7月16日、東京地裁民事第11部・佐々木宗啓裁判長は、「安全運転闘争介入事件」の行政訴訟に関して、組合側の請求を「棄却」するという反動判決を下してきた。徹底的に弾劾するとともに、控訴審での勝利に向けた闘いぬくものである。
とくにこの判決では、「業務や生産手段という財産に対する危険を及ぼしたり、その恐れを生じさせるものである場合」などとして、これまでの最高裁判決からさらに踏み込んで争議権を否定するなど、極めて反動的なものとなっている。
しかし一方で判決文は、「列車運行の安全確保を指向するという十分に了解可能で実現結果が社会的に望ましいといえるような動機・目的を持って実行したものである」として、安全運転闘争の目的の正当性は認めざるを得ないものとなっている。しかし、「運行管理権」や「営業権」を理由にして「違法行為」と決めつけて、労働組合が安全を守るための闘いに起ち上がることを否定しており、絶対に認めることはできない。
あらためて、反合・運転保安確立に向けて、断固として闘いぬくものである。
東京地裁判決(要旨)1.本件争議行為(安全運転闘争)の正当性について (1)本件争議行為は、一定の区間において列車に数分程度の遅延が発生することが想定され、実際に15本の列車に1分から5分の遅延を発生させた。 この対応は、動労千葉所属運転士が職場を離脱せず、通常の業務を行いながら、列車の最高速度を10km/h減速し、回復運転をしないというものである。 本件争議行為は、怠業、すなわち会社の指揮命令から完全に離脱することなく、これを部分的に排除しつつ、不完全な労働力を提供するという手段の争議行為に該当する。 (2)怠業は、業務の正常な運営を一定程度阻害するものであるにもかかわらず、それが正当な争議行為と位置づけられているのは、その本質が、労働者において労働契約上負担する労務提供義務の量的一部分を提供しないという形態により不完全履行するという消極的な対応の行動であり、争議行為の手段としては、労働者が団結して、労働力を使用者に完全に利用させないことにより、その本質及び手段方法の範囲にとどまる限りにおいて、使用者の有する業務や生産手段に対する管理・支配を排除したり、業務や生産手段に対する危険を及ぼす恐れを生じさせたりしないことから、正当な争議行為と認められる。 労働力の一部の不提供という争議行為であって、形態が怠業に該当し、あるいは類似する行為であっても、上記の本質及び争議行為としての手段方法を逸脱して、不法に使用者の自由意思を抑圧したり、業務や生産手段といった財産に対する管理・支配を阻止するようなものであったりする場合、あるいは、業務や生産手段という財産に対する危険を及ぼしたり、その恐れを生じさせるものである場合は、正当は争議行為とはいえず、許されないと解するのが相当である。 (3)会社に対しては、法令上、業務遂行上、列車運行の安全確保を目的とした定時運行体制の確保が要請されており、経営管理上、列車の定時運行体制を確保するための運転時分管理を行うべきものであり、管理を行い得る体制が営業権の内容として管理保有されている (4)本件争議行為の態様は、意図的な回復運転を伴わない減速走行を行うことによって、故意に列車運行に対する遅延を発生させるものであり、列車の安全運行を目的とした法令上要請され、会社の業務遂行体制として構築されている定時運行体制を、動労千葉の独自の判断及び行為よって混乱させる結果をもたらすものであり、会社の定時運行体制の基礎となっている運転時分の管理・支配を一時的に排除し、動労千葉の独自の管理・支配を設けることにって、会社の業務について、会社が保持すべき管理・支配を失わせる結果を招来させた。 本件争議行為は、単なる労働力の一部不提供という消極的対応にとどまらず、不法に会社の自由意思を抑圧し、業務、財産に対する管理・支配を阻止する積極的対応に及ぶものであり、正当な争議行為の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。 (5)動労千葉において、本件争議行為が列車運行の安全確保を指向するという十分に了解可能で実現結果が社会的に望ましいといえるような動機・目的を持って実行したものであることが認められるとしても、そのことが本件争議行為の態様の違法性をさまたげるものとはいえない。 2.処分の不利益取り扱い及び支配介入の該当性について |