7月26日、中央労働委員会は、「予科生等運転士登用差別事件」について、千葉地労委が発していた救済命令を取り消すとの極めて反動的な命令を交付してきた。絶対に許すことはできない。
この中労委反動命令は、国鉄分割・民営化以降、JR東日本による動労千葉への敵視政策により露骨な差別・選別がくり返され、自分たちが希望する職種で働くことさえ拒否され、強制配転され続けるという状況の中で、労働者としての誇りを持ち続けながら歯を食いしばって頑張り続けてきた組合員の怒りや苦しみ、痛み、悔しさを一切無視したものであり、命令などと呼べるものではない。
われわれは、勝利命令獲得に向けて全力で闘うものである。
今回の中労委命令は、94年9月に結審していながら11年11ヶ月も放置されてきた。この間に組合員が被った不利益は計り知れないものがある。しかも地労委命令が93年6月に交付されて以降、救済対象者19名中8名が脱退し、運転士や指令に登用されている現実を見れば、JR東日本が運転士への登用を拒否する理由は、動労千葉に対する組織破壊攻撃以外の何ものでもないことは明白である。
この命令は、本来労働者の救済機関として機能すべき中労委が、その任務を放棄し、労働委員会制度そのものを自らが否定するというとんでもないものである。
われわれは、あらためて今回の命令を糾弾するとともに、JRの不当労働行為撤廃に向けて闘いぬく決意である。
命令の要旨は以下のとおり。
【57予科生へのハンドル訓練】
①会社は、国鉄でハンドル訓練ができず運転士資格を得られなかった57予科生13名のハンドル訓練を実施した。これは、運転免許に関して分割・民営化に伴う経過措置がとられたことから、本科修了者にハンドル訓練を実施し、免許を取得させようとした。これにより組合員1名を含む全員が運転士資格を得た。
②組合は、会社が3名を先行し組合の抗議で残る10名を実施たことは組合差別だと主張する。
しかし会社は、民営化に伴う免許の経過措置を活用して免許を取得させようとハンドル訓練を実施し、1ヶ月遅れたとはいえ組合員1名を含む対象者全員にハンドル訓練を実施したから、組合差別とは認められない。
③また、河野車務課長らが「動労千葉にはハンドルを持たせる訳にはいかない」と脱退干渉を行ったとの主張は証拠がない。
【車掌発令について】
①会社は、88年度、89年度の車掌登用について、現場長の個人面談を行い、希望した者について運適、医適を実施して車掌養成者を決定した。組合員では、88年は希望者がいなかったが、89年には6名が希望した。
会社は、89年度については予科生に対して平等に機会を与え、個人面談、適性検査の結果や勤務成績を勘案して総合的に判断する手続を踏んでいる。また、89年度の車掌登用では、補完教育を行った者の中に組合員2名が含まれていた。
従って88年度、89年度の車掌登用においては、会社が組合員を差別したとは認められない。
②組合は、57予科生1名の車掌試験受験を認めなかったことを動労千葉組合員であるからだと主張する。
しかし、57予科生1名が申し出た90年度は、88年11月の昇進基準に基づく車掌試験が実施されて車掌が発令される等、車掌の要員に余裕が出てきた時期であり、前年までのように運転士資格のある予科生から補完教育を行って車掌に登用する必要がなくなった。
③従って、会社が90年以降、補完教育を継続する必要がなくなり、前年に車掌登用を希望しなかった者に対して、90年に車掌登用を申し出なかったからといって、組合員を差別したとは言えない。
【運転士発令について】
①本件予科生の車掌登用は、全員に平等な機会を与え、希望者の中から先行して補完教育を行って車掌登用が行われている。その結果車掌経験者を運転士に発令している。88年、89年の運転士発令時では車掌登用者に組合員はいないのであり、91年以降は昇進基準に則り、新基準による運転士資格者から運転士を発令しているから、車掌経験を有しない組合員19名が運転士に発令されなかったことは特段問題ない。
②組合は、90年8月に車掌経験のある55予科生を運転士に発令する際に、電車運転士への転換教育を行ったことをとらえ、組合員の多くは電車運転士への転換教育を必要としないと主張するが、これらの者は車掌経験がなく、運転士発令の要件を備えておらず、また、電車運転士への転換教育も、京葉線の開業による電車運転士の需給逼迫という状況から、要員の確保上必要なものであり、組合の主張は認められない。
③昇進基準を定め、運転士発令には車掌経験を必須条件とし、実際、発令者には運転士経験者3名を除けば全て車掌経験者であり、会社は昇進基準に従って運転士発令を行っていることが認められ、運転士発令について、会社が組合員を差別的に取り扱ったと判断することはできない。
【結 語】
会社は、乗務員の需給に応じるため、予科生に車掌登用の機会を与え、運転士発令を行った。
従って、救済対象者19名を運転士に発令しないことは、車掌登用の意思を示さなかったか、車掌登用のための補完教育の対象者の選考において対象者とされなかった結果であり、組合弱体化を企図したものとはいえないから、これをもって組合員を運転士に発令しなかったことが不当労働行為であると認めることはできない。よって初審命令の判断は相当ではなく、取り消しを免れない。