6月7日、第19回出向命令無効確認訴訟が行われ、出向者当該を先頭に、各支部組合員、支援の仲間が結集して裁判闘争を闘い抜いた。
反論できず、開き直るしかないJR
はじめに組合側の準備書面に基づき弁護団から、出向命令が「実質転籍」であること、出向協定も本人同意もないこと、必然的に偽装請負が行われることなどを明らかにした。
組合からは、関副委員長、動労水戸の石井委員長、動労連帯高崎の漆原委員長が意見陳述を行った。関副委員長は、外注化による安全破壊や偽装請負の実態、JRによるスト破りでスト権が侵害されていることを述べた。また、昨年12月に習志野運輸区で通告を受けずに入換を開始したために防護無線が発報される事態となったことをあげ、「情報の連絡と同じなどと言えないことは明らか」と断じた。
会社側弁護士の意見陳述では、なんとこれまでの「出向期間は原則3年」という主張を投げ出し、「10年で出向を解消する計画」といいだした。10年ということは、国鉄採のほとんどは定年まで出向だ。初めから出向から戻すつもりも、計画もない実質的転籍だと自白したのだ。 また、出向の必要性についても、「通常の配転と同じ」「職場も仕事も変わらないから問題ない」という。ならば、なぜ出向させる必要があるのか? 何の理由も主張できなかった。
安全破壊については、実態を職場から突きつけられて、「針小棒大にいっている」と事故が起こっている現実から逃げることしか出来ず、偽装請負についても、「それを目的にしたわけではない」という反論にもならない反論を持ち出している。証人尋問をはじめ、職場の実態を直接突きつける闘いが、会社を反論もできず、開き直るしかないところまで追い詰めたのだ。
裁判の後には、「出向無効裁判の闘いが切り開いたもの」と題して、この間の裁判闘争で切り開いた地平についての総括・討論会が行われた。裁判での意見書を執筆していただいた近藤昭雄中央大学名誉教授にもご参加いただき、弁護団や組合員、支援の仲間が結集した。
はじめに弁護団から感想が述べられ、口々に「会社は反論できないくらい追い詰められている」「闘ってきた成果」「社会的に意味のある前進をかちとったと思う」と裁判闘争で会社を追い込んできた勝利感に溢れた発言が行われた。
その後、近藤名誉教授から発言いただき、支援の仲間を交えて発言・討論が活発に行われた。
裁判は結審を迎え、判決日は10月10日16時から東京地裁527号法廷にて行われる。
しかし、結審後に会社が提案した「エルダー社員の会社における業務範囲拡大」提案は、「雇用の場の確保が外注化の目的」という会社の主張の根本を覆す重大な内容だ。審理再開の申し立ても含め、最後まで会社を徹底的に追及して闘う。外注化・強制出向粉砕、分社化・転籍阻止へ全力で闘い抜こう。
総括・討論会の近藤昭雄中央大学名誉教授の発言
一番強調したことは、労働は労働者の主体的営みだということです。偽装請負も人身売買と同じようなものです。合理化の過程では労働者をコマのように使い、労働組合が唯々諾々と従ってきた。出向は、「あなたのところで働く」と約束したのに、「こっちの会社で働け」といかされるものです。これには労働者の同意が必要です。普通の債権のように譲渡が自由なら売られ売られて、人身売買的な結果を生みます。 今回は、働く場所も賃金も変わらない。だったら、なぜ出向させるのか? 出向させた会社が賃金を払うなんて、あまり聞いたことが無い。では、何のための出向か。労働者をコマみたいに扱い、こき使うということです。みなさんは、これに反対している。だから、この出向問題は反合闘争の一つの形で、大事だと思っています。
結論は終わるまで分かりませんが、会社の最終準備書面は極めて迫力のない、支離滅裂な主張だと思う。しかし、裁判の結果以上に、出向問題を現代における反合理化闘争として、第2の分割・民営化攻撃との絡みの中で闘っていく意味は極めて重要です。