JR東日本は7月3日、グループ経営ビジョン「変革2027」を発表した。その内容は公共交通機関としての役割だけでなく「鉄道会社」であること自身を放棄しようというものだ。
それは冒頭の深澤社長の声明文に端的に表れている。〝これまでの延長線上で発想・行動していては、変化に対応できない〟〝「鉄道を起点としたサービス提供」から「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」に転換する〟―つまり、これまでの鉄道会社としてのあり方から抜本的な転換を行うということだ。
「鉄道会社」投げ捨て利益を優先
「基本方針」でも、「鉄道を中心とした輸送サービスを質的に変革」「 生活サービス事業及びIT・Suica事業に経営資源を重点的に振り向け、新たな『成長エンジン』としていく」とされている。鉄道に関する部分は、「重層的で〝リアル〟なネットワークと交流の拠点となる駅等を活かし、外部の技術・知見を組み合わせてサービスを創造」とあるのみ。鉄道部門は〝二の次”どころか〝眼中にない〟という扱いだ。
すでに国立駅では、駅業務と商業施設を一括して子会社に外注化し、〝駅長兼商業施設の支配人〟〝テナントの施設管理をする日も、改札業務をする日もある〟といったことが行われている。〝儲からない鉄道部門には人員もカネもかけない〟〝利益を最優先にして、外注化・別会社化を一層推進する〟という宣言だ。
一方で、地方についてはさらなる列車削減、ワンマン化・別会社化等、切り捨てに向けて一挙に動き出そうとしている。「地方を豊かに」と題する項目では、「地域特性に応じた輸送モードへ転換」が掲げられている。深澤社長は就任時のインタビューで、「不採算路線の代替として相乗りタクシーや自動運転タクシーなどによる交通の仕組み作りを検討」とまで語っている。そして、6月12日には日本郵政との協定締結が発表され、「郵便局舎の駅舎内への移転を含め、郵便局窓口業務と駅窓口業務の一体運営の実現を検討することで合意」と報じられている。
〝地方に鉄道は必要ない〟〝駅も可能な限り無人化・廃止〟〝残すとしても別会社化してJRからは切り離す〟ということだ。鉄道の公共性も投げ捨て、地域での生活もないがしろにし、利益だけのために地方全体を切り捨てるなど、許すわけにはいかない。
乗務員勤務改悪阻止は重大な決戦
また、「都市を快適に(輸送サービスの質的変革)」として、ドライバレス運転が打ち出されている。自動運転導入で、〝運転士がいなくても運行できる〟〝それなのに特別な手当を払う必要はない〟と乗務員勤務そのものを解体する攻撃に打って出ようとしているのだ。
今回の乗務員勤務制度改悪は明らかに、その攻撃に会社が本気で踏み込んでいることを示している。手当一つとってみても、会社は「手当総額は変わらない」としているが、深夜額A・B、行き先地手当を廃止し、一般の深夜早朝勤務手当を支給するという。いずれも乗務員に特殊に支払われていた手当を廃止する提案だ。
「乗務員に特別な手当は必要ない」という枠組みが作られれば、「なぜ時間額・キロ額が残っているのか」「一般的な職種手当で十分だ」と特殊勤務手当(乗務手当)全廃へと進んでいくことは間違いない。
会社が乗務員の労働条件解体に手を付けたことは重大な意味がある。それは乗務員が鉄道にとって最も中心をなす職種だからだ。長期の養成期間を要し、一人の労働者にかかる責任も重い。その運転業務の労働条件・権利のあり方は、JR全体を規定する位置をもっている。だからこそ、ここを打ち砕けば、JR・関連会社で働くすべての労働者の権利を徹底的に解体できると考えているのだ。
鉄道の公共性も鉄道会社としてのあり方も投げ捨てる。JR・関連会社で働く労働者は徹底的に労働条件を切り下げられ、極限的な人員削減と労働強化にさらされる。この攻撃を阻止するためには、ここで反撃に立ち上がることが絶対に必要だ。動労千葉はストを構え全力で反撃に立ち上がる決意を固めた。すべての仲間はともに職場から団結して反対の声をあげよう。