JR東日本はコロナ禍という惨事に便乗して、分割・民営化型の大合理化攻撃を開始しようとしている。だが、鉄道を民営化して金儲けの道具にしたことが根本的な原因だ。矛盾を労働者に転嫁することは絶対に許さない。
とりわけ民営化の矛盾の深さはJR北海道、四国、九州に現れた。「鉄道崩壊」というべき破綻的状況について紹介する。
JR北海道 3年で中途退職426人―民営化による「鉄道崩壊」の現実
JR北海道は、「コロナ」以前から破綻的な危機の中にあった。200億円(19~20年度)の政府援助で何とか生き延びていたが、援助が続いても22年度には資金がショートするという状態だった。
新幹線の乗車率も20%台まで落ち、この1年の間に札沼線など5路線の廃線を強行した。本社移転計画や社運をかけた札幌駅前再開発計画も一旦白紙にせざるを得なくなった。
何より若年退職者が止まらない。19年度は過去最多の165人、直近3年で426人もの中途退職者がでているのだ。20年春の採用者数は249人、19年10月入社は60人を予定しながら36人しか集まっていない。技術継承どころか鉄道の運行を確保することも困難になろうとしていたのだ。
そこにコロナ禍が直撃し、4~6月期の営業損益は前年から103億円悪化した。鉄道だけでなくホテル等も含めて全面的に破綻した。大規模な運休と1400人の一時帰休を行い、雇用調整助成金にすがるしかなかった。
だが、問題は何も解決していない。JR東日本からJR北海道の会長に送り込まれた田浦芳孝は、「とにかく今年を乗り切ることがすべて」「政府に法改正を求める」と言っている状態だ。
JR九州 完全民営化で列車削減・廃線相次ぐ 米投資ファンドは見限り株を売却
JR九州も倒産寸前の危機にある。インバウンド需要を当て込んだ不動産事業も行き詰まり、大規模な運休と1450人の一時帰休でしのぐ以外なかったのが現実だ。
完全民営化以後、JR九州では米投資ファンド・ファーツリー社が大株主になり、「不動産を重視しろ」「自社株買いをして利益を株主に還元しろ」と独自の社外取締役を提案するまでになっていた。
昨年はこのファンド提案に40%を超す賛成があったが、JR各社が株の持ち合いで対抗して今年は賛成は最大33%まで下がった。その途端、ファーツリー社はJR九州の株の約半分を売却した。自分の金儲けにならなければあっさり見限る―こんな投資ファンドに鉄道を売り渡せば、公共交通機関としての役割など果たせるはずがない。
すでにJR九州の社長自身も完全民営化したことで、「公共性を根拠に赤字でも鉄道事業を続けるべきではない」という発言まで行っている。昨年の自社株買い提案は否決されたものの、JR九州は秋に初めて自社株買いを行い、事実上要求に応えた。
他方で、5月にはコロナ危機の中で17年の豪雨で不通となっていた日田彦山線の廃線―BRT(バス高速輸送システム)化を決定した。18年3月ダイ改では計117本の列車を削減し、駅の無人化は568駅中304駅まで進められている。大株主のための自社株買いには金を使っても、地域生活に必要な鉄道を維持し、雇用と労働条件を守ることには使えないというのか!
「利益」が至上命題とされれば公共交通を守る〝鉄道会社〟ではなく、「一部の大株主が金儲けするための会社」にされる。これが民営化の正体だ。「鉄道崩壊」はその結果だ。
JR四国 社長会見 第3セクター化・上下分離へ「地元との協議を加速」うちだす
JR四国は19年度の連結決算で営業利益が120億円の赤字だったと発表した。その際、西牧世博専務(現社長)はJR四国の現金が「端的に言えばゼロになる」とまで述べている。
また赤字路線の「第3セクター化」「上下分離方式」を打ち出し、「県や沿線自治体との協議を加速させる」と宣言した。だが、そもそもJR四国は瀬戸大橋線以外の全線区が赤字だ。「鉄道そのものをすべて投げ出す」と言っているに等しい事態だ。
そもそもJR四国も中途退職が止まらず、3月ダイ改では「運転士不足のため」という衝撃的な理由で22本も列車削減を行っている。民営化はまさしく鉄道崩壊をもたらしている。