労連が「全国3千箇所」を対象にストライキを指令した背景には、医療現場で限界をこえるような激しい攻撃が吹き荒れている現実がある。
もう一つの焦点は年金で、経団連は「第3号被保険者」制度(130万円の壁)そのものの見直し・廃止や、税制上の所得控除等「年収の壁」の解消を提言している。国民民主党が主張する「103万円の壁」の問題も、実はその背景には、経団連の社会保障制度の抜本的解体への意図とそれへの連合の屈服があることを忘れてはならない。
5 労働運動の再生・復権に向けて
国家安全保障戦略―崩壊への恐怖
『FD2040』は、最後に「経済安全保障、国家安全保障」という項目をたてて次のように言っている。「国家安全保障戦略が掲げる『わが国を守る一義的な責任はわが国にある』『拡大抑止の提供を含む日米同盟は、わが国の安全保障政策の基軸であり続ける』との基本原則を維持」する、「防衛三文書に基づき防衛力強化を着実に推進」すると。「国力としての国防」「拡大抑止」路線、中国侵略戦争への突進がすべてを変貌させているのだ。
だがその一方、「おわりに」では「わが国の明るい未来を語りたいところですが、世の中を見渡せば、分断・対立がより一層深刻化し、混迷の時代を迎えようとしていると言わざるを得ません。その根底には、格差の問題に対する、人々の怒り、不安があるように思えてなりません」と、もはや打つ手のない現実の前に震えあがってもいる。時代は大きく動こうとしている。ずっと抑えつけられてきた怒りの声がいよいよ爆発的に燃え上がろうとしている。
三軍統合司令部の発足
3月24日、日本では陸海空三軍の統合作戦司令部が発足した。敵基地攻撃=台湾有事を口実とした対中国侵略戦争の作戦指揮をとることが最大の任務だという。国会では8兆7千億円という大軍拡予算がほとんど問題にされないまま、野党が雪崩をうって賛成する中で成立するという翼賛化が進んでいる。日米防衛相会談では「平和のためには戦争準備が必要だ」と確認され、2月に行われた「キーン・エッジ」という日米統合演習について産経新聞は「80年に及ぶ『戦間期』の終わりを覚悟させる筋書きで進んだ」と書いている。「陸海空軍その他戦力はこれを保持しない」―すでに建前に過ぎなくなっていたとはいえ、この国はすべてをかなぐり捨てて戦争に突進しはじめた。
労働運動の古くて新しい課題
連合が果たしている役割はまさに犯罪的だ。これほどの困窮の中でコトリとも動かず、賃上げ闘争を完全に放棄し、政労使ならぬ党労使会談を行って自民党にべったり擦り寄り、軍需産業や戦争政策に深く関与しているのだ。
労働者・労働運動が挫折しては立ち上がり、歴史を貫いて格闘し続けてきた古くて新しい課題がある。「労働組合は、もともとの目的は別として、今や労働者階級の組織の中心として、労働者階級の完全な解放という大きな利益をめざして活動することを学ばなければならない。……労働組合は、その活動が狭く利己的なものでなく、ふみにじられている幾百万の人民の解放をめざしているのだということを、全世界に納得させなければならない」(マルクス)という課題だ。
動労千葉は分離・独立、国鉄分割・民営化反対闘争、11月集会の呼びかけ等を通してずっとこの道を歩んできた。今こそ闘う労働組合を甦らせよう。