「 木更津支部脱退強要事件」 で中労委が救済命令を交付 JR東日本は命令を履行し、不当労働行為をやめろ
10月13日、中労委は、96年3月、木更津支区・小関支区長(当時)が、ECへの転換を希望していた動労千葉組合員に対して、支区長としての立場を利用して脱退勧奨を行い、職場においてEC転換教育の資料とともに動労千葉からの脱退届とJR東労組への加入届を手渡し、その後受け取り、実際に脱退させた行為が不当労働行為であるとして争っていた「木更津支部脱退強要事件」について、初審千葉地労委命令に引き続き、JR東日本の再審査を棄却して、組合側の主張を全面的に認める救済命令を交付した。
会社の主張を全て退ける救済命令
中労委命令は、JR東日本による動労千葉の実体とそれに基づく脱退勧奨の事実が具体的に認められたこと、小関支区長は東労組組合員としての立場で脱退勧奨を行ったからJR東日本に責任はないとの会社側主張を退けて、JR東日本の不当労働行為意思そのものを認定したという点では極めて重要な命令である。 また、「90・3スト支配介入事件」や「津田沼支部配転差別事件」や、「幕張支部配転差別」での反動命令に見られる、会社側の表面的主張・配転理由等だけを認定するという労働委員会の姿勢そのものが問題になっている時に、労働組合に対するJR東日本の支配介入や脱退勧奨の実体、労働組合と会社との関係等について分析し、認定したという点でも重大な勝利命令だ。 JR東日本は、本件救済命令が交付されたことに踏まえ直ちに命令を履行しろ。われわれは、本件救済命令の履行を強く求めるとともにJRから不当労働行為を撤廃するたために全力で闘いぬく。 命令の要旨は以下のとおり。
【JR東日本の不当労働行為責任】
ア(会社代表者の)指示が認められない場合でも、行為者の地位・権限、行為の内容及び影響力、その時期及び場所、行為者と相手方との関係、行為者の組合活動の状況、使用者が当該行為についてとった態度、当該行為が主として個人的立場又は別組合員としての立場からなされたか否か、当該労使関係の状況等総合的に考慮し、行為者が、職務上の地位を利用して、使用者の意を体して当該行為を行ったものと認められるときには、使用者に帰責される。 イ 小関は支区の現場長として支区業務全般の管理及び運営を任務としており、支区の職員の人事に関しては、自己申告書や個人面談に基づき、本人の肴望を把握して支社に報告する立場にあった。 小関は、支区長として、同支区所属職員の人事に関して、一定の影響力を有する地位にあったことが認められる。 ウ 小関が脱退届を保田に手渡す行為は、以上の事実経過のもとでは、保田のEC転換受講等に関連させて行われたものであり、上記イのような支区長の地位を利用してなされた行為である。 EC転換講習を受講した者は、東労組の前身の組合員を除けば、いずれも組合を脱退してから受講していることから、(小関の)行為が、当時EC転換講習の受講と習志野運輸区等への異動を希望していた組合員にとって、いずれの労働組合に所属するかの判断に影響を及ぼしうるものであった。 エ 会社が別組合を基軸とした一企業一組合の実現を目指していたこと等からみて、会社は組合に対しては批判的な立場であった。組合は会社を被申立人として数々の不当労働行為救済申立てを千葉地労委に行っていることから、会社と組合は、対立状態にあったものと認められる オ 組合員への脱退の働きかけは、小関が、EC転換講習の受講とその後の異動は組合を変わる良い機会になると考えたことに基づき、同人の判断でなされたものであって、東労組の発意ないし指示に基づくものではない。そうすると、小関が組合員に東労組への加入を勧奨した行為が、東労組の組合員としてなされた行為であるとは認められない。 カ 組合員は、EC運転士資格取得のうえ、習志野運輸区等への異動を希望しているのであり、小関が組合員に脱退届を手渡した時点においても、EC転換講習を受講できることが決まったのみで、習志野運輸区等への異動は決まっていなかったのであり、組合員としては、異動についての自分の希望を支社へ伝えることができる立場にある小関の言動に大きな影響を受けざるを得なかったことが推認できる。 キ 小関は、支区長として、支区職員の人事に一定の影響力を有する地位にあり、組合員がEC転換講習を受講したうえでEC運転士資格を取得し、習志野運輸区等に異動を希望していたことから、EC転換講習受講の話をした際に会社と対立状態にある組合からの脱退を持ちかけ、受講決定後には受講後の異動に関する希望の実現について話をした後、支区庁舎内において、現場長からの業務上の指示ともいえるEC転換講習受講にあたっての入寮関係の書類の交付に際して、書類の入った封筒に同封して脱退届を手渡ししているのであって、この小関の行為は、支区長としての地位を利用してなされたものと言わざるを得ず、本件における労使関係のもとでは、小関が東労組の組合員であることを考慮しても、会社の意を体してなされた行為として考えるべきものである。 したがって、小関が組合員に対して組合からの脱退届を手渡した行為は、本件事実関係のもとでは、労組法に該当する会社の不当労働行為であると判断することができる。
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