国鉄分割・民営化から30年、民営化の破綻が誰の目にも明らかになっている。その中で、JRは鉄道業務すべてを外注化・別会社化し労働者への転籍を強制する第2の分割・民営化攻撃をかけている。
この攻撃はJRだけに留まるものではない。かけられようとしているのは、社会まるごとの民営化と戦争国家化の攻撃だ。
社会すべてを民営化
3月28日、大阪市営地下鉄・バス事業の廃止議案が可決され全国初となる公営地下鉄の民営化が決定された。一旦全員解雇して在籍年数も引き継がない。採用試験に受かった者だけが民営化された新会社に雇用されるという形をとることで、改悪された新会社の労働条件を受け入れざるを得なくする。分割・民営化以上にあからさまな全員解雇・選別新規採用攻撃だ。
この計画を作った上山信一は、「今の日本には、国鉄改革と同じ地域分割と民営化が必要だ」と主張し、小池都知事の下で「都政改革本部」の代表に就任した。「大阪の次は東京」という形で民営化攻撃を全国に拡大しようとしているのだ。
さらに安倍政権は、「トップランナー方式」で地方交付税を削減し、自治体業務の全面的な民営化を強制的に進めようとしている。一ヶ所でも民営化・外注化でコスト削減が進めば、他の自治体もその基準で財源が削減される。財政的に追い詰めることで全自治体で民営化・外注化を強制する仕組みだ。
この中で、すでに人間が生活するために必要なあらゆるものが民営化によって企業の金儲けの道具にされようとしている。
今国会には地方自治体の水道事業の民営化を進める水道法改正法案が提出されている。
海外では、民営化が水質悪化や料金高騰を招いた。「水道の蛇口から茶色の水が出た」「『水道水は煮沸してから使用するように』という警告を発せざるを得ない」。あまりに破綻的な現実に、再公営化する動きが続出しているにもかかわらずだ。
とりわけ、地方では採算が取れるはずがない。地方切り捨てそのものの攻撃だ。
さらに、「都道府県が開発した品種に公費を投入して、民間の種子開発への参入が阻害されている」ため、種子法の廃止法案も今国会に提出されている。
しかし、食の民営化によってアメリカでは巨大企業による種子の独占が行われた。そして生産者からの徹底した搾取と、食の安全の崩壊がおこっている。
暴かれた腐敗と戦争教育
一方で森友学園事件は教育の民営化によるおぞましい腐敗と戦争教育の実態を暴いた。
幼稚園児に「安倍首相がんばれ」「安保法制国会通過よかったです」などと唱和させ、教育勅語を暗唱させる。この森友学園のために学校設置の規制緩和が行われ、学校用地がタダ同然で売り渡された。
安倍首相は、「私の考え方に非常に共鳴している」と語り、「教育勅語を教材にしてよい」という閣議決定まで行った。
そもそも「教育改革」は84年の臨教審設置により、中曽根政権が政治課題にした。分割・民営化と一体の攻撃だったのだ。
分割・民営化の結論は北海道の破産した現実だった。そして、教育改革の結論は森友学園の腐敗と戦争教育だったのだ。
人間が生きるために必要不可欠なものさえ利潤追求の手段とし、地域そのものを破壊していく。そして戦争へと突き進んでいく。それが民営化攻撃だ。
第2の分割・民営化攻撃との闘いは、労働者の未来をかけ、全社会の民営化と戦争への道を阻止する歴史的闘いだ。
「トップランナー方式」
民営化や外注化などでコスト削減した自治体の低い経費を基準に地方交付税を算定する。16~18年度の3年で1380億円削減を見込む。
16年度に対象にされた業務 | 学校用務員事務 道路維持補修・清掃等 本庁舎清掃 本庁舎夜間警備 案内・受付 電話交換 公用車運転 一般ごみ収集 学校給食(調理) 学校給食(運搬) 体育館管理 競技場管理 プール管理 公園管理 庶務業務 情報システムの運用 |
17年度に追加される業務 | 青少年教育施設管理 公立大学運営 |