「地域モビリティーの刷新に関する検討会」の中止の申し入れ
国交省に設置された「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティーの刷新に関する検討会」の結論が今月中にもとりまとめられようとしている。しかしその検討内容は、「ローカル線『大虐殺』」と報道され、第1回検討会資料にも「出口論」は「公有民営化」か「モード転換」と記されているように、JR在来線-地方ローカル線を大規模に廃線に追い込んでいくものであると考えざるを得ない。
従って、鉄道に従事する労働組合として、公共鉄道網を守る立場から次のとおり申し入れるものである。
1 検討会資料には「地域モビリティーの刷新に取組むことは地域(地方公共団体)の責任」とあるが、それは本来筋違いであり、地方自治体に負担と廃線化を強制するものであると言わざるを得ない。従って、「ローカル鉄道の危機的状況」の責任を地方自治体に転嫁する方向での検討は直ちに中止すること。
2 JR各社は、国交省においてJR在来線の存廃をめぐる検討が開始されたことを奇貨として、「バス転換を含めて見直しを進める線区」と言って赤字線区の収支を公表する等、前のめりになって廃線化を加速させる方向で一斉に動きだし、それに対して沿線自治体から強い危機感が表明されている。こうした事態を生み出した国交省の責任は極めて重いと言わざるを得ず、そうしたことからもこれまでの議論は直ちに中止し、白紙に戻すこと。
3 検討会資料を見ると、輸送密度2千人未満の線区(全体の39%)を対象に、廃線・バス転換を主要な選択肢として検討が進められているように考えられる。しかし現実に進行している事態は、2万㎞に及ぶバス一般路線が廃止され、タクシー会社も撤退し、交通手段を完全に失い生活することができなくなっている地域が多く生まれているのが現実である。こうした実態にふまえ、地域の衰退を止めるためにも、全国鉄道網の維持・強化を軸に、国の責任において公共交通機関の抜本的強化・再建を図ること。
4 検討会は、乗客数の減少を生み出した原因を、人口減少、コロナ禍、自家用車保有台数の増加による「仕方のない現実」として描き出しているが、実際はそうした一般論に帰することができないものである。例えば千葉県では、房総・北総方面から千葉への直通列車を廃止したり、列車間合いが5時間に及ぶまで運転本数を減らしたり、観光地・館山への特急列車を廃止する等、営利のみを求めるJRの経営方針によって、意図的に乗らないように仕向けられてきたのが現実である。こうした実態への規制を強化し、公共交通としての鉄道を再建すること。
5 「ローカル線の危機的現状」や「これがはたして持続可能な事業体か」と言われるJR北海道、JR四国の現実が示しているのは、35年前の国鉄分割・民営化が破綻し失敗に終わったということであり、採算制や株主価値を行動原理とする民間企業では公共鉄道網を維持することはできないということである。また、駅無人化・ワンマン化等によって高齢者や障害者が交通権を奪われている深刻な現実等にふまえ、交通権を普遍的な価値とする立場から、JR民営化体制を白紙に戻し、国の責任において公共鉄道網を維持すること。