国鉄1047名闘争の「政治解決」について

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国鉄1047名闘争の「政治解決」について
国鉄千葉動力車労働組合

●4者4団体による政治決着運動の現実

(1)1047名闘争が重大な岐路にたっています。7月14日の東京高裁南裁判長の「裁判外での和解」提案と、翌15日の冬柴国土交通大臣(当時)発言以降、「最終局面」というかけ声の下で、「4者4団体」により、政治決着を求める運動が進められています。私たちは、1047名闘争をめぐるこの動きに強い危惧を抱いています。
 この政治解決運動は、解雇撤回要求を取り下げ、動労千葉及び動労千葉争議団を排除して進められています。しかも、「全面解決要請署名」には、「被解雇者4者は、不当労働行為の有無を前提にするのではなく……」と明記され、解雇撤回を訴える者に対しては、「解雇撤回を掲げ、和解を拒否して突っ込むアホがいるか」等の非難が投げかけられています。

(2)また、政治解決の名の下に実際に行なわれていることは、政府やJRへの「詫び状」の提出、民主党への「白紙委任」、JRとの「包括和解」=全不当労働行為事件の取り下げ、スト基金の積み立て中止等、政府や資本への拝跪でしかありません。7月末に開催された国労大会では、「大臣の言明はまさに真夏の日輪がほのかに黎明を兆す朝を象徴するもの」と国土交通大臣を崇めたて、さらに、「20年間の労使関係を抜本的に転換させる」、「連合とは、中央・地方における連携の強化をさらに追求する」と、政府、資本、連合にひざまずく重大な態度表明が行なわれました。こんなことの先に解雇撤回闘争の勝利など絶対にありえないのは自明のことです。私たちはこのような形で進められている現在の政治解決運動に反対します。

(3)1047名闘争に終止符を打とうというこの間の政府・鉄道運輸機構の動きは、国鉄分割・民営化の「完成」をもって、破産にあえぐ新自由主義政策へのさらなる突進を狙う重大な攻撃です。危機に揺らぐ自・公反動政権は、公務員労働者への200万人民営化?首切り攻撃に手をつけようとしています。JRでも「第二の分割・民営化」と呼ぶべき攻撃が始まっています。他方、ワーキングプア等の現実に突き落とされた労働者の怒りが爆発しようとしています。もうこれ以上1047名闘争の継続を許すことができなくなったのです。

●何が問題か?

(1)「闘争団はもうもたない、1047名闘争は賞味期限切れになる、こういう現実だから仕方がない」という言い方がされています。しかし、現実を仕方のないものと見て屈服していくのか、労働者の団結した力で変革するべきものとして見るのかは労働運動にとって根本問題です。こういって後退を続けた結果が「貧困と格差」の現実であり、その出発点が国鉄分割・民営化だったのではないのか。困難に直面したときに、問題は指導部の構えにあるにも係わらず、すべてを現場や情勢のせいにして屈服と後退を繰り返すという否定的現実もこれまで日本の労働運動が散々経験してきたことです。22年間不屈に闘い続けてきた1047名の労働者たちはそんな弱い存在ではありません。「魚は頭から腐る」というように、問題は4者4団体の指導部にあります。つまり、今1047名闘争をめぐって起きていることは、労働運動全体にとって決定的な路線問題です。

(2)「当事者がいいと言えばいいではないか」という声があります。しかし問題は、このような形で「和解」を進めることによって1047名や国労、そして日本の労働者・労働組合の団結が少しでも強化され、闘いが一歩でも前進するのか、ということです。絶対にそうはなりません。鉄道運輸機構側の構えは、「和解交渉は金銭のみ、金額は500万円マイナスα」です。こんなことをやっていたら、1047名の誇りは打ち砕かれ、生活は困窮し、自殺者がでるような事態になりかねません。国労は連合派に転落し、すべての労働者を一層激しい民営化・労組破壊攻撃が襲うことも明らかです。

(3)また、「政治決着以外に解決の道はないではないか、動労千葉は永久闘争主義者だ」といういわれなき非難が投げかけられています。
 日本の労働運動は長い歴史の中で数多くの解雇争議を経験し、勝利があり、敗北があり、また様々な形での和解決着がありました。しかし、解雇撤回をめぐる争議で、相手側が和解交渉の席にもついていないのに、あらかじめ解雇を容認して和解を求め、「納得のいく解決」をかちとった例など一度もありません。それは労働運動の常識です。そうしたこともわきまえていない人たちが、浮き足立ったように、政府、鉄道運輸機構、裁判所への幻想だけを頼りに進めているのが現在の政治解決運動です。「政治解決」は、団結と闘いの戦列が強化発展していったときに初めてなりたつものです。しかし、団結は弱まり、自ら闘いをどんどん後退させているのが現実です。
 動労千葉は、国鉄分割・民営化反対のストライキを理由に不当解雇された28名の解雇撤回闘争で勝利的和解をかちとりました。しかしそれは、「『解雇』の二文字が消えない和解は絶対に認めない」という一点で闘いぬいた結果です。

●原点からの再出発を―1047名闘争の位置

(1)あらためて原点に帰り、1047名闘争がもつ意味をはっきりさせなければなりません。
 国鉄分割・民営化は、戦後最大の労働運動解体攻撃でした。それは新自由主義攻撃を社会全体に貫徹する決定的な突破口をなすものでした。実際、わずか6年の間に20万人の国鉄労働者が職場を追われ、200人が自殺に追い込まれ、総評・社会党が解体されて階級的力関係が歴史的な転換を強いられたのです。動労は総評を脱退して民営化の手先になり、国労も闘いの方針を打ち出すことができないまま、20万の組織が4万人に切り崩されました。それまでのような体制内的な運動のあり方が通用しない時代が到来したことがつきつけられたのです。

(2)しかし、国鉄労働者はこの攻撃に屈することなく、1047名解雇撤回闘争という形をとって今日まで闘いを継続しました。1047名もの被解雇者が20年をこす闘いを継続し、「100万勢力」ともいわれる全国の労働者が、その多くが連合傘下にあるにも係わらず、今もこの闘いに自らの未来を託して支援し続けてくれていること自体が日本の労働運動史上画期的な地平です。それは、指導部の屈服と後退にも係わらず、長い闘いの中で培われてきた国鉄労働者の力、日本の労働者の力、戦後の日本労働運動の全蓄積がここに凝縮して生み出した闘いでした。

(3)一方この20年間は、新自由主義攻撃の下で、日本の労働者の賃金、権利、労働条件が徹底的に破壊され続けた過程でした。とくに派遣法をはじめとした労働法制の抜本的改悪が強行され、全雇用労働者の三分の一が非正規職、ワーキングプアに突き落とされたのです。1047名闘争はこうした事態に対する決定的な対抗力として存在し、闘いぬかれてきました。労働者は後退を強いられながら、しかし核心的なところで火花を散らして闘いが継続されたのです。またそれは、「行革でお座敷を綺麗にして立派な憲法を安置する」という中曽根の狙いを許さず、今日まで改憲をおしとどめてきた大きな力でもありました。

(4)4者4団体による政治解決運動の最も大きな問題点は、こうした1047名闘争がもつ階級的な意味と全く無関係に進められていることです。しかも自らの闘いのもつ意味は人生をかけた当該の労働者にとっては誇りそのものです。それを自らの手で打ち砕いたところに「勝利」など絶対にありえません。

●動労千葉の闘いと立場

(1)動労千葉は国鉄分割・民営化攻撃に対し、首をかけて二波のストライキに立ち上がり、40名の不当解雇攻撃を受けながら団結を守りぬきました。その闘いは、後にアメリカや韓国の労働者たちが、「民営化、新自由主義政策に立ち向かい、団結を守りぬいた国際的に希有な闘いだ。その生きた経験こそが全世界の労働者に今何よりも求められているものだ」という評価を与えてくれました。何も特別なことをしてきたわけではありません。「団結した労働者の力だけが社会を変革し、歴史を動かす力だ」という、ただその一点に依拠し、労働運動の原則を守って闘ってきただけです。私たちは、こうした闘いが、微力ではあっても今日までの国鉄闘争を土台で支える力となってきたと自負しています。

(2)資本主義の最後の延命策であった新自由主義政策が破産し、金融大恐慌が始まっています。不況とインフレが労働者に襲いかかる情勢の中で、新自由主義攻撃に対する怒りの声が、全世界で、「生きさせろ!」という叫びとともにストライキやデモ、「暴動」となって嵐のように燃えひろがっています。安倍、福田と首相が相次いで政権を投げ出し、戦後の自民党支配が終わりを告げようとしています。時代は変わり、後退を強いられてきた労働運動がいよいよ荒々しく復権しようとしています。

(3)JRをめぐる情勢も新たな局面に入っています。安全や技術継承が崩壊し、鉄道を動かす基本的な能力や技術力そのものが完全に瓦解しようとしています。あらゆる職場で欠員状態が慢性化し、休日勤務と強権的な職場支配で業務が運営されているのが現実です。JR当局はそうした危機を業務の全面的な外注化をもってのりきろうとし、それがさらに矛盾を拡大させ、安全の危機を深刻化させています。
 国鉄分割・民営化攻撃の過程で形成されたJR総連革マルと結託した労務支配も崩壊し、労務政策の大再編が始まっています。もはや手の打ちようもないほどに民営化の矛盾が噴出しているのです。
 こうした状況の中で、平成採用の若い労働者が動労千葉に次々と結集しはじめています。矛盾を突き、原則を貫いて闘えば、民営化体制を突き崩して力関係を逆転し、1047名闘争の勝利をかちとることが可能な情勢が到来しています。

(4)新たな情勢のもとで、1047名闘争も、いよいよ決着を求める闘いが始まろうとしています。1047名闘争は、日本の労働者と労働運動にとって勝利の展望、可能性そのものとしてあります。このような情勢が来る時のために22年間頑張ってきたと言っても過言ではありません。機は熟し、1047名闘争勝利の大きなチャンスが到来しています。1047名闘争がすべての労働者の先頭に立ち、怒りの声を結集する中心になれば、闘いは間違いなく爆発的に前進します。1047名闘争に求められているのは階級的立場にたちきることです。自らの闘いがもつ位置を自覚し、労働者の団結を信頼して、それを発展させることに全ての力を集中することです。1047名闘争の勝利はこうした闘いの中でこそ実現するものです。

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 4者4団体は「10・24中央集会」を呼びかけています。しかしこのままでは、闘いの幕引きを大衆的に確認し、労働運動全体に対し現状への屈服を組織し、新自由主義と民営化路線を容認する集会になってしまいます。私たちは、以上の立場から、4者4団体が進める政治決着推進運動に反対し、原則的な闘いの再構築をよびかけます。

2008年9月

大失業と戦争の時代に通用する新しい世代の動労千葉を創りあげよう!
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