国交省の廃線提言を弾劾する ② 房総廃線許すな!

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●房総廃線許すな!

千葉日報 7・28

JR東日本が公表した線区には、久留里線、内房線(館山―安房鴨川)、外房線(勝浦―安房鴨川)、鹿島線が含まれている。その廃線化に手がつき始めれば、いすみ鉄道にも波及していくことは明らかだ。

マスコミはJRの意図的発表に基づいて、久留里―上総亀山間を「日本一収支率の悪い区間」として宣伝している。また、千葉支社管内で赤字額が最も多かったのは、館山―安房鴨川間(14億600万円)だという。

それは明らかに廃線に追い込むために仕組まれた悪意に満ちた宣伝だ。なぜ、久留里―亀山間だけをとり出して「日本最悪」などと宣伝しなければならないのか。内房線・外房線(とくに勝浦―館山間のいわゆる南線)もそうだが、こんな一部だけを輪切りにして発表すれば、全国全線区でどのような宣伝だってできる。しかも久留里―亀山間は、昼間時間帯に5時間も列車が走らないダイヤが組まれ、JRによって意図的に乗れないように仕組まれてきたのだ。久留里線全体がそうだ。早朝・深夜の列車を廃止し、東京方面に通勤できなくしたのはJRだ。われわれは、通勤するために泣く泣く引っ越さざるを得なくなった乗客の怒りの声を直接聞いている。つまり、何年も前から廃線化に向けて利便性を破壊し、乗れないように仕組んできたのである。

ワンマン化や駅無人化もその一貫で、お年寄りや障害者は列車を使うことがどんどん困難になっている。

久留里―亀山間が廃止されれば、次は木更津―久留里間に波及することは明らかだし、館山―鴨川―勝浦間が廃線化されたら房総の鉄道網は寸断され、生活も観光もすべてが大打撃を受けることになる。結局、木更津・君津以南、上総一宮以南全体の切り捨てに拡大していくことは明らかだ。絶対に許してはならない。

●沸騰する怒りの声、 そして戦争情勢

一方、検討会提言は、二つの理由によって、矛盾に満ちたものにならざるを得なかった。そもそも国交省検討会の狙いは、「JR各社は、現に営業する路線の適切な維持に努めなければならない」とした1998年運政審答申、01年大臣指針以来の考え方を粉砕することにあった。実際、途中経過は「廃線ありき」の勇ましい議論に満ちていた。しかし、予想を越えた地方からの怒りの声の沸騰を前に、最終提言には「JR各社は大臣指針を遵守し…」と書かざるを得なかったのである。5月には、「地方切り捨ての議論にしないでいただきたい」と、28道府県知事が連名で緊急の申し入れを行っている。

法的には廃線化に許認可も自治体の合意も必要はない。しかしそれではあまりに破壊的な事態になるので「路線の維持に努めろ」という指針を出す。「民営化は成功した」と言うために、すでに30年もこんなことを続けているのだ。

もう一つは、「特急・貨物列車の走行線区等、我が国の基幹的な鉄道ネットワークを形成する線区については、JR各社による維持を強く期待する」と書き込まざるを得なかったことだ。国交省には、ローカル線の存廃に関する検討会とは別に「鉄道物流に関する検討会」が設置されており、防衛省はその場で、危機感を表わにして安全保障に対する鉄道貨物輸送の重要性を「直訴」したのである。防衛省は、ウクライナ戦争で鉄道貨物がどれほど重要な役割を果たしたのか、数多くの画像まで添付して提起している。読売新聞はそれを受け、過去に遡って「鉄道の有用性を鮮明にしたのは戦争だ」という記事を書き連ねている。こうした事態と廃線化攻撃が鋭い対立を胎みながら進行している。

 ●万策尽き果てて・・・・

結局、すべてが破たんし、戦争に向けた国家改造攻撃が始まろうとしている。

提言は「上下分離」を謳うが、そもそも上限分離とは、鉄道事業に競争原理を導入するための手法だ。鉄道の運行と施設の保有を分け、どの鉄道会社が列車を運行するのかは競争入札によって決まる。ヨーロッパでは上下分離が“EU標準”で、タテマエ上は自由に参入できることになっているが、それはどの国でも様々な問題を惹起した。例えば、イギリスではレール破断によるハットフィールドの大事故を引き起こし、施設保有会社はその賠償金支払いによって経営破たん、「再国有化」せざるを得なくなったのである。

しかし、国交省が主張する上下分離は、それと比べてもさらに世にも異様な上下分離だ。競争原理など働きようがない地方ローカル線を上下分離しようというのだ。要するにただひたすら矛盾と負担を地方におしつけるだけ。もっと言えば「廃線化止むなし」に追い込むための口実としてのみ主張しているのだ。

その本質は何なのか? 日本の場合、上下分離とか、第3セクター化と言っても、地方自治体や国による公費援助、経営補助の仕組みでしかなかった。例えば鳥取県の若桜鉄道。19年度決算はわずかながら黒字だった。だが実態は沿線の二つの町が5億円近くを負担し、それは交付税措置によって国から補填されている。こうした形をとって、分割・民営化が成功だったかのように装い続けてきたのが実態であった。

国交省提言が示したのは、国にはもはやそんなごまかしを続ける余裕はないんだぞ、というこれまでの国の在り方の転換をかけた踏み出しだ。地方が焼け野原になろうが、医療や社会保障制度、教育が崩壊しようが、10兆円の防衛費を確保する、「国力」を安全保障に集中しなければならないという国家のスクラップ&ビルドだ。それは鉄道だけに限られた問題ではない。国鉄分割・民営化以来の重大な攻撃が始まろうとしている。しかしそれは万策尽きた資本主義の破滅的攻撃だ。労働運動が力を取り戻すチャンスが到来しようとしているのだ。

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