JR東日本が行なったきしみ割れ再現試験

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多発するレール損傷・破断は、やはり深刻な事態だった―
ボルスタレス台車がレールに強い横圧
JR東日本が行なったきしみ割れ再現試験

写真-1 はく離を伴ったきしみ割れ

レール破断が止まらない!

 昨年11月19日、またも総武快速線(馬喰町駅構内)でレール破断が発生した。この2年余りの間に、千葉支社館内では、60㎞近いレール交換が行なわれているが、交換しても、交換しても、異常な磨耗やレール破断が止まらない。まさに非常事態としか言いようがない。
 しかし、千葉支社は、「『破断』という表現を使うな」「『ひび』、『損傷』という表現で統一しろ」「マスコミへの発表は注意しろ」という内部文書を回し、この間幾度となく行なわれてきた団体交渉では、何を訴えても、「基準値内である」「レールの損傷が直ちに危険だということではない」「損傷や磨耗は経年等により否応なく起こるもの」「(レールの損傷や破断は)以前からあったこと」等称して、あたかも今に始まったことではなく、深刻な事態でもないと言い張り続けてきた。

数年前からの異常事態

 だが、やはりそうではなかった。しかも会社はそのことを認識していたのだ。つまり、この間の団交での回答は、真っ赤なウソだったのだ。
 「日本鉄道施設協会誌」昨年9月号に次のような論文が掲載されている。筆者はJR東日本研究開発センター、テクニカルセンター副課長である。

 近年、緩曲線区間における外軌ゲージコーナー部で写真1に示すような『きしみ割れ』からはく離に至る傷が、首都圏エリアの在来線を中心に多く観察されるようになり、この損傷が理由によるレール交換が目立つようになった。これまでははく離にいたるような傷は……ほとんど観察されず、大きな問題にはなっていなかった。……きしみ割れのはく離は数年前から発生している。

 「きしみ割れ」は、写真のとおり、総武快速線・幕張車両センター付近をはじめ、多数箇所で発生していたものだ。しかもこのようなことが起きるようになったのは「数年前から」という、異常事態だったのである。

やはり深刻な事態だった

 しかも、この事態の深刻さは次のように報告されている。

 はく離が激しくなったきしみ割れの内部は、きしみ割れの下にできた水平裂が長手方向につながっている状態であった。そして、その水平裂のつながり方によっては、矢印に示すようなレール底部に向って進む可能性のあるクラックが発生していた。この形態は日本でもこれまで問題になってきたシェリングと同じ様相を示している。シェリングでは、水平裂の下にレール底部に向かうような横裂が発生した場合、レール破断の危険性があることがわかっており、きしみ割れもはく離が激しくなった場合は、その危険性を考慮しなければならないと思われる。

写真-2 きしみ割れ切断面(長手方向)
写真-3 きしみ割れ切断面(断面方向)

 幕張車両センター付近のきしみ割れの酷さは、写真1程度のものではなかった。それは、この報告からすれば、レール内部にずっとつながった亀裂が生じ、底部に向かっても破断に至るような亀裂が生じていた可能性の高いものであったということだ。
 われわれは、レール交換を求めて安全運転闘争に立ち上がり、千葉支社はそれを違法行為として不当にも処分したが、実はわれわれが訴え続けてきたとおり、極めて危険な状態であったことを、ついに当局自身が認めざるを得なくなったのである。

ボルスタレス台車は、レールに強い横圧を与えている

図-2 外軌横圧(地上測定)の測定結果

 またわれわれは、この過程で、ボルスタレス台車やスピードアップがレールに与える影響や、車輪頭面の変更やスラック(曲線におけるレールへの横圧対策として軌間を若干広げること)を無くしてしまったことの影響を当局に質したが、千葉支社は、何ひとつ具体的
な根拠を示すことなく、それを頭ごなしに全て否定した。
 だが、JR東日本も、実はその可能性を疑い、新型車両(ボルスタレス台車)、旧型車両(ボルスタ台車)がそれぞれどのような横圧をレールに与えているのか、実験を行なっていたのである。
 測定結果は、図2のとおり、「新型の普通列車及び特急列車の方が旧型の普通列車及び特急列車に比べて横圧の大きい傾向が見られた」と言わざるを得ないものであった。
 そしてこの論文は、最後に次のように述べている。

最近のきしみ割れからのはく離は、速度向上、車両構造の変化、車輪頭面形状の変更等が影響していると考えられるが、本実験ではそこまで言及することはできなかった。今後は、車輪とレールの磨耗状態に着目した分析を検討する

 実験・分析の結果は、最終的な結論ではないとはいえ、現時点では、①速度向上、②車両構造の変化(ボルスタレス台車化が最大の変化)、③車輪頭面形状の変更等が影響していると考えられるとしているのである。

レール破断がローカルにも拡大する?

 この間レール破断は、とくに総武快速線で集中的に起きているが、レールの損傷や破断の要因がボルスタレス台車にあるとすれば、211系車両の投入により、それが千葉以東のローカル線区に拡大することが懸念される。
 ローカルの線路は、もともとグレードが低く、検査・保守の周期や体制も、総武快速線(1級線区)と比べて弱い。実際、「211系はものすごく揺れる」「うねるように揺れる」「とくに速度が90㎞を超すと激しい揺れになる」等の声が乗務員からも乗客からも上がっているのが現状だ。
 数年前から発生するようになったというレールの損傷や破断の多発という非常事態に対する緊急の対策が必要だ。原因の解明はもとより、何よりも事実を事実として明らかにすること、損傷箇所の徹底した洗い出しと早急なレール交換、検査・保守体制の強化(巡回周期を延伸前に戻すこと等)、外注化した保線業務を直営に戻し、徹底した保守・管理を行なうこと、線路状態が悪化している箇所の速度ダウン等、直ちにやるべきこと、やれることはいくらでもある。手をこまねいていることは許されない。JRは直ちに安全対策を行なえ。

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