5月8日、外房線の安房鴨川―安房天津駅間で脱線事故が発生した。その車両をなんと時速80㌔まで出して幕張車両センターまで回送したのだ。あまりに安全を無視した暴挙だ。
車軸への影響は分からない
事故の調査等ののち翌朝に載線が完了し、車両点検と仮処置が行われた。そして、そのまま幕張車両センターへの回送が開始された。徐々に速度が上げられ、80㌔もの速度で走行し続けたのだ。
そもそもすぐに車両センターに回送しなければならない理由はない。実際、当初は夜まで留置してから回送する予定だった。それが総合車両センターの人間の判断で、すぐに回送が始められた。
回送時の速度も、当初は最高速度25㌔までで走っていたが、どんどんと速度は上げられた。最終的にはブレーキ軸割合だけで「80㌔まで出せる」としてしまったのだ。
だが、列車が脱線してから止まるまで300㍍以上もかかっている。90㌔で走行していた列車が、コンクリ製の枕木の上を300㍍も走ったのだ。それがどれだけの衝撃と負担だったのか。
事故で車軸に問題が発生しているかどうかは、軸箱を開けてみなければわからない。もし回送中に車軸に問題が発生すれば、再び事故を引き起こすことにもなりかねない。
さらに、先頭台車のブレーキは壊れ、2台車も空気漏れを起こしていた。脱線の影響で先頭車両の空気バネはパンクさせて回送せざるを得ない状態だった。
そんな状態で80㌔ものスピードを出すなど無謀としか言いようがない。本来なら慎重の上にも慎重を期して回送するべきだ。
会社の安全軽視を許さない!
結局、先頭車両の台車は2つとも交換になった。車輪のフランジも傷ついていた。
回送を担当した運転士も、スピードを上げることに不安を感じたはずだ。なぜ、こんな事態が発生するのか?
結局、すべてを「ダイヤ優先」「スピード優先」「利益優先」で進めてきた会社の姿勢が、こういった安全の軽視を生んでいるのだ。
コロナ感染症に対する「見せかけだけ」「幹部だけ」の対策は、会社がいかに現場労働者と鉄道の安全をないがしろにしているかを示している。会社は徹底した安全対策を行え!
事故・回送の経過概要
◇5月8日
15:53 脱線事故発生
16:26 安房鴨川駅長が現場対策本部長に
16:30 乗客の降車誘導完了
◇5月9日
07:06 載線完了
08:00 車両点検及び仮処置完了
08:46 回送開始(安房天津駅までは最大25km/h)
09:17 安房天津駅(以降、安房小湊駅までは最大45km/h)
09:28 安房小湊駅(以降、幕張車両センター入区まで最大80km/h)
12:49 幕張車両センターへ入区