千葉支社に抗議の申し入れ 上
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動労千葉は、千葉支社が千勤第70号、72号をもって、安全運転行動を「違法行為」、「違法争議」と非難したことに強く抗議し、撤回を求め、尼崎事故にふまえた安全対策に関する見解を求めて次のとおり申し入れを行なった。 |
千総勤第70号、72号に関する申し入れ
5月24日、千葉支社は千総勤第70号及び同第72号をもって、われわれが実施する尼崎事故にふまえた安全運転行動を「違法行為」とし、さらには「違法争議」と非難する申し入れを行なってきた。
二度とあのような大惨事を起こしてはならない、乗客と乗員の生命を守り、安全を守ろうという、われわれのささやかな努力を処分という脅しをもっておし潰そうという千葉支社の驚くべき姿勢に怒りを禁じることができない。
われわれは、あらためてこの申し入れに強く抗議し、撤回を求めるとともに、次の点について会社の見解を求めるものである。
1.社長談話すら出さず!
尼崎事故は、三河島事故・鶴見事故に継ぐ、日本の鉄道史上最悪の事故となった。われわれはこの痛恨の事態を、労働組合の果たすべき社会的責任を含め、自らにつきつけられた問題として重く受けとめ、二度とあのような大惨事を起こさせてはならないと決意した。
ところが、事故後のJR東日本の対応は信じがたいものであった。
とくに107名の乗客と乗員の生命を奪った大事故の発生という現実を前にしながら、事故から1ヵ月以上が経つ今も、安全確立に向けた社長名での社員への訴えひとつだされていない。同じ鉄道事業者、同じJR会社として、この感覚は一体何なのか。
それどころか「基本動作や安全確認の徹底を指示しており、……現状でも安全性に問題はない」(5月26日付千葉日報)という千葉支社長発言に典型的に示されたような対応であった。ここには尼崎事故を自らの問題として真剣に反省的にとらえようという姿勢は微塵もうかがえない。
何という無為無策!
実際、尼崎事故後、千葉支社で現場の社員に指示されたのは、十年一日のように繰り返されてきた「基本動作の徹底」と、「社員が成すべきこと」という表題をつけた「事故が発生したときは、関係機関・社員が一致協力し、対処しなければならない」等の規程類の抜刷の掲出だけである。
これではあまりの無為無策としか言いようがない。「事故発生後の対応」は「ボウリング大会」「ゴルフ大会」等、マスコミで問題にされた「不祥事」に対応したものと思われるが、問われているのは、二度とあのような事故を起こさないために何をするのかである。それに何ら具体的な手を打つことなく、「不祥事」だけは起こすな、と指示すること自体、安全に対する感覚の驚くべき崩壊を示すものと言わざるを得ない。
尼崎事故の後も!
しかも尼崎事故後も、外房線・鵜原駅付近で軌道変異、幕張車両センター構内では、レール継目部分の締結ボルトの緩みによる踏面のずれが発生するなど、ひとつ間違えば重大事故につながりかねない事態が相次いでいる。
われわれが組合員に指示した安全運転行動は、尼崎事故を前にしながら、会社が為すべきことを何ひとつ為さない状況のなかで、鉄道輸送事業に従事する労働者、労働組合として、安全と乗客、乗員の生命を守るために必要最小限の義務と責任を果たさなければならないという思いに発したものに他ならない。その各項目は、本来であれば会社が提起するべきことである。
(1) 尼崎事故を他山の石として何を教訓化するのか、見解を明らかにされたい。
(2) 尼崎事故という、鉄道輸送事業に携わる者にとって、痛恨の歴史的な大事故を前にしながら、安全確立に向けた社長名での社員への訴えすらだされていないことについて、見解を明らかにされたい。
(3) JR東日本でも、5月25日の団体交渉で明らかにされたように、曲線の速度制限に対するATS-Pの地上子は基本的に設置されていないのが現状であるが、尼崎事故は、JR東日本で起きてもおかしくはなかった事態であるとは考えないのか、見解を明らかにされたい。
2.回復運転への駆りたて
JR西日本ですら「運転士に回復運転をしないよう指導し、心理的な重圧を和らげる」と言っているときに、千葉支社は「回復するのは当然」「現状でも運行の安全に問題はない」と言い放った。そして、安全運転行動を「違法争議」だとして処分の脅かしをかけている |
安全運転行動のうち、会社は4つの項目を「違法行為」としているが、尼崎事故がわれわれに何よりも突きつけたのは、スピードアップと過密ダイヤの現状のなかで、列車を遅らせたくないあまり、運転士が回復運転に駆り立てられることがどれほど危険なことなのかということであった。尼崎事故の直接的背景には、こうした現状のもとで、運転士が日々心理的な重圧を受けながら業務に従事している現実があることは、社会的にもあらゆる角度から指摘されており、疑いを挟む余地のないところである。
また、JR西日本も、次期ダイ改でダイヤを緩和すること、それまでは回復運転を運転士に求めないという方針を打ち出している。
なぜJR東日本だけが?
こうした状況のなかで、ひとりJR東日本だけが「『回復運転をしない』は違法行為だ、厳正に対処する」「回復するのは当然」等と言い張る現状は、あまりにも異常としか言いようがない。
しかもわれわれは「回復運転はしない」の項目について「今回の行動は列車を遅らせることを目的としたものではない。尼崎事故という痛恨の事態にふまえ、安全を守るためにわれわれに何ができるのかを考えての行動である。列車が遅れた場合、その遅れを無理に終着駅までもっていくなどということを考えてはいない。所定の運転をしていれば自然に回復する場合まで回復させないという趣旨ではない。尼崎のような事故を再び起こさないために、無理な回復運転はしないことを徹底しようというのがその趣旨であり、現場にもそのように指示している」と明確に、何度も伝えたところである。
なぜ意図的にねじ曲げる?
ところが千葉支社は、組合が明確に伝えたその趣旨すらねじ曲げて各運転区長に伝え、意図的に「違法行為」をねつ造しようとしているとしか考えられない対応をしている。各運転関係区では、組合員と現場長の間で、組合員が前述のように行動の趣旨を話すと、現場長からは「支社からはそのようには聞いていない、列車が遅れた場合その遅れを終着までもっていくと聞いている」との返答が行なわれているのが現実である。
(1) 尼崎事故をふまえた緊急の安全対策として、何よりも為さなければならないことは、制限速度を絶対に遵守すること、無理な回復運転は絶対にしないこと、危険と判断した場合は勇気をもって列車を止め、または速度を落とすこと、それによって生じる列車の遅れを問題視するようなことはしないことを、具体的かつ明示なかたちで運転士等に指示することであると考えるが、見解を明らかにされたい。
(2)「回復運転はしない」について、その趣旨をね じ曲げて現場長等に伝えた理由を明らかにされたい。
3.走行中に通告を受領?
安全運転行動のうち「運転通告は例外なく停車中に受ける」を「違法行為」とする不当な対応について、われわれは全く理解することができない。これはこれまでの会社の公式見解、現場で指導してきたことそのものに他ならない。
これが動かぬ証拠の支社長名の指導文書だ
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支社長名の文書すら否定
別紙添付の支社長名の指導文書は、今日まで実際に運転士が現場でこの文書をもって指導されてきたものである。ところが千葉支社は、5月25日の団体交渉で「初めて見た」と称し、同27日の説明の際にも「未だどこから出たのかはっきりしない」という驚くべき対応を続けている。
また、団体交渉では「走行中に受領することもある」と回答し、27日の説明では「通告をいつ受領したのかの位置づけになるが、運転士等が通告内容を復唱したときになる。運転通告受領券への記入は後で行ってもらうこともあり、通告及び復唱は走行中に行ってもらうこともある」と回答した。
団交での幾度もの確認も否定!
だが、このような見解は、これまで聞いたことも指導されたこともないものであることはもとより、「運転作業要領」等に明らかに違反する行為である。
あらためて経緯を記せば、列車無線が導入され、運転取扱心得(現運転取扱実施基準)に定められた「通告事項」の変更が無線によってできるようになって以降、列車を止めたくない、遅らせたくないという運転士の心理から、走行中に窓枠や運転台などに走り書きでメモし、受領するという危険行為が多発したことを受けて、会社として再度明確な指導をすべきであると組合から申し入れ「停車時に受領すること、緊急の場合には直ちに列車を停止させることを再度徹底する」と、団体交渉の場で何度も確認してきたことであった。
こんな暴論は絶対通用しない
また「復唱すれば受領。運転通告受領券への記入は後でもよい」などという暴論は、運転取扱要領№29、3項に定められた「通告は、無線機等を使用して行い、運転通告受領券にその内容を記入させる方法によることができる」に明らかに違反する行為である。そもそも、運転通告受領券に記入した上で復唱するからこそ、復唱に意味があるのは常識的にも考えて明白なことである。
さらに言えば、自動車運転中の携帯電話の使用も、危険行為として法的に禁止されたこと等を考えれば、今回会社が主張するような牽強付会の説がなりたつ余地は全く無いといえる。まさに安全運転行動を「違法行為」として処分するために、このような暴論がねつ造されたとしか考えられない。
(1) 上記のとおり、無線通告の受領についての千葉支社の新たな見解は、運転取扱要領等に違反する危険行為であり、この間の労資確認や現場での指導を反古にする危険行為であると考えるが、見解を明らかにされたい。
(2) 別紙添付の千葉支社長名文書について、千葉支社が作成し、これまでこの文書をもって実際に現場で指導してきたことも否定するのか、見解を明らかにされたい。
次号に続く