社会的責任の放棄 年金改悪の悪用 外注化 組合差別
闘いへ シニア制度−この現実
千葉地労委は、2月20日の「シニア制度差別事件」の審問に於いて、JR東日本に次のような「要望」を行った。 ・ 申立人3名は平成13年のそれぞれ誕生日をもって退職となってしまうため、被申立人(JR)は申立人3名の係る定年後の再雇用について早急に具体的な情報提供を行うことを要望する。 地労委が、審問開始前にこのような「要望」を行ったことの意味は大きい。 動労総連合は2月27日、JR東日本に対し、これを重く受けとめ、浅野さん、三平さん、羽鳥さんの60歳以降の雇用の場を速やかに確保するよう申し入れを行った。
シニア制度の現実
「シニア制度」の再雇用試験が終わり、その実態・現実があらわになっている。
【「シニア制度」試験結果】
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全 社 |
千葉支社 |
対象者数 |
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1328 |
47 |
1回目
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受験者 |
893 |
32 |
合格者 |
819 |
29 |
2回目 |
受験者 |
29 |
1 |
合格者 |
7 |
0 |
この表のとおり、JR東日本で今回 シニア制度の対象となる社員(今年四 月二日〜来年四月一日の間に60歳定年を迎える者)一三二八名のうち、結果として「再雇用」される条件ができたのは八二六名(約六二%)に過ぎなかった。千葉支社の結果を見ても同じである。やはり「再雇用」されたのは四七名中二九名=六二%だ。全社で五〇二名=実に四割近い者が「再雇用」から外れている。その内訳は次のとおりだ。 ・再雇用を希望せず・ 二四〇名 ・希望したが辞退 ・ 一九四名 ・試験不合格 ・ 六八名 これが示すのは何よりも、われわれが提起しつづけたとおり「シニア制度」 で定められた劣悪な条件では、相当数の者が年金満額支給年令まで働くことができないということだ。
働きたくとも……
千葉県レベルでも賃金は月額13〜14万円。地方に行けばもっと低い水準になる。しかも再雇用先は大都市に集中し、社宅から追い出されれば、片道2時間も3時間も通勤しなければいけないような条件になる者は大勢いる。再雇用先では通勤費が全額でるかどうかもわからない。また通勤費がでればでたで、それは収入に加算されるので年金が削られる。こんな条件では働きたくとも働けない、希望したくとも希望できないのは当たり前の話だ。 しかも、今年度一三二八名という数自体が、すでに絞り込まれた数に過ぎない。多くの者が57歳原則出向時点で、出向先が大都市にしかないということで通勤ができず、辞めざるを得ないのが現実だ。ほぼ出向者と同数ほどが早期退職に追い込まれている。つまり、「シニア制度」で働ける条件の者などごく一部しかいないということだ。 そればかりではない。希望はしたが、 蓋を開けてみたら、自分が今出向している事業所が募集をしていないというケースもある。現在の出向先でそのまま再雇用されるのなら一から仕事を覚える必要はないが、わずか一年だけの、しかも超低賃金の再雇用のために全く新たな職場で仕事を覚え直さなければいけないようでは、結局応募できないということになってしまう。これは実際に千葉でもあったことだ。
組合差別は明らか
しかもこの結果は、露骨な組合差別が行われたことを示すものだ。一時試験で一割近い者が落とされているが、そのほとんどは国労や鉄産労の組合員だと思われる。二次試験などほとんど合格させない状態だ。 実際こんなおかしなことはない。なぜならば、今回のシニア再雇用の場合、そのほとんどは現在出向に行って働いている職場で、定年後も同じ仕事をつづけるだけに過ぎず、試験をやること自体全く意味のないことだし、面接と作文という内容の試験で合否を振り分けることなどできるはずもないのだ。 地労委に申し立てをして闘っている3名の仲間たちは、いずれも東京メディアサービスに出向して仕事をしているが、メディアサービスの試験は28名が受けて4名が落とされている。いずれも国労と鉄産労の組合員だ。 定年を間近に控えた者まで、こんな卑劣な、汚いやり方で差別・選別するようなことは絶対に許せない。ハラの 底から怒りが込み上げてくる。
社会的責任の放棄
「シニア制度」は、年金改悪を逆手にとり、これを徹底的に悪用したものだ。 「再雇用」にかこつけてベテランの労働者を超低賃金で活用し、しかも業務の全面的な外注化攻撃と抱き合せにすることで総額人件費の大幅な抑制を図り、さらにはそれを組織破壊の道具にまでしている。それは企業の社会I責任を放棄し、法の精神にも背くものだ。 法律では「事業主は、その雇用する労働者が、その定年ごも当該事業主に引き続いて雇用されることを希望するときは、65歳に達するまでの間、当該労働者を雇用するように努めなければならない」と定められ、また政府の基本方針でも「希望者全員を対象とする60歳を超える年令までの継続雇用制度の導入を促進する」と定められている。要するに年金制度の改悪は、企業にも応分の負担を求めているのだ。 こうしたことからも「シニア制度」は到底認められるものではない。シニア制度−業務外注化阻止に向けて、まなじりを決して闘いに起ちあがろう。
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