JR西日本が、利用客が少ない在来線の区間別の収支を初めて公表した。それに続いてJR東日本も管内路線の収支の公表を検討する考えを示した。日経新聞は「JR在来線6割が廃線水準」との衝撃的な見出しで解説記事を掲載した。
「第2の国鉄改革」
公表された対象区間は、1日の平均通過人員(輸送密度)が2千人未満の17路線30区間1360㎞。JR西日本の在来線の総営業㎞数の3割に及ぶ。人口減少に加えコロナ感染による観光客の減少が背景と報じられている。すでにJR西日本は、ローカル線について地元自治体に対して協議の申し入れを始めている。今回の収支状況の公表は鉄道を今後も維持したいのであれば地元負担が必要とのメッセージだとされる。
仮に、この30線区をすべて廃止すると、JR西日本の4分の1以上の路線がなくなり、中国地方の鉄道網の多くが失われる。出雲市以西の山陰線沿線の都市や、広島県の三次や島根県の津和野では鉄道路線がすべてなくなる。
国土交通省も2月14日に、経営環境の厳しい地方鉄道の改革案についての検討会を始めた。月1回ペースで開催され、赤字路線の廃線やバスなどへの転換を促す方針を夏までにまとめようとしている。国鉄分割・民営化前後と同様の廃線ラッシュが予想され、〝第二の国鉄改革〟との危機感が地方に渦巻いている。
「廃線か公的負担か」
ただ、輸送密度と赤字額は相関関係が必ずしも明確にあるわけではない。輸送密度がダントツ低く運輸収入はわずかな芸備線よりも、むしろ赤字額が大きいのは山陰線や紀勢線など、特急が走る線区だ。そもそもJR西日本の赤字転落の1番大きな原因は、都市圏や新幹線の利用減であって、利用の少ないローカル線の赤字額はさして増えていないのだ。
JR西の長谷川社長は「輸送密度が2千人以下のところは民間企業として続けていくことが難しくなっている」「廃線か公的負担か」とのスタンスを明確に打ち出した。
赤字路線廃止に向けた既定路線
これに対して広島県知事は「株主に対する責任があるという話もあるが、それを追求していけば、極論を言えば赤字路線はすべて廃止すべきということになる」「基準が不明確だ」と批判している。
地元では「高齢者は免許を返納して運転できない人も多く、移動手段として鉄道は重要。鉄道がなければ人が住めなくなってしまう」などの切実な声が上がっている。
JR北海道が2015年に初めて路線収支を公表し、留萌本線の一部線区の廃止を決定。こうして線区ごとの収支の公表が、赤字路線廃止に向けた既定路線となっている。JR四国も2019年に収支の公表を行った。
分割・民営化の破綻
今回のことで、国鉄分割・民営化の破綻がより明確になった。
「国鉄経営の破綻の原因は経営責任が不明確な公社制度のもとで管理能力の限界を超えた巨大組織による全国一元運営を行ってきた点にある」と国鉄分割・民営化を強行した。しかし圧倒的多くの国民は反対した。いわゆる「ドル箱路線」が少ない三島と貨物会社は赤字が積み上がることが予測された。反対論を押さえ込むために準備されたのが、総額1兆円を超える「経営安定化基金」だった。しかしバブル崩壊後の低金利政策で計画は破綻し、JR各社は徹底した合理化(外注化)や廃線を行ってきたのである。
まさに「鉄道崩壊」―民営化・外注化の結果
他方で職場はどうか? JR北海道では早期退職者が10年連続で増加している。20年度の183人に続き21年度は198人が早期退職し、その約9割が30代以下だ。新規採用者数の8割に上る若手が退職し、会社の存続が成り立たなくなる事態に陥っている。2月の大雪でも除雪作業が追い付かず復旧までに大きな時間がかかった。
JR東日本でも3月16日の地震で東北新幹線は脱線し約1千カ所で損傷が見つかった。大規模な駅の再開発に莫大な金を投じておきながら、最も優先すべき安全対策は投げ捨てられていたのである。
人材の歯止めなき大量流出、技術継承の崩壊、廃線化の加速・・・、民営化と外注化がもたらしたのは「鉄道崩壊」そのものだ。
この中でJR東日本は、職名廃止・融合化・組織再編と極端な合理化攻撃に走っている。それは、民営化と外注化の破綻・崩壊を塗り隠すためだ。
この攻撃と対決する力は、職場と地域からの闘いを開始すること、そして闘う労働組合を取り戻すことだ。