国鉄分割・民営化と新自由主義の現段階 鎌倉 孝夫(埼玉大学名誉教授)

2011年2月16日、「国鉄分割・民営化で不当解雇から24年、1047名解雇撤回2・16集会」での講演

はじめに
「国鉄闘争の火を消してはならない」というこの集会に、私も呼びかけ人の一人として参加し、皆さんの前で話すことができることを大変うれしく思っています。
何よりも、国鉄分割・民営化反対、この旗を絶対に降ろしてはならないと思いますし、特に国鉄分割・民営化の過程において、それを仕上げるために、国家の不当労働行為――国家の暴力です――それが行われました。これも絶対に許してはならないと思います。
そして、この国鉄分割・民営化は、新自由主義をこれを契機に全面的に展開していく、そういう狙いがあったということであります。
今、新自由主義は、国際的な潮流の中で、その矛盾が噴出しております。全世界の労働者・民衆が人間として生きられなくなっている。そういう状況をもたらした原因は、新自由主義の展開にある。ここに新自由主義の本質が明確に現れていると思います。この新自由主義の本質を今日は明確にしたいと思います。
そして、これに対していかに対抗するかということでありますが、私は、この運動が、この新自由主義に対抗する運動の基礎をつくりうるのではないかという期待を持っています。
資本と国家に対する労働者の連帯した闘い、これ以外に絶対に展望は開かれないと確信しております。
労働者こそ職場・社会の主人公だという、そういう認識を基盤にして、新自由主義を粉砕していかなければならないと思っています。
【1】国鉄分割・民営化強行の歴史的意味
まず第一に、国鉄分割・民営化強行の歴史的な意味ということを明らかにしていきたいと思います。
(1)財界の労働組合対策
第一点として、財界の労働組合対策、民間の大単産の巻き込みによる減量合理化、そして競争力強化――これは資本の競争力強化ですが――それに労働組合を吸収させるという狙いです。それを官公労全体に及ぼすものとして、国労(国鉄労働組合)、国鉄内の労働組合に対する弾圧が行われたということであります。
1974~75年、日本は、全世界的な規模の、いわゆるスタグフレーションに陥ったわけでありますが、戦後体制を支配してきた財政支出拡大によって、労働者・民衆の要求を国家が受け入れるような形(これはケインズ主義的な改良政策と言っていますが)をとって、戦後体制が展開されてきたのでありますが、これが財政危機をもたらすとともに、世界的な資本間の大競争戦が展開される中で、中で、いわゆるスタグフレーション、物価が急上昇しながら不況が深刻化するという、そういう事態が引き起こされました。
◎大競争戦に勝つための減量合理化
1975年、日経連が「労働問題研究委員会報告」を出して、いわば財界のほうが連帯を始めるんですね。そして、労働組合対策を本格的に打ち出します。そのもとで、いわゆる減量合理化を推進していくわけですが、不況ですから生産を縮小せざるを得ない。しかし、大競争戦に勝つためには、減量――供給量を落としながらも、なおかつコストの切り下げを行う。コストの切り下げの中心は言うまでもなく雇用の削減、そして賃金の切り下げでした。これを強行していく基盤になったのが当時の輸出産業の中心であった自動車、造船、鉄鋼、電機等における労働組合を、この大競争戦に吸収・協力させていくということであったわけです。
その際、同盟系の労働組合が、この方向に吸収されるとともに、総評系の労働者を企業からたたき出した。このことをわれわれは忘れてはならないと思っています。その本体が、現在の連合のいわば幹部、指導部となっているのです。こういう状況をつくり出すことによって、日本が、このスタグフレーションを資本主義各国の中で一番早く資本家的に解決した。労働者を犠牲にしながら、徹底的にコストを落とす、競争力を強める、という方向です。
◎労働組合の団結破壊から新自由主義が始まる
1980年代に入って、実は日本の減量合理化に対して、サッチャーのイギリス、レーガンのアメリカ、それが対抗処置を打ち出してきます。本格的に思想的にも政策的にも、新自由主義を展開していくわけであります。忘れてはならないのは、新自由主義というのは、このサッチャーにおいても、レーガンにおいても、労働組合つぶしから始まるということです。労働組合の団結を破壊する。その上で新自由主義が展開されていきます。
日本は、民間の大単産をいわば抱き込んだ。それを官公労に押し及ぼしていく。国鉄がターゲットになるわけですね。そして、その国鉄の労働組合組織をいかに解体するか。これが新自由主義を全面展開していくいわば契機となると思います。
(2)新自由主義の拠点として
第二に、新自由主義の拠点ということですが、国鉄分割・民営化、それを基盤にしながら中曽根は、「戦後政治の総決算」を図っていく。曲がりなりにも国家の改良政策が一定程度とられてきたんですけれども、それを全面転換していく。労資関係、特に闘う労働組合を一掃していく。これが「戦後政治の総決算」ということで中曽根が始めたことであります。
その戦後政治を総決算していく際に、暴力によって公的事業の解体、公共交通を始めとする公的な事業を民営化する。そして、独占資本による利潤追求の場にするというのが、この「戦後政治の総決算」であったと言っていいと思います。
国鉄改革法23条で明確にされているように、国鉄を倒産させ、全員解雇、そして選別採用、そこに不当労働行為がいわば法的につくられたわけであります。この不当性は絶対に忘れてはならないことであると明確にしておきたいと思います。
(3)新自由主義と国家暴力
その中で、第三に、新自由主義と国家暴力ということですが、この新自由主義は必ず暴力を伴っているということを忘れてはならないと思います。
実は、資本主義が歴史的に社会を支配する契機となった、いわゆる本源的蓄積過程、この本源的蓄積過程は、資本が社会を全面的に支配していく歴史的な過程でありましたけれども、資本の搾取の自由、これを実現していくためには、暴力が伴っていた。それは、農民を土地から追い出す。農民は領主の支配の下ではあったけれども、土地と結びつき、農業やあるいは手工業を行っていたわけでありますが、資本の自由の確立のために、その農民を土地から暴力的に追い出した。そして、労働者をいわば無産者にしたわけであります。そのもとで、資本がその自由を確立し、一社会を形成した。
だから、資本主義の自由の確立のためには、必ず暴力を伴う。これは今日においても明確に言えることです。新自由主義というのは、暴力なしにはあり得ない。資本が新しく利潤追求の場を確保するためには、従来のやり方を暴力的に解体していくということです。公的事業の解体、そして労働組合の解体、その点がこの国鉄分割・民営化の過程で明確に示されたことをはっきりとらえておきたいと思います。

【2】新自由主義とは

(1)自由競争の条件欠如の下での自由主義復活
そこで、新自由主義とはという第二の柱に入っていきたいと思うんですが、まず、自由競争の条件欠如の下での自由主義復活ということです。
自由主義というのは、皆さんご承知のように、19世紀半ば、イギリスを基盤にして、自由主義段階――資本主義の自由主義段階ですが――が展開されました。そこでは、資本間の大きな格差はなかった。お互いに自由競争を展開しながら、経済を一定程度発展させることができたんですね。
その後、帝国主義段階から、国家によって資本主義を維持しなければならない、そういう現代資本主義の状況になるわけでありますが、それがケインズ主義というふうに一口で大づかみにとらえていいと思いますけれども、その新自由主義というのは、ケインズ主義がもう機能ができなくなるというか、限界にぶち当たった状況の中で、資本主義をいかに活性化させるかということで導入されてくるわけです。
しかし、自由主義の復活と言っても、資本の中には、もう最初から自由競争の条件なんかないんです。巨大な金融資本、独占資本は株式を発行して、社会的な資金を自分の資本として集中・動員して、生産力設備を拡大していく。ところが中小零細企業は、自己資金も足りない。お金を借りなければいけないけれども、高い利子を払って、経営をなんとか維持するしかない。最初から格差がある中で、自由主義の復活をやるということになればどういうことになるのか。それこそ、巨大な資本、競争力の抜群に高い巨大な資本によって、すべてが飲み込まれてしまうということになる。最初から格差がある中で、弱肉強食の競争を展開していくわけでありますから、格差はさらに開く。そして、労働者の中にも大きな格差が当然生じることになります。

(2)資本・金融独占体の自由を保障―規制撤廃・ 公的事業の民営化

では、新自由主義の中身は、どういう内容なのかということでありますが、資本・金融独占体の自由を保障することです。新自由主義展開は、二つの大きな柱があります。その一つは規制の撤廃です。そしてもう一つは、公的な事業の民営化です。これはアメリカでも、イギリスでも、西欧の資本主義でも、同じことが展開されております。
日本でも、この二つの柱で新自由主義が展開されてきました。規制緩和、その規制とはどういうことか。戦後の現代資本主義の下で労働者を統合するためには、先ほども言いました一定の改良政策が必要不可欠だった。
背後には、ソビエト、東欧社会主義、それのインパクトがあったと言っていいと思います。それに対応しながら、資本主義が労働者を統合してきたわけですね。そういう状況の中で、公的な事業、教育、医療・保健等々の公的な事業は、公的な資金によって事業体が形成されてきましたし、あるいは保険が中心だけれども、社会的な社会保障というのもそれなりに進展してきました。
◎資本の自由に対する制限を取り払う
と同時に、競争力の弱体な中小零細企業や小農業、これを巨大資本の勝手な進出によって崩壊させることをなんとか避け、一定の経営を維持するために、大資本の得手勝手な自由に対して、一定の規制をとってきた。そして、先ほどからお話ししていますように、労働組合の権利を憲法によっても保障してきたわけであります。憲法第25条、さらには27条、労働基準法第1条。「労働条件は人たるに値する生活を保障するものでなければならない」というところまで来ていたわけであります。
これは資本の自由に対する大きな制限です。巨大資本はそういう制限があるから、スタグフレーションになったんだ、規制を撤廃して経済を活性化しなければならない、こういう理屈を立てるわけですね。それで次々に規制を撤廃、取り払っていきます。1990年代、規制改革が一気に前進します。
そして特に重要なのは、労働者派遣法ですね。無権利の、権利を奪われた日雇い労働者、それを認める。製造業においても2004年以降、日雇い派遣労働者を解禁する。そういう状況をつくり出した。そして規制撤廃を図ろうとする財界は、労働基準法なんかいらない、労働組合で労働者が団結することはほとんど独禁法違反と同じだと、いわば既成の権力が組織で既得権を奪おうとしている、だから自由主義が制限され、資本主義が活性化しないんだという、ふざけた理屈をつくりながら規制改革を進め、組合の組織をさらに解体させ、資本の景気変動に対応して、少しでも景気が悪くなって生産調整が必要であれば、即労働者を解雇できる。そういう状況をつくり出していったわけですね。
まさに資本の搾取の自由、それを保障するのが新自由主義であった。そして、公的な事業の民営化、これはアメリカがどんどん進めていますし、イギリスでも進展していますけれども、戦後なんとか維持されてきた公的な事業――交通、通信、そして社会保障、教育、医療――それを公的な事業から民間に開放する。民間に開放するとはどういうことか。言うまでもありませんが、私的資本の利潤追求の場にするということです。
◎新自由主義を徹底する菅の新成長戦略
それをさらに徹底しようとして、小泉が郵政民営化を仕上げる。そして2010年6月に出した菅政権の新成長戦略、これはまさに新自由主義をさらに徹底しようという戦略です。その中に置かれているのは、医療の混合医療制度――アメリカで全面展開されておりますが――それを導入する。さらには子ども園ということで、保育所と幼稚園を統合しながら民間企業に開放する。そういうやり方を推進していこうということで、私たちの社会的な生活条件そのものを、いわば所得のあるなし、金があるかどうかによって選別・差別しながら、民間資本による投資の保障をやっていこう。それが新自由主義ということであります。
◎儲けを獲得するためには何でもする
そこで、この新自由主義の一番頂点になるものは何かということですが、儲もうけを獲得するためには何でもやる。儲からなければ即放棄。やめちゃう。儲け、利潤追求が原理、基準ですから、必ずこういうことになりますね。
そして、最後の姿は、株価至上主義・利潤至上主義です。従来の本当に万人に保障していた社会保障、福祉、医療、それを民営化していく。公共交通を排除するということも、そこから始まったわけでありますけれども、そのことによって、どういう状況になっていくか。民営で儲けが基準になりますから、儲かるためには徹底的に雇用を削減する、縮小する。できるだけ安上がりの労働者の雇用を拡大するということになりますし、医療にしても福祉にしてもきちっとした要員を配置しなければできない事業ですけれども、それも十分配置しない。介護事業で老人たちが本当にモルモットにされる。そういう状況が全国至る所につくられてきました。
今、ワタミの渡邉美樹が都知事選に出ようなんて言っていますけれども、ワタミの介護事業の中で、大変な問題が起きているということが明るみに出ています。
そして、それだけではないということですね。儲けが得られないとすれば、即放棄します。儲けが基準ですから。儲からない事業は人間生活に本当に不可欠な事業であってもやめちゃう。ところがそれを政府が保障するのか。保障しようとしない。これが新自由主義の本質です。その最高の姿というのは、新自由主義の中で一番のさばった資本は、金融です。金融機関を支配する資本です。彼らは何を仕事としているか。株とか証券とかを売買するだけで、莫ばくだい大な利潤を拡大する。ホリエモン、村上というのがいましたけれども、その典型です。アメリカの資本は、資本の中心が金融ファンドです。銀行も証券もみな株を買い、株を意識的につり上げ、十分上がったと思ったら、それを売り放つ。郵政民営化というのは、それを日本の中で狙おうとしたわけですね。
こういう状況で金融資本がのさばってきました。その下で起きているのは何か。株を高くするためにありとあらゆることをやります。嘘の宣伝でも何でもいいんです。“この会社の株は上がりそう。高く上がるからみんな買ったらいい”と言って、値をつり上げていく。十分上がったら一気に売却しちゃうわけですね。それは日本の中でも起きました。世界的規模でこの下で起きたのがバブル。繰り返し繰り返しバブルが起き、当然そのバブルの崩壊が起きます。
◎バブルの崩壊でどういう事態が生じているか
バブルの崩壊の下でどういう事態が生じているか。チュニジアでもエジプトでも、中東各国、その前にギリシャがありアイルランドがあった。バブルの崩壊によって、その国の金融機関がめちゃくちゃになる。それを財政が救おうとする。今度は財政の危機になる。民間金融大資本のツケを国家に被せたわけですね。当然のことながら財政危機に陥り、その財政危機の下で何が起きているか。
◎労働者のロボット化――日雇い派遣は、労働者の 奴隷制
さらに徹底した労働者大衆に対する収奪です。それが新自由主義のいわば行き着く姿を明確に表している。株価至上主義というのは、本当に儲かりさえすれば、なんでもやる。そのもとに置かれた企業は、利潤至上主義。金儲けのためにはありとあらゆることをやる。労働者を本当にモルモットみたいに使ってもいい。ロボット化、部品化ですね。
私は、日雇い派遣労働者というのは、資本主義の中でも完全に逸脱していると思います。最低限、資本主義の中で、労働者に保障されているのは、自分の労働力を商品として売る。自分の労働力を商品として売るということは、自分の行う労働に対して、雇用主と法律では対等・平等の契約をしながら、労働条件、賃金を決める。これは商品主体ということです。
ところが日雇い派遣労働者は、自分の働く場の雇用主と契約を結べない。派遣事業者のいわば部品供給と同じような状況に置かれているわけです。これは本当に資本主義の下での労働者の奴隷制ですよ。絶対にこれはやめさせなければならないですね。鳩山民主党政権は、これを見直すと言って、政権を取った。菅首相はもう何も言わない。財界の要求で、これを継続するという方向ですね。

(3)人間の社会関係をすべて物的交換関係に解消
 ここに新自由主義の本質が明確にされていると思います。それは、人間のあらゆる社会関係をモノとモノの交換関係にしてしまう。そういう考え方の下に、その交換関係を資本が自由勝手に支配しようという、これが新自由主義なんです。人間関係、労働者と労働者の関わり、地域の労働者・勤労者の関連、これはモノとモノの交換原理で結びついているのではありません。生活の中の人間と人間の共同・連帯、労働現場における労働者間の共同・連帯、それは交換原理じゃないんです。働く者の共同・連帯関係です。それをバラバラにして、モノとモノの交換と同じようにしてしまう。
そして、労働者の中に自己責任と弱肉強食の原理を浸透させる。これが労働者の団結破壊を狙った新自由主義、その本質です。

【3】新自由主義の矛盾噴出―開き直った新自由主義

(1)失業・生活破壊、組織・人間関係の破壊
この新自由主義はすでに、日本においてもアメリカにおいても全世界的規模で、矛盾が噴出しています。
その矛盾、特に重要なのは、失業・生活破壊、そして組織、この労働組合の組織あるいは生活の中の働く人々の組織、さらに人間関係そのもの、人と人の支え合う関係、それを破壊する。そのもとで何が起きているか。自殺、殺人、消えた高齢者。
◎若者の高失業率
今、アメリカでもヨーロッパでも、そして日本でも、特に重要なのは、若者の就職難、就職ができないことです。ヨーロッパでも若者たちの失業率は30%にも達している。
高校卒業生、大学卒業生に仕事がない。中東で起きた民衆のデモンストレーションのきっかけになったのは、若者の自殺です。それが火を点けたわけですけれども、基盤になっているのは、新自由主義の矛盾の集中的現れに対する民衆の反発、労働者の反発だと言っていいと思います。
こういう状況は、若者だけではありません。新聞にも時々出てきますけれども、社会的に高齢者をきちっと介護する施設が圧倒的に少ない中で、家庭の中で介護しろと、老老介護が押しつけられている中で、老人の自殺、殺人が急増しています。
こういう状況、つまり新自由主義が推進されていくと、人間生活、人間関係そのものが本当に破壊されてしまうということです。
◎民主党政権の欺瞞
その見直しを私たちは求めた。そして民主党の鳩山政権は、言葉では何か民衆の期待に応えて、何かやるんじゃないかという雰囲気をつくった。その欺ぎまん
瞞に乗せられたと言っていいと思いますけれど、一つは新自由主義を見直して資本に対して一定の規制をかけようという考えです。アメリカでもオバマ政権は金融投機を規制して、一応金融規制をやろう、そして公的な保険制度。アメリカは民間の保険会社が圧倒的に支配していますから、それに対して保険会社に保険料を払えない者にも公的保険制度を導入しようということをやり出した。鳩山政権も、コンクリートから人へ、さらにアメリカとの関係においても、普天間基地を県外へと言い出した。それが財界の反発、反撃、そしてアメリカの反対を招いたわけであります。
鳩山は、この間、普天間基地見直し、辺野古基地についてなんで必要なのかという点で、ひどい話をしましたね。「抑止力というのは方便であった」と言った。一生懸命勉強した結果、抑止力が必要だと彼は言った。それを「方便」だと言ったもんだから、みんな怒り出していますけれども、かなり素直な人ですね。本当に方便以外の何物でもない。抑止力じゃなく、アメリカの軍隊は侵略の軍隊なんだから。ともかく対米関係の見直しをしようとした。小沢もそういう考え方を持っていた。
◎「見直し」に対するアメリカと財界の反発
 ――要求の受け入れ
それに対してアメリカが反撃に転じたという状況です。朝鮮半島で意識的に戦争の危機をつくり出しているのは、アメリカ政府と李イミョンバク明博政権です。実は普天間基地は絶対に必要だと、その口実をつくるために、朝鮮半島の戦争の危機を意図的につくり出したんです。
それに菅は自分で何も分析をする頭がないので頭から認めてしまった。菅に取り巻いていたブレーンたちがみんなあきれ果てている。寺島実郎さんなんかは民主党のブレーンとしてやろうとしていたけれども、ほとんどあきらめていますね。北大の山口二郎もそうですね。もうこの頃は、菅に対する罵
ば とう
倒ですね。そんな状況になっています。
財界の要求に対して頭からこれを受け入れて、大競争戦に勝つためには法人税の減税が必要だ、それをやったら財政危機は一層深刻化するから、消費税引き上げが必要だ。そう言い出す。日米同盟が重要だ、抑止力を確保しなければいけないから、普天間基地はそのまま、沖縄県内に移設するだけ。そして、朝鮮半島の危機、それに日米韓一体となって対処する。そういう方向に菅は暴走し始めた。

(2)TPPは究極の新自由主義

そして、日米同盟は軍事同盟だけではない。経済同盟を確立しなければいけないと言って、あたふたとTPP(環太平洋経済連携協定)に参加しなければ日本は沈没すると言い出した。マスコミは、こぞってTPPは「平成の開国」だと。ふざけたネーミングですよね。農産物の自給率はどんどん落ちて今、40%(カロリーベース)。関税だって、ちょっと調査してみれば、農産物関税だけとっても、アメリカやEUのほうがはるかに高いんですよ。十分すぎるほど開国をやってきた。それなのにまた、「平成の大開国だ」と言って、関税をゼロにする。韓国はアメリカと提携を結んで、工業製品のアメリカへの輸出関税をゼロにする。5年以降ですが。そうなると、日本はTPPに参加しなければ負ける、競争に負けるということで、TPP参加の方向で今、協議に入っている。
TPPに関するアメリカの魂胆は明確です。アメリカは、この経済危機、金融危機が続く中で、各国に犠牲を転嫁しながら、負担を転嫁しながら、自国の利益――自国の利益と言ったってアメリカを支配している巨大な金融資本の利益であり、あるいは軍産複合体の利益です――それを各国の犠牲の上で追求していこうということです。TPPは、アメリカのアグリビジネス、農産物輸出資本の輸出拡大を図ることによて、アメリカ資本の利益を確保しようということです。こういう世界大競争戦、それに勝つ手段としてのアメリカの戦略、そこに菅は、日本企業の競争戦対処が重要だと入り込もうというのです。その下で起きるのは何なのか。私は究極の新自由主義とこれをとらえています。
新自由主義がこれだけ、人間・人間関係を破壊してきた。さらにそれを徹底的に推進していくのが、今、菅が指向しているTPPであり、新自由主義の完成、そういう方向だと言っていいと思います。

(3)資本・金融独占体の利潤原理は、人間・人間関係を破壊する

新自由主義の結論は、資本・金融独占体の利潤原理というのは、人間、人間関係を破壊する――資本の支配の下では、人間は生きられない。労働者は人間として生きられないという、そういう状況が現実に明確になっているということです。私は、臨界点――本当にぎりぎりの状況になっていると思います。そして、それが世界的規模で今、それに対する反発が噴きだし始めているということであります。
日本の状況を見ますと、残念ながら世界的に立ち後れている。資本の競争力強化が国益? 国を利用し、労働者に犠牲を転嫁しながら、一握りの巨大資本が自らの利益を追求する。それが大資本の競争力強化だ。その下で起きていることは何か。本当に人間・人間関係そのものの、生きることの破壊だということです。それに対して、全面的に私たちは対抗していかなければならない。

【4】「国鉄闘争全国運動」への期待

◎国家の暴力的不当労働行為反対の旗を降ろしてはならない
第一に、資本、国家の横暴、人間破壊を許さない労働者の団結・連帯の形成を目指さなければならない。その重要な基盤づくりとして、この運動に私は全面的に期待したいと思います。人間・人間関係を破壊させている根本原因である新自由主義を転換させることを明確に目指さなければならない。だからこの新自由主義展開の契機になった国鉄分割・民営化反対、国家の暴力的不当労働行為反対の旗を絶対に降ろしてはならない、ということです。
◎労働者の実力を見せつけるストライキが不可欠
第二に、職場・社会の主人公としての労働者という認識と実力行使です。労働者の実力を見せつける基本はストライキです。労働者が労働をやめたらどういうことになるかを見せつけることです。それで資本を本当に追いつめていくということが不可欠だと思います。
◎社会主義を展望した運動の構築を
資本は社会の主体じゃない――経済・社会の主体には絶対になれない本質を持っている資本が、社会・経済の現実の主体になっているからこそ、様々な矛盾が起きる。人間破壊が起きるという認識を確立しなければなりません。だから人間が人間らしく生きるには、資本の支配を代えなければいけない。そして、代えられる。資本の支配は代えられるんです。その基盤は、労働者の組織的団結・連帯です。
最後に、働く者を主人公とした社会を目指していくこと、言うまでもなく社会主義を目指す、社会主義を展望した運動を構築していかなければならないと思います。
そういう意味で、全国運動に期待をし、私自身やれることを通して協力していきたい、と考えています。

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