われわれは二〇〇一春闘を、「組織強化・拡大春闘」と位置づけて、大幅 賃上げ獲得-貨物ベアゼロ回答打破 をはじめ、「シニア制度」-メンテナンス業務の全面的な外注化阻止、一〇四七名の解雇撤回などの諸要求の解決を求めて、延べ一二〇時間、スト参加人員六〇〇名に及ぶ組織の総力をあげたストライキに起ちあがった。また今春闘は戦後史の大きな転換点における闘いとなった。
戦後史の転換点における闘い
▼ 日経連の悲鳴
今春闘にあたって日経連は、「春闘は20世紀で終わった」と公言し、これ までにもまして“雇用・賃金・権利破壊による資本の生き残り”への意図をあらわにした。また、①「これまでどおりの活動では、『経営者よ正しく強かれ』等の創立の理念の実現は難しい」「バブル崩壊で失われたわが国の資産価値は約千五百兆円に及び、これは太平洋戦争での損失の4倍にあたる」等、悲鳴をあげて資本主義体制の崩壊を自認し、②「グローバル化と連結決算に対応した人事制度、退職金制度の徹底」をうたって、業績の悪い連結子会社の
整理、あらゆる手段を使った収益率の向上、退職金(年金)会計導入に伴う退職金制度の解体等をうちだし、③「高コスト構造を是正するためには社会保障、税制の改革が急務」として、はじめて「社会保障改革」に一章を設け、「国民自らがあらかじめ老後や病気にそなえる自助の徹底が重要」と称して、社会保障制度の全面的な解体を打ちだす等、戦後的な労資関係、社会のあり方を根本から覆そうとする資本の側の意図を明らかにした。
▼ 情勢の急転
一方、春闘を前にしてわれわれをとりまく情勢も急転した。ついにアメリカのバブル経済が破綻し、日本経済ももはや後のない危機に行き着くなど、戦後の資本主義体制は明らかに崩壊過程、恐慌過程に入ったのである。
こうした事態を受けて森政権は、不良債権の最終処理や銀行保有株の国
による買取りを柱とした“禁じ手”というべき「緊急経済対策」を発表したが、これは財界や政府筋からも「不良債権の最終処理をした場合、失業者は一三〇万人増える」「崖から落ちかかってところで背中を押すようなもの」等の悲鳴があがるものであった。
またこうした危機や、KSD・外務省機密費問題によってあらわになった
政治腐敗を背景として、森自公政権は事実上瓦解し、戦後自民党政治そのものが崖淵にたつに至った。
▼ 労働者の闘いが問われた
乱暴極まりないやり方で労働者の雇用や権利、賃金が解体される一方で、銀行などを救うためには、公的資金が湯水のように注入されるなど、とんでもない無法状態が社会を支配している。
とくに今春闘はこの4月から年金や雇用保険制度が抜本的に改悪されるという事態の最中の闘いであった。本来であれば数十万のデモが街頭を席巻し、ゼネストが起きておかしくない情勢だ。われわれはこうした我慢のならない状況に対する異義申し立てとして、この闘争に起ちあがる決断をした。
今春闘は、戦後の政治・経済・社会システムが目の前で崩れ去ろうとしている状況に対し、労働者がどのように
対抗するのかという意味でも、決定的に重要な位置をもつ闘いであった。
第二の分割・民営化攻撃との対決
さらに国鉄-JRをめぐる情勢も重大な攻防の局面を迎えていた。今国会で進められようとしているJR本州三社の完全民営化を契機として、「第二の分割・民営化」と言うべき攻撃が開始されたのである。その攻撃の核心は、
▼ 一〇四七名闘争解体攻撃
第一に、分割・民営化攻撃への根本的な意義申し立てとして闘われている一〇四七名の解雇撤回闘争を潰すこと、つまり四党合意による一〇四七名闘争解体攻撃である。国労本部はこの攻撃に屈して1月27日の定期続開大会で機動隊の手を借りて四党合意を強行採決し、また3月15日に行われた四党による国労三役へのヒアリングでは、自民党から裁判の取り下げや「内部の不況和音の解消」がつきつけられ、国労本部は「責任をもって矛盾を解消する」と答えるという重大な事態に至った。
▼ JR体制の再編
第二に、JR東日本のニューフロンティア21中期経営構想にその基本方針
が示された、これまでの鉄道会社のあり方とそこに働く労働者の労働条件を根本から覆そうとする、新たなJRの
大リストラ-大失業攻撃の開始である。シニア制度と抱き合わせにされた保守部門の全面的な外注化-転籍攻撃は、その中心をなすものだが、東労組は3
月30日にこの提案をそっくり容認し裏切り妥結するに至った。
またJR貨物でも、経営形態の再編を含む新たな攻撃が、二〇〇三年度をメドにした「ポスト新フレイト21」計画の策定というかたちでかけられようとしている。
▼ 革マル結託体制の崩壊
さらに、この間のJR総連九州労の集団脱退、JR総連・革マルと革マル本体の異様な対立・抗争も、完全民営化を前に「革マル問題」の清算に動きだした資本・権力側の動向を背景として起きている事態であることは明らかである。JR総連は組織崩壊の危機に逢着し、JRの労働戦線は今新たな大再編過程=戦国時代に入ったのだ。
しかしこうした事態について、国労も含め誰一人として問題視すらしようとしないないのが現状であった。少なくとも、眼前で進行している事態の本質を明るみにださなければいけない、それがわれわれの切実な思いであった。今春闘は、こうしたJRをめぐる新たな情勢に真正面から対決する闘いだったのである。
闘いがきりひらいた地平
▼ 放たれた火花
われわれは今春闘の基本的な課題を、以上のように直面する情勢との関係において確認し、とくに今春闘を労働組合のあり方を問い、社会のあり方そのものを問う闘いとして位置づけた。またその全過程を通して、一切をJR総連解体-組織強化・拡大に集約しきるという意志統一をもって、直ちに全支部で闘争体制を築きあげた。
この闘いはわれわれにとって五年半ぶりの組織をあげたストライキであった。しかし組合員の底力は如何なく発揮され八〇〇本の列車を運休に追い込み、資本・権力に大きな打撃を与えた。
このストライキは日本の労働運動全体を見ても、今春闘における最大規模の闘いであった。われわれは、激しい資本攻勢のなかで苦闘する全国の仲間たちに労働運動の再生に向けたアピールを送りたいという思いでこの闘いに起ちあがったが、放たれた火花が、全国で闘いの炎となって燃え上がることをわれわれは確信している。
とくに、JR東労組が保守部門の全面外注化提案を裏切り妥結し、国労本部は4党合意の受け入れを強行採決するという事態のなかで、われわれが闘いぬいたストライキと、新たな闘争組織を結成して独自の闘いを開始した国労闘争団の仲間たちの闘いは、鮮明な対比となって国鉄-JR労働運動の未来を鮮明に照らしだすものであった。
▼ 組織の強化・拡大
また、今春闘を「組織・強化拡大春闘」と位置づけて闘いぬいたことも非常に大きな意義をもつものであった。動労千葉がおかれた困難な状況のなかで、全組合員の力を結集してこの闘争を実現することを通して、これから始まろうとしている激しい組織攻防戦にたち向かうことのできる団結の強化、組織の強化をかちとることができたことは何よりの成果であった。
確かに組織拡大は、今春闘ストを準備する過程で二名の仲間が動労千葉に結集するという一歩をきりひらいたものの、未だその成果を結実させるには至っていない。しかし闘いは東労組の亀裂を一層拡大し、本格的な組織拡大への大きなステップとなった。
われわれのストライキに対し、東労組・革マルは切羽つまった危機感をあらわにして臨んだ。スト直前には、ある分会の分会長が乗務中に革マル支配から離反する組合員に暴力を振るって乗務不能にさせるとか、スト中には分会三役が予備勤務に降りて組合員を監視するといった事態が至るところで見いだされた。われわれのストライキはJRの革マル結託体制を確実に揺るがしたのである。
▼ われわれは闘い続ける
われわれが解決を求めた要求については、JR貨物の二年連続ベアゼロ回答の強行など、その全てが今後の闘いにもちこされることになった。
しかしわれわれは、何ひとつ抵抗も受けずにこのような資本攻勢が貫徹されようとしている事態にただひとり強く反対の声をあげたことは非常に大きな意味をもつものであった。
われわれは、多大な勇気を与えてくれた全国の仲間たちのご支援に心から感謝するとともに、この闘争のなかで蓄えたエネルギーをバネにして、今後も労資の力関係を揺るがすような本格的な組織拡大の実現めざし、そして国鉄闘争の勝利と闘う労働運動の新しい潮流の本格的な発展をめざして全力で闘いつづける決意である。