「日の丸・君が代」強制反対―教育労働者への処分弾劾

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「日の丸・君が代」強制反対―教育労働者への処分弾劾!

 3月30日、「日の丸・君が代」強制に反対して不起立闘争を闘った教育労働者52人に、東京都教育委員会(以下都教委)は処分を決定した。断じて許すことはできない! この暴挙を強行した都知事石原と都教委を徹底的に弾劾する!
 そもそも今回の不起立闘争は、昨年とは比較にならないほど激しい情勢の中で闘われた。国家主義が台頭し、排外主義があおりたてられ、一挙に憲法・教育基本法改悪に突き進もうとする動きのなかで、教育労働者の戦争協力に対する不服従の抵抗闘争として闘われたのだ。
 「不起立を繰り返せばクビ」、昨年の被処分者は嘱託採用で不合格、「一度でも不起立したら再雇用はない」と恫喝し、被処分者への強制異動が次々と行われ、圧力がかけられた。さらに、卒業式当日は、ほぼ全校に公安刑事や警察官が配置され、ビラまきの支援者を逮捕するなど前代未聞の弾圧体制を敷いてきた。都教委職員も各校に派遣され、教職員に対する監視と強要を行った。
 こうした大弾圧体制を打ち破って起ちあがった教育労働者たちは、直ちに抗議の記者会見を開き、「『教え子を戦場に送らない』『再び過ちはおかさない』ことが今問われている、ここで踏みとどまろう」と決意を表明し、意気軒昂と闘いぬいている。
 この闘いは、全国に大きな波紋を呼び起こしている。
 一挙に戦争への道を掃き清めようとするファシスト石原に大打撃を与え、また、連合の改憲勢力への転落を阻止する現場からの根底の闘いだ。不起立の教育労働者と連帯し、改憲ー教育基本法改悪を阻止しよう!

東京新聞の掲載記事より
『君が代』強制都立高卒業式の現状

 都立高校の卒業式が11、12の両日、ピークを迎えた。東京都では国歌斉唱時に教員が起立して「君が代」を歌わないと処分される。今年は、生徒に対して斉唱を指導するよう校長の職務命令も出た。こうした強制は、「日の丸」「君が代」が好きか嫌いかとは別問題だ。教員の精神をこわばらせ、生徒に大人社会の“欺瞞(ぎまん)”を伝える現状すら招いている。

 卒業証書を授与された生徒がマイクを握った。「校長先生と都教委にお願いします。これ以上、先生方をいじめないでいただきたい」。会場からの拍手が20秒近く鳴りやまなかった。
 10日にあった都立A高校の卒業式、出席者らに強い印象を残した一場面だ。歌わない教員が処分対象になることを知っての「いじめ」発言だった。(略)
 03年に都教委が通達(国旗・国歌の実施指針)を出すまでは、起立、斉唱するかどうかは内心の自由の問題、と多くの学校が説明していた。いまはそれが許されない。

■「職務命令」出し斉唱の指導義務

 昨年9月、都教委は校長連絡会で、生徒に対する国歌斉唱の指導を「職務命令」として教員らに義務づけるよう口頭で指示した。生徒が起立しなければ担任の教員が処分され、「日の丸・君が代」強制が生徒らにも及ぶ事態が明白になったのが、前年までの卒業式と今回との違いだ。
 都立高関係者によると、今年2月には一部地区の副校長連絡会で、多数の生徒が不起立だった場合は、起立を促すため式の途中でも指導するよう都教委が異例の要請をしたという。都教委は「要請の事実はない。『学習指導要領に基づき、適正に生徒を指導する』よう言っているだけで、あとは各学校でご判断される」(高等学校教育指導課)と説明するのだが。

■校長あいさつで生徒が起立拒否

 3月初めに卒業式を迎えたB高校では、国歌斉唱では生徒のほとんどが起立した。ところが、続く校長あいさつでは、2年生が「起立」の号令に従わず、約3百人のうち立ったのは一人だけ。「国歌斉唱で不起立だと担任が処分される」ことを避けた在校生による無言の抵抗だ、と式の出席者らは受け止めた。(略)
 今年の卒業式で、国歌斉唱の際に起立しなかった教職員は10日までに13人を数える(「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会まとめ)。
 このうち都立大森高校の松原信材教諭(60)は、5日の卒業式で初めて起立しなかった。定年後も嘱託として学校現場に残る道があったが、「これで道を閉ざされる」覚悟で式に臨んだ。
 「多くの教職員が軍隊まがいの抑圧と自らの良心のはざまで悩み、苦しんでいる。私なりのやり方で抗議の意思を示した。敗戦の年に生まれ、戦争を放棄した憲法の恩恵も受けてきた。60年たって、民主主義国の首都で、こうした強制が国民の目に触れないまま既成事実化することが怖い」

■会議で議論なし 押し黙る教職員

 前出のB高校の卒業式で、ただ一人、不起立だった男性教員(47)は「大人として、人間として生徒に接していきたい。強い者には従った方がいいという、悪い教材に自らがなってはいけない。教職員は皆、強制に反対なんだけど、職員会議での議論はなく、貝のように押し黙っている」と、胸の内を明かす。
 都教委の強制に反対して、卒業式の主役は生徒たちのはずではないか、と父母らの有志がビラを配って呼びかけている。
 前出のA高校では前PTA会長(50)らが「伝統的な自主自立の校風を実現できる学校であってほしい」と訴え、卒業式の朝、校門前で保護者らにメッセージカードを配った。昨年の卒業式で、来賓の元教員が雑誌コピーを保護者に配布しただけで刑事事件として起訴された都立板橋高校でも、11日の卒業式前に、地域住民らが校門前で「歌う、歌わないは自分が決めることです」と書いたビラを配布した。
 しかし、その一方で、こうしたビラ配りの現場は、父母や教員から依頼を受けた弁護士らが、手弁当で立ち会うという緊迫した事態になっている。万一の「混乱」を避けるための措置だが、3月に入り都立野津田高校と農産高校で、学校の校門前でビラを配った人たちが、「建造物侵入」の疑いで逮捕される事件が相次いだことも背景にはある。

■侵入罪は困難 拘置認められず

 野津田高校の場合は、東京地裁八王子支部が逮捕された男性2人の拘置を認めずに釈放した。ビラを配っていた場所が同校の敷地内とはいうものの、校門外のバスのロータリー周辺だったためで、同支部は決定理由で「立ち入った敷地部分は高校の門や塀の外側にある土地で、これを建造物侵入罪に当たると評価するのは困難だ」と指摘。農産高校のケースでは、検察が拘置請求自体をしなかった。
 しかし、いずれのケースも学校が警察に通報し、校門前でのビラ配布者がすぐ逮捕されるという共通の構図だ。今年の卒業式では、校門付近に「許可を受けた者以外の入場はできない」と掲げた学校が多く、私服の警察官が待機している場合もある。「日の丸・君が代」の強制が進む中で、教育の場と警察との連携が強まっているともみられる。
 こうした現状に対して、松山大学の大内裕和助教授(教育社会学)は「強制は即刻やめるべき」との立場から、こう指摘する。
 「教育の場には強制はなじまない。先生が処分されないために生徒が立つというのは戦術としてはありうるかもしれないが、生徒が自分の意思を曲げてまでそうしなければならないこと自体が非教育的だ。『日の丸・君が代』の強制は、憲法19条が規定する『思想及び良心の自由』に間違いなく反する。都教委は、学習指導要領に基づいて適切に指導する、という理由を錦の御旗にしているが、指導要領が憲法や教育基本法を超えていいはずがない」
 都内の有権者を対象にした昨年7月の東京新聞の調査では、教職員への起立義務づけについて、「行き過ぎ」「義務づけるべきでない」と否定的に答えた人が合わせて7割に達した。
 大内氏は強調する。「多くの都民が反対している以上、今のようなやり方はやめるべきだ。卒業式だけの問題ではない。自分の思想信条に基づき『したくない』と思うことを一律に強要することで生徒と教員、あるいは教員同士の信頼関係を壊し、学校現場を荒廃させているだけではないか」

(東京新聞 05年3月13日付)

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