東労組の偽装請負協定
何でこんなことまで労使確認し外注化を推進するのか! (上)
検修・構内業務の外注化について、2001年3月30日に東労組と会社が締結した「協定」とその「議事録確認」がある。「逐次委託する」という形で出された外注化攻撃を東労組が裏切り妥結したものだ。だが、その内容は、「偽装請負の協定化」と言うべきものだ。
JRが直接指示する!
例えば、構内運転業務の指揮・命令系統について「議事録確認」の東労組による「解説」は、
乗務中の指令指示や出場後の着発変更等の運転取扱いに係わる指示・連絡については、JRが直接(委託会社の)作業員に行なうことになります。 |
と書かれている。だがこれは明らかに「偽装請負」を労資一体となって推進することの確認に他ならない。
労働省は、「昭和61年告示第37号」で、請負事業が適正なものであるための要件を定めているが、その最も重要な要件は次のとおりである。
労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行なうこと。 |
この趣旨は、「請負事業主が、業務を自己の業務として契約の相手側から独立して処理すること」「注文主(JR)と労働者との間に指揮命令関係がある場合には、請負形式の契約により行なわれていても労働者派遣事業に該当」し、偽装請負となる(厚生労働省発行のパンフレット)ということである。
構内外注は偽装請負だ
そもそも、構内運転業務の外注化は、緊急時のみならず、根本的に偽装請負になる。例えば、構内や入出区時に防護無線を発報したり、受信したりした時は、解除も含め、その後の指示は指令から受けることになる。構内運転・入出区作業は、指令や信号所との関係ぬきには、日常的に成り立たない業務だ。この時点での外注化は、信号所は直営という枠組みだったが、構内入換は信号所からの通告のもとに行なわれる。安全上「一通告一作業」が基本である以上、入換計画書だけあれば勝手にできるなどという作業ではない。「独立して処理」することなど不可能である。
つまり、今、他支社で行なわれている構内業務の外注化はそもそも偽装請負なのだ。だから今回の提案では「信号所も外注化してしまえ」となったのだろうが、指令まで外注化しなければそれは成り立たない。偽装をさらに偽装するようなものである。また派出検査業務等でも同じ問題が起きるのは言うまでもない。
しかも構内は、運転事故が最も多く起きている場所である。幕張構内事故のように、ひとつ 間違えれば大事故になる。いくら「絶滅を期する」と言っても、入信冒進事故などは絶えず起きている。誘導担当を廃止し、運転士一人の注意力だけで安全を確保する仕組みにしてしまった以上、それは仕方のないことだ。それを外注化してしまおうというのだ。
構内や派出だけではない。「事故復旧業務」も外注化の対象だが、規程上、「事故等発生時の復旧の指揮は、現地対策本部長がとるものとする」(運転事故等対処手続第7条)と定められており、JRの規程とも完全に矛盾するのである。
事故責任も丸抱え?
さらに「議事録確認」は、
委託した業務に関連して事故等が発生した場合であっても、お客さまに対する責任は、当社(JR)が負うことになる。 なお、当社と整備会社の関係では、整備会社の責めによることが明らかな場合はその損害について当社が求償することがある。 |
としている。だがこれも偽装請負の容認確認に他ならない。
この点も労働省の告示では、
(請負会社は)業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。 |
としている。「求償することがある」などというあいまいなものでなく、JRが損害を被った場合は車両整備会社が損害賠償の責を負う旨の規定を契約書に明記しなければならないことになっている。
こうしたことは、京葉車両センターの車輪転削業務の外注化というレベルでもすでに発生しているが、車両整備会社が損害賠償金を払った
形跡はない。それどころか、車両整備会社側のミスに基づく一斉点検をJRが行なっているのが現実だ。
何かあれば莫大な金額になる事故責任を車両整備会社が負えば、いつ倒産してもおかしくない状態になる。だからJRが丸抱えしようということなのだろう。だが、それ自体が偽装請負に他ならないのだ。
【次号に続く】