動労総連合ーJR東日本の「新たな組織と働き方」に関して解明要求の団交で問題点を追及 その①

9609

この間、動労総連合は、動労総連合申5号に基づき、JR東日本の「新たな組織と働き方」に関して解明要求の団体交渉を行ってきた。団体交渉の概要は以下のとおり。

 今の現場ではスピード感ある対応ができない?

組合
「新たな組織と働き方」を提案した目的を明らかにすること。

会社(文書)
新たな時代に向けた発展のため、モビリティと生活ソリューションの二軸で新たなマーケットを創造し、今後も持続的に発展していく必要がある。社員がお客様に近い所で自らの創意を発揮し、社会課題の解決への貢献や感動の創造に向けて果敢にチャレンジできるよう「融合と連携」をさらに加速するために組織再編を行う。あわせて、成長の前提である社員の成長のさらなる促進を目指して人事・賃金制度を抜本的に見直した。

組合
「自らの創意を発揮し、社会課題の解決への貢献や感動の創造に向けて果敢にチャレンジできるよう「融合と連携」をさらに加速するため」とは具体的にどのようなことを想定しているのか。

会社
今までの現場では限界があった。本社・支社の垣根をなくして事業本部を設置することにより、さらなる社会課題の解決を図りたい。現場で様々な課題を解決することができればお客様にも喜んでいただけると考えている。支社的な業務もできるので社員が企画し運営していくことができるように見直していきたい。

組合
これまでは現場と企画部門がそれぞれの業務を行って鉄道運行を行っているが、「職場と企画部門の融合」が、現場にとってどのように役立つのか。

会社
お客様に対してはこれまでどおりのことをやった上で、より幅広い視点で見てもらいたい。これまでは、お客様に聞かれたことには誠実に正しく答えてきたと思うが、それだけではなくて聞かれなくても分かるような何か、例えば案内ツールのような物ができないかというようなことを、事業本部を巻き込んで一人ひとりが進んで考えられるような仕組みを作っていきたいと考えている。

組合
今の回答の内容は、すでに現場でやっており、わざわざ事業本部にする必要性を感じないが。

会社
仰るとおりだ。これまで統括センター化を進めてきたところであり、10年前では考えられない職場になっている。一方で、大きな取り組みになれば支社を介して計画する、さらに別の支社も含めて行うこともあり、スピード感がある対応ができなかった。事業本部という一つの組織にすることで情報の連携やスピード感を追求していくことができるのではないかと考え、今までやってきたことも踏まえて提案した。

 「事業本部」は「一つの組織」

組合
口頭回答の中で「一つの組織」という言葉が出されたが、「事業本部」を一つの組織として見ているのか。これまでの支社単位での見方と違うということか。

会社
指摘のとおりだ。支社単位だと、それに統括センターが付属する形だが、事業本部ではそれぞれが一つの組織として地域と密着して様々なことを行うことになる。

組合
現場では、これまで通り業務を行うわけだが、その上で企画業務を行うことになると現場での業務のあり方が、企画業務の方に引っ張られ、万全の業務ができなくなる、それはひいては鉄道運行で求められる緻密さや正確さ、安全に影響がでるのではないかと危惧するが。

会社
提案したような内容で現場の業務がおろそかになるようなことがあってはならないと考えている。これまでも問題が起きているとは考えていないし、逆に様々な業務を行うことで視野も広がり現場業務に活かしていけると考えている。また、現場業務と企画業務を行うことで負担が増えるのではないかと考えていると思うが、支社で企画業務を行っていた者が現場業務を行うことも含めてしっかりとした要員計画も立てていきたいと考えている。

組合
乗務員の場合、乗務を行い、さらに駅業務や車掌その他の指示業務をやった上で企画業務を行うことになれば仕事の中身が大幅に増え疲労が増すことになる。それは精神的、肉体的負担としてあらわれ安全にも影響が及ぶことになる。今でも相当厳しい業務を行っているが、今回の提案ではさらに企画業務が増えることになっているが、そうしたことは考慮されているのか。

会社
様々な業務を行うことで負担になるというご指摘ですが、それぞれにより何が負担になるのか、どの程度負担を感じるのかが違うと思うので、それぞれで対応していきたい。また、負担が増えて休んでしまうというのは望んでいるわけではない。

組合
個人のことを問題にしているわけではない。会社として組織全体としてどう考えているのかということだ。

会社
会社としては融合と連携を進めて行くということだ。

組合
現段階での会社の判断ということか。

会社
その通りだ。

 尼崎事故の教訓を忘れたのか!

組合
企画業務等を簡単に行うというが、乗務中は信号や標識、駅の進入時の乗客の状況等々、様々はことを確認している。今でも「融合化」の中で大変なのに、そこに企画業務のことが入れば否応なく乗務に集中できなくなってしまう。2005年4月25日、JR西日本で尼崎事故が発生したが、その時、運転士は「日勤教育」のことを考えていたことが事故の大きな要因だといわれている。乗務中でも集中できない場面ができてしまう。今回の提案、とくに企画業務との融合は、それを助長し、安全が損なわれることになるのではないか。

会社
乗務員として集中する時は集中するということはこれからも変わらないと思うが、企画業務を行うからといって信号を誤ってしまうということは、あってはならないと考えている。乗務員としても企画業務につながることはあると思うので対応できるような組織を作っていきたいというのが今回提案の趣旨であり、運転がおろそかになってもいいと考えているわけではない。

組合
「社会課題」とは何を刺しているのか。

会社
人口減少や少子高齢化、東京への一極集中の問題、環境問題等を含めて社会的な課題として捉えている。

組合
そうするとこの提案も、これらの問題を解決するための一助になればと考えているということか。

会社
そのとおりだ。

組合
回答文に「『融合と連携』をさらに加速する」とあるがどのような意味か。

会社
今も融合と連携は進めている。今回、組織の再編を行うことでさらに融合と連携を進めていくという意味で記載した。これまでは無理だった内容も社員の発意でできる仕組みが構築されるという意味である。

組合
これまでは、本社→支社→現場という形で指示が降りて各業務を行っていた。提案は、各事業本部独自で業務を行うという主旨か。

会社
これまでも現場では色々やっているが、今回は、現場でのアイディアを施策に活かすこともできる枠組みをつくっていきたいと考えている。

組合
その場合の責任のあり方はどうなるのか。

会社
事業本部ですので、トップがとることになるが、施策の内容により色々な責任のあり方がある。

組合
千葉の場合、組織再編で「千葉」「総武・京葉」「房総」の三つに分かれるが、ダイ改などを考えると千葉支社的な対応、つまり三つが連携しないとできないことが起きてくると思うが。

会社
ダイ改などは、それぞれの事業本部が、勝手に筋を引くことはできないので、旗振り役を決めて対応する必要がある。細かいところは今後明らかにしていきたい。

 国鉄時代から続く考え方を見直すことに焦点

組合
「国鉄由来の人事・賃金制度等を抜本的に変革します」の主旨を明らかにすること。

会社(文書)
人事・賃金制度は、発足以来数次の改正を行ってきた。今後も社員の価値観やライフスタイルの多様化、仕事や働き方、職場のあり方の大きな変化に対応し、個別・多様で自律的なキャリア形成や社員の活躍・意欲に答応える運用・処遇等を進める。

組合
趣旨を具体的に明らかにしてもらいたい。

会社
都市手当も含めて国鉄からJRになってからも同じような考え方で行ってきた。今の融合と連携を行う中で社員の意欲に応えきれていないのではないかと考えている。これを見直す中で「抜本的」に変える必要があるということで「国鉄由来」という表現にしたということである。
国鉄時代から続く賃金体系や特別勤務手当等もそうだが、仕事に対する考え方も大きく変わっている。それを抜本的に変えるということをわかりやすく説明するためにこうした表現にした。

組合
回答文の「人事・賃金制度等」の「等」は何を意味しているのか。労働組合との関係も含めて見直すという意味があるのか。

会社
「等」は、福利厚生を含めた内容を示している。また、今回は組織と人事・賃金制度の内容であり、労使間の協議の問題を変えるということは書いていないので、そうした意味を含むものではない。

組合
「価値観やライフサイクルの多様化」とは何を意味しているか。

会社
夫婦共働きで子育てに集中したいなど、働き方が変わってきている。業務的には「ジョブ型」採用が増えるとか、一人ひとりの価値観がそれぞれ変化してきていることを踏まえ回答のような表現とした。

組合
「職場のあり方の大きな変化」とはどういうことを意味しているのか。

会社
融合と連携を進めていく中で働き方も変化してきているという意味で回答のとおり表現した。

 やりたい業務を見つけていく?

組合
「個別・多様で自律的なキャリア形成」とは何を意味しているのか。

会社
今後、事業本部化されれば、自分たちでどのような業務をやるのか、対応するのかなどキャリア形成を自分たちで考えてもらうということだ。これまでは駅→車掌→運転士という形であったが、今後は単なるステップアップではなく、やりたい業務を見つけていくという趣旨だ。キャリア形成は一人ひとり違うのでそれぞれにあったキャリアを積んでもらいたい。

組合
会社がこうしたことを提案し、回答し、現場で説明するということは、会社からの「業務指示」になってくる。そうなれば強制という意味を持つことになるのではないか。

会社
それに対しては、社員一人ひとりとコミュニケーションを取りながら、会社として支援していきたい。指示ではなく支援と捉えてもらいたい。

組合
現場において、積極的にキャリア形成を積みたい、多様化を積極的に行いたいと考えている者はどの程度存在するのか。

会社
数字で表せるものはない。しかし、入社時にも色々話しを聞き、その中で企画業務をやりたいなどの声も聞いている。考え方はいろいろあるが、文書回答のような表現とした。

組合
現場では、俺は運転士をやり続けたい、車掌をやりたいという意見もある。それを会社が一方的に強制する形にしか聞こえない。

会社
強制するものではないと考えている。乗務の場合、融合と連携の中で改札に入るなど別の業務を行うことになる。乗務とは別の業務をやらせるという意味ではない。「違う業務に就け」ということではなく、社員とのコミュニケーションをとりながら意見を反映していきたい。しかし、その中でも駅業務などが入ってくる可能性は残っている。

(以下、次号に続く)

安全確保よりも「生産性向上」「コスト削減」を優先!—-ワンマン運転拡大阻止に向けJR東日本と団交 | 国鉄千葉動力車労働組合

タイトルとURLをコピーしました