検修業務の全面的外注化攻撃を許すな! 総連合申8号に関する団交で徹底的に追及!

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「新系列の技術はJRで維持する」方針を今提案で変更すると回答

この間、JR東日本は、「グループ会社と一体となった業務執行体制の深度化」提案を行い、その中で「新系列車両の機能保全の委託を可能とする」して全面的な検修業務の外注化攻撃を開始しようとしている。この攻撃に対して10月30日、動労総連合申9号に基づきJR東日本との団体交渉を行い、徹底的に追及を行った。団交の概要は下記のとおり。

組合
「新系列車両の業務委託を可能とする」との提案が行われたが根拠を具体的に明らかにすること。

会社
当時は新系列車両が少なく、それから技術の蓄積が必要だった。90日毎の機能保全でデータを蓄積し、省メンテナンス、検査周期延伸、モニタリング保全等が実現できた。こうした背景から新系列車両の機能保全の委託を可能と判断し提案した。

組合
技術力を蓄積した結果としているが、どのような形で蓄積したのか。

会社
周期延伸やモニタリング保全の具体的内容は国に届け出て、外部の有識者委員会で決めているので詳細は公表できないが、検査周期60万㎞を80万㎞にしているが、60万㎞でどのような状態であったのかを点検するなどしてデータを蓄積してきた。

組合
12年から外注化が始まったが、本社の団交議事録では「新系列車両の技術はJRで直接維持する」ことが確認されているが、今回の提案との整合性はどうなるのか。

会社
当時は委託対象外としていたが、技術の蓄積が得られたこともあり今回提案した。

組合
JRが技術力を直接維持しなくても良いとなったのは何時から、どのように変わったのか。

会社
今回の提案をもって変更したということだ。

「具体的委託箇所等については、各地方の機関で検討する」

組合
提案時に「委託を可能とする」箇所として、仙台の宮城野派出が新系列車両に置き換わるから委託すると説明があったが、具体的内容はどうか。

会社
今提案は「委託を可能とする」ということで大枠の提案であり、具体的には各機関(支社等)で示すことになる。宮城野派出の例は、現在、新形式の交番検査を行っているが、新系列に置き換わった時に、現在のままでは委託できない。技術的な問題としてプロパーへの技術継承が絶えてしまうことになるため、今後検討するということだ。

組合
技術が途絶える問題が発生するのであれば、外注化せずにそのままJR直営で行えば良いのではないか。新系列が増えてきて外注化がストップしてはいけないから外注化を拡大するというのは、本末転倒だ。

会社
その点は、技術力を含めグループ全体で内在化を進めている。さらなる推進により技術の内在化を進め、技術継承を進めてきた。確かに戻せば良いのではないかということもあるが、せっかくここまで培ってきた技術がなくなってしまうのは・・・。

組合
プロパー労働者もJRで採用すれば技術も要員も維持できる問題だ。千葉の例でいえば、CTSに業務を委託しているが、必ずしもCTSでの技術力継承、維持・向上はできていないし、要員確保も滞っている。実態からいってもJRが採用し、直接やったほうが出向も出さずに済むことになる。

会社
グループ会社で要員確保ができない等があるとしたら委託対象とはなり得ない。以前の委託のように一括委託ではなくても検討はできる。

組合
東日本全体で、車両センター数は。

会社
総合車両センターを含め31カ所だ。

組合
現在の新形式及び新系列の車両数は。

会社
新形式車両900両、新系列車両1万両だ。

組合
今後の新系列車両の配置計画は。

会社
最新の計画は21年に出している。直後にコロナが発生し更新していない。変更等あればその都度お知らせする。

新系列委託は、G会社で要員をそろえるにはハードルが高い?

組合
今後、首都圏を中心に新系列に入れ替わる車両センターが逐次出てくると考えているのか。

会社
首都圏では十数年前から新系列が入っている。その中で新たに委託するとなるとグループ会社でそれだけの要員を揃えるのにハードルが高いと考えている。

組合
過渡期的には新形式と新系列を並行的に検査する場合があり、要員的にはグループ会社での確保が必要ということか。

会社
そうだ。

組合
今提案について、来年度以降、具体的にどのように進めようとしているか。

会社
宮城野派出のように、今現在、新形式の交番検査を委託している箇所については、内在化されているプロパーの技術継承がしっかりなされているところについては検討したいと考えている。

組合
新系列に切り替わりそうな所を見ながら、グループ会社の要員状況や技術力を見ながら具体的に進めるということか。

会社
そうだ。各箇所で検討を進めるために今提案を行ったということだ。

組合
今回の提案は、車両の入れ換えということもあるが、グループ会社の要員を含めて体制が整うかどうかが大きいということか。

会社
そうだ。そこが一番大きい。今回は、「可能とする」という枠組みを整理し、その中での検討を進めることになる。

G会社に労働者が定着しないのは賃金問題も要素のひとつと明言

組合
現在の全社員数と車両職の要員数を明らかにすること。

会社
社員数は44000人、車両職は約3200人だ。

組合
今後の車両職の採用計画はどうなっているのか。

会社
コロナで減り現在は50名程度の採用だ。

組合
中途採用も行っていると思うがどうか。

会社
中途採用も含めて50名程度という感じで、今後も同程度を目標に採用したいと考えている。

組合
委託している検修の業務量はどの程度なのか。

会社
人数で若年出向が約100人、エルダー出向で約1000人だ。車両で言えば、新形式が900両、新系列の仕業検査、転削業務等である。

組合
検修業務外注化から12年が経過するが、グループ会社における技術継承がどのように行われているのか会社とした把握しているのか。会社は当初、委託から10年でエルダーが減り、プロパーで回すと公言していた。しかし、現状はエルダーが抜けたら仕事が回らないのが現実だ。養成も簡単には進んでいないし、プロパーの退職者が相当数いるが、そうした点も含め技術継承がどのように進んでいるのか。

会社
ひとつの事例として、協議会への参加はグループ会社のプロパーが担っており、技術の継承がしっかり行われている結果だと感じている。
今、グループ会社に人が定着していかないとの指摘があったが、賃金の問題もひとつの要素として考えている。

組合
それが最大の問題だ。労働力の確保を含め契約単価を上げる必要がある。

会社
賃金は地域によって異なり、グループ会社で決めることになるが、会社としても委託の契約単価を上げているところだ。今までは相当に安かった。昨今は物価が上がり、賃金も上がっていることから追随するように定期的に見直したい。

組合
検修業務は、基本的に日勤で手当が付かない。そのため年収でいえば各職種の中でも低い方になる。その中で若手には将来展望が見えないために不安になり辞める者も出ている。今回の「委託を可能とする」との提案だが、現場では、自分の将来がどうなるのか、社員としての身分や雇用形態はどうなるのか等々、不安が出てくる。先ほど50人程度の採用計画だと回答があったが、会社として今いる車両職と採用する50人に責任を持たないと、将来的に要員を確保することが困難になると感じる。

会社
会社としては長く安心して働いてもらいたいと考えている。効率的にやりながらも、皆さんが安心して働いていけるようにすることが大事だと思っている。

組合
グループ会社の要員状況、技術レベルはどのように把握しているか。

会社
グループ会社とはなかなり密にやり取りをしている。各社の状況や採用に関する情報交換も行っている。人事関係では年数回は人事担当が集まり採用状況等を意見交換している。グループ会社も「JR」という冠があり、学生向けや中途採用等のイベントで「JR」ということを発信するなど工夫を行っている。

検修業務の将来展望ー高い付加価値で創造的な仕事にシフトする?

組合
「未来の車両サービス&エンジニアリング構創」の現状はどうなっているのか。

会社
「未来の車両S&E構創」は、20年、30年先を見据えた構想だ。直近の10年間でスマートメンテナンス実現を目指し取り組んできた。現在、モニタリング保全体系が実現できた。車両の外観検査としてカメラで登録した床下装置等の画像と違うところが発見されればそこを修繕するという画像診断を行うことも実現した。現在は、折り返し点であり、順調に進捗していると考えている。

組合
検修業務の将来展望をどのように考えているのか。

会社
「未来の車両S&E構創」で示した人手をかけないメンテナンス、高い付加価値で創造的な仕事にシフトしていくということだ。

組合
新系列の技術力をJRで確保するということについては、グループ会社を含めた全体で維持するという位置づけに変えたということか。

会社
そのとおりだ。

組合
グループ会社を含め全体というが、技術レベルを維持できるのかということが最大の問題であり、組合としては一番懸念している。とくに採用の件で言えば「年50人採用」は、単純計算で各車両センターに2名だ。これで技術力を維持できるのか。

会社
人手をかけないという将来展望の中で人を育てている。その場合でも、何かあったとしてもしっかり判断ができ、管理監督もできる人材を育てる必要があると考えている。

組合
外注化から12年間見てきたが、グループ会社、とくに千葉の場面ではあまりにも技術段差がある。賃金の格差も含めてJRが責任をとって体制を維持しないと成り立たないと考える。JR直営に戻すべきだ。

会社
組合の主張は理解した。今後の方向性としてグループ一体で進める方針があり、車両検修業務もそういった方向で進めていきたい。

(了)

安全確保よりも「生産性向上」「コスト削減」を優先!—-ワンマン運転拡大阻止に向けJR東日本と団交 | 国鉄千葉動力車労働組合

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