労組なき社会化攻撃の新段階
昨年、経団連は「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を発表したが、それは「新たな集団的労使関係」「労使協創協議制」と称して、労働組合ならざる従業員代表組織に「団体交渉権」を与えることによって労働組合の存在やその憲法上の権利を根本から解体しようとする重大な攻撃であった。従業員代表組織に「個々の労働者を規律する契約を結ぶ権限」や「就業規則の合理性推定」「デロゲーション(労基法の適用除外)」の権限を付与するというのである。
何よりも重要なことは、その提言をまとめる中心的役割を果たしたのがJR東日本だったことだ。2018年以来職場で進められてきた激しい労組破壊・労組なき社会化攻撃―社友会路線を法制化し、社会全体に拡張しようとしているのである。
経団連提言は、厚労省における1年間の検討を経て、26年の通常国会へ労基法改悪案が上程されようとしている。それはもはや「改悪」という次元の問題ではない。労基法・労組法を根本的に否定する攻撃であり、憲法28条(労働基本権の保障)にも抵触する内容を含むものだ。
26年法改悪に向けた露払い
職場では25春闘過程で重大な事態が起きている。JR東日本は、それがまさに歴史転換的攻撃であることを自覚した上でその露払いをし、既成事実化するために、社友会となし崩し的に“新賃金交渉”を始めたのだ。
“新賃金交渉”の相手となったのは、昨年、経団連提言を受けて立ち上げられた「社友会連携協議会」という社友会の全国組織。昨年来、用意周到に先手先手をうつ形でことが進められている。もちろん法改悪は未だなされているわけではないので、「新賃金交渉」ではなく「意見交換」という表現が使われ、社友会側から出されたのも「要求」ではなく「意見」とされている。が、社友会は、一律ではなく上位職ほど賃上げ幅が拡大していく方式のベースアップを要求し、JR東日本はそれに沿った回答を行っている。労働組合とも形式的には団体交渉を行うがその要求は全く無視された。JR東日本は、こうした形をとって、総資本を代表し、けしかける形で労基法解体―「労組なき社会化」に向かってレールを敷こうとしているのである。
その意味ではこの間の全職名廃止・現業解体、融合化、問答無用の廃線化等、すべての攻撃がその線に沿ったものであり、戦時型労働政策、現代の産業報国会化攻撃に他ならない。国鉄分割・民営化をやった資本にしてはじめてできる悪どい攻撃だ。
経労委報告での踏み込み
25年版経労委報告でもこの問題について重大な言及がされている。ちなみに経労委の審議委員会議長もJR東日本の冨田哲郎が務めている。
「デロゲーション」が次のように説明されているのだ。「労基法自体は原則的なシンプルな規制とし、労働者、使用者の集団的合意により、自社の実態に応じて規制の例外を認めること」と。ごく短い文章だが、その中にこれまでの考え方をすべて否定し覆す意図が全面的に込められている。
第1に、労基法や労働協約の精神が真逆なものとなっていることだ。労基法は労働条件・権利の最低基準を定めたものであり、労働協約はそれを上回る約定であったはずなのに、ここでは労基法以下の条件(デロゲーション)を認めることが「集団的合意」の目的になってしまっていることだ。
第2に、「集団的労資関係」の意味が全く別ものになってしまっている。そもそも集団的労資関係とは「団結権」「団交権」「団体行動権」(労働基本権)のことを意味し、刑事・民事免責も含め労働組合側だけがもつものであった。しかしここでは「労働者、使用者の集団的合意により」という言い方で、労働者側も「集団」、使用者側も「集団」という位置にまで低められてしまっている。それが「働き方に中立的な仕組み」なる言い方が何度もくり返され正当化されているのだ。
第3に、その「集団的合意」の労働者側の当事者が、労働組合ならざる従業員代表組織であることだ。
2026年労基法改悪阻止に向けて全力で闘いを組織しよう!