「貧困」化がすさまじい勢いで進行している。最近の報道でも、餓死や孤独死、あるいは介護者の家族が突然死した結果、その家族も死亡するなど以前では考えられなかったような痛ましいケースが相次いでいる。そもそも「餓死せざるを得ないほどの貧困」が「ありえない」ことだったのだ。そして、その背景にはこの数十年すさまじい勢いで進められてきた民営化・外注化・非正規職化など新自由主義政策がある。
最近発表された厚生労働省の「公的年金加入者の所得に関する実態調査結果の概要について」(7/9)では、驚愕するような「貧困」の実態が明らかになっている。
年収100万円以下が3割以上!
まず、表1の「公的年金の加入状況別一人当たり平均年収」を見てほしい。平均年収の低いことに愕然とする。公的年金加入者の一人あたりの年収は平均で297万円だが、第1号被保険者(自営業主、家族従業者、臨時・不定期、非就業者)の平均年収は159万円しかない。非正規職労働者はほとんどがこの1号に属する。
また、年金加入者全体の割合でみても年収50万円以下が22・3%、50万円~100万円以下が10・7%、実に年収100万円以下が33%を占め、全体の3分の1にもなっている。(図「年収階級別加入者数の相対度数分布」)
非正規職では半分以上が100万円以下
しかも、この第1号被保険者のうち年収50万円以下が38%、50万円~100万円以下が16・7%で合わせると54・7%、つまり半分以上の人たちが年収100万円以下なのだ。ここでは男女ともに50万円以下が最も多くなっている。(表4―2)
「会社員・公務員」などが多く比較的安定しているかのように見える第2号被保険者(厚生年金・共済年金)の年収も「フルタイム」の人(300万~350万が最も多い)と「フルタイムでない」人(150万~200万以下が最も多い)の格差が大きい。ここでも非正規職化によって激しい賃金格差が生じているのがみてとれる。
これらから見えてくるのは、年金制度を支える人たちが日々の生活を維持する(維持するどころか餓死寸前だ!)ことが精一杯で、年金保険料を納めるどころではない実態だ。
親と同居する未婚者が倍増
また近年は、就職したくても職が見つからない人や低所得の人が増え続け、35歳~44歳で親と同居する未婚者が昨年295万人に達したという(2010年総務省調査)。この10年で約2倍になっている。この年代の完全失業率は11・5%に達し、親の貯蓄や年金が頼みの綱になってしまっている。将来、年金をもらえない状況に追い込まれると、生活保護を受けて生きていくしかなくなる。
人間らしく生きられる社会を
いま1000兆円に達した日本の財政破綻は、ギリシャなどヨーロッパ諸国の比ではない。政府は「税と社会保障制度の一体改革」などといって消費税増税を強行し、その実、年金や社会保険の給付を減らし、そのカネは公共事業につぎこまれようとしている。結局大企業・ゼネコンが儲かる仕組みなのだ。
また安易に赤字国債の発行を乱発しているが赤字国債は10年後には待ったなしに税金で支払わなければならない。子供や次世代・現役世代への負担がもっと重くのし掛かることになる。今、日本政府が行おうとしていることが何なのかを注視しなければならない。
いま労働組合がなすべきことは労働者の目線で運動することだ。何としても外注化や非正規職を撤廃させて人間らしく生きていける社会を築こう。
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