場内信号機に対する進行の指示運転の問題点①
運転保安崩壊への分水嶺
11月1日から運転取扱実施基準が改悪され、「場内信号機に対する進行の指示運転」という取り扱いが実施されている。
安全の基本を覆す
これは、場内信号機の故障時の問題にとどまらず、運転保安や列車の安全確保にとってこれまでの最も基本となってきた考え方を根本から解体するものだ。 ここにはこれまでの考え方の根本的な転換がある。ここに示された発想は、永い鉄道の歴史のなかで見ても、運転保安崩壊への分水嶺となるような性格をもつものだ。 ここから発生する問題点は無数にあるが、何よりも「信号」に対する考え方が根本的に変えられてしまったのである。これまで列車の安全確保の基礎にあったのは、いわば「信号絶対主義」であった。それがつき崩されて、それにとって変わろうとしているのは「指令万能主義」「無線通告万能主義」というべき発想である。 また「疑わしきときは手おちなく考えて、最も安全と認められる道をとらなければならない」という安全綱領の理念は否定され、「信号機が故障していようが何が起きようがとにかく列車を動かせ」という発想が大手をふってのし歩こうとしている。
これだけの問題点
「進行の指示運転」には、直接的な事柄だけに限って列記しても次のような多くの問題点がある。
① 「絶対信号機」という概念を解体 してしまったこと。 ② それどころか、「進行の指示は 信号にあたる」「信号現示と進行 の指示は対等」と主張し、「信号」 の概念そのものを解体してしまっ たこと。 ③ 今回は実施が見送られているが、 出発信号機も同じ取り扱いができ るとしていること。 ④ 複数の場内信号機がある場合は、 第一場内機外で進行の指示を受け た場合、第二・第三場内は無視し、 見ずに所定 停止位置まで運転せ よと、「信号無視」が公然と指導さ れることになったこと。 ⑤ それに伴って、ATSの解放運 転が公然と指導されることになっ たこと。 ⑥ 進行の指示運転自身にも、4つ のケースが掲げられており、これ に代用手信号、誘導による方法を 含めれば実に6つのケースが存在 することになったこと。───こ れでは時が経てば、運転士の頭の なかには、とにかく何らかの指示 があれば、信号を無視して運転しなければならないということだし か残らなくなるのは火を見るより も明らかである。 ⑦ さらには、進行の指示で運転し た場合には、例え停止信号でも第 二・第三場内は無視することにな るが、代用手信号により運転した 場合には信号現示に従うという矛 盾も起きて大混乱となる。 ⑧ こうした取り扱いによって「閉 そく区間」や「防護区間」という概 念まであいまい化されたこと。 ⑨ ポイント鎖錠の概念も変えられ、 「電気的鎖錠」-要するに制御板で 在線表示がなければ列車を進行さ せてよいとされたこと。 ⑩ しかも閉そく指示運転(無閉そ く運転)でも15㎞/hとされてい るにも係わらず、進行の指示運転 は、「対応するポイント45㎞/h」 とされたこと。
この一つひとつがこれまでの考え方を一八〇度覆すものであり、重大なことだ。言うまでもなくこうした事態から派生する問題点は他にも数限りなくある。
これでいいのか!
ところがこの深刻な事態を、動労千葉以外誰ひとり問題にもしようと もしない。一体どうなってしまっているのか。 実はJR東日本本社は、これだけ重大な変更をどの組合にも一切提案せずに一方実施しようとしていた。 貨物会社も同様であった。会社は当初10月1日からの実施を計画しており、9月冒頭から各支社で一斉に教育を始めようとした。だがこの段階でも東労組を始めどの組合も全く問題視すらしなかったのである。
本社に強く抗議!
動労千葉は本社、支社に強く抗議した。「運転保安上これほど重要な問題を組合に提案もしないで突然一方的に実施するとは何ごとか」「具体的な内容も明らかにせず、団体交渉も経ないまま一方的に教育を強行するならば、われわれは恒常的スト方針の発動も含め、重大な決意をせざるを得ない」。───この抗議の結果、東日本本社は、各組合に提案して団体交渉を行なうこと、教育は一旦中止し、10月実施を一ヵ月遅らせることを約束した。 しかし会社提案後も、各組合は申し入れひとつまともに出さず、何も 問題にしないという対応に終始した。信じられないことである。危機的な事態だと言わざるを得ない。われわれはこの間、「闘いなくして安全なし」「安全に係わる一切の問題は労働組合の闘いの課題である」という原則を掲げて、反合・運転保安闘争を動労千葉の基本理念とし、終生の原点して闘いをつづけてきた。 労働組合がこうした問題に関心すらもたなくなったら安全は一体どう なるのか。労働組合の原点は一体どこに行ってしまったのか。
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