今国会提出は3回目
派遣労働者を受け入れる制限も、原則1年(最長3年)の期間制限もなくし、労働者をいつまでも「派遣」で働かせることができる労働者派遣法改悪案の審議が、5月12日衆議院で始まった。
昨年の通常国会、臨時国会と続けて廃案になり、今国会提出は3回目だ。自民・公明両党は、審議はすでに尽くされているとして、今月中の衆議院通過、9月1日の施行を目指すことを確認している。
派遣社員は自動的に3年でクビ
現行の労働者派遣法は、派遣労働を「臨時的・一時的な働き方」としてきた。しかし今回の改定が実施されれば、企業は派遣先の企業が労働組合の意見を聞くだけで、派遣労働者を入れ替えたり部署を移したりしながら、永続的に派遣労働者を使用することができる。 他方、派遣労働者はいや応なく3年で解雇され、その後の職場も分からない生活を強いられ、生涯転々と派遣労働を続けざるを得なくなる。
派遣から正社員への道はほぼ閉ざされる
安倍首相はこの間の国会審議で「一生涯派遣という批判は当たらない」「派遣労働者の一層の雇用の安定や保護を図るもの」「派遣労働の固定化を防ぐ対策を強化する」、「キャリアアップなどで正社員化を後押しする」などと強弁しているが、全くの絵空事だ。
安倍が言う「雇用安定」とは、同じ職場で3年の期限を迎えた派遣労働者に対し、別の派遣先を紹介するか、派遣先に直接雇うよう依頼することなどを派遣会社に義務づける―というもの。しかし「別の派遣先の紹介」は、派遣元会社の当たり前の本来業務にすぎない。前の職場と同等な条件の職場に行ける保証は何もない。派遣先への直接雇用も、ただ申し入れるだけだ。教育訓練も含め、実効性は皆無に等しい。
あるか無きかの「正社員への登用」や「直接雇用」の餌(えさ)も、労働者の分断と団結破壊、極限的な労働強化の攻撃として、一層鋭さを増すこととなる。
正社員ゼロ=総非正規職化へ
もともと派遣法制定以前は、手数料を取って労働者を斡旋することは犯罪だった。戦後、職業安定法が制定され、中間搾取や労働者供給事業などの手配師の横行を禁止したのだ。
しかし、国鉄分割・民営化攻撃が吹き荒れた1985年に労働者派遣法が制定され、職安法の例外として、「常用労働者の代替にしない」、「専門的な業種に限る」などの条件で派遣業が解禁された。そして1995年には派遣対象業務が原則自由化され、港湾業務など一部の業務以外は誰でもどんな業務でも派遣できるようになった。
そして今回の派遣法改悪で、「例外的・一時的な雇用で常用雇用の代替にしてはならない」という原則も、その建前さえもなくなり完全に歯止めはなくなってしまう。派遣社員の年収は約200万~300万円。正社員の平均年収の半分程度だ。派遣会社のマージンを考慮しても、企業にとっては派遣社員の方が圧倒的に安上がりで、派遣への置き換えが一気に進み、正社員ゼロ=総非正規職化が全面化する。
6・7集会の大成功を!
労働者派遣法の改悪と並んで、「残業代ゼロ法」=労働基準法の改悪、そして戦争法案である「安保法制関連法案」の国会審議が始まる。戦争と総非正規化―安倍がやろうとしていることは、労働者の生命と権利を奪い尽くす攻撃だ。今こそ闘う労働組合の復権を!
6・7国鉄闘争全国集会に大結集しよう。