はじめに
きょうは、津田沼支部が主催する地域集会に、津田沼支部をはじめ周辺支部の組合員のみなさん、あるいはご家族のみなさん、あるいは地域で働く仲間のみなさん、お忙しいところをご参集いただきましてどうもありがとうございます。
わが動労千葉は、1週間余り後、11月29日に、この総武線でストライキをやることを決めております。きょうも動労千葉の全支部長が集まりまして、具体的な戦術を決めました。おそらく、かってなく熾烈な闘いになろうかと思いますが、私たちは一一〇〇名の団結であらゆる困難を突破して、なんとしてでもこのストライキを貫徹していきたい。
私たちはこのストライキで何をかちとろうとしているのか。七月二六日に、国鉄再建監理委員会という中曽根の諮問機関、亀井正夫という住友電工の社長をしていた男、つまり住友財閥の代表を委員長にすえた機関ですが、ここが、八七年四月一日までに国鉄を分割し、民営化するという答申を中曽根に提出した。そしてこれが一〇月に入ってから閣議決定された。つまり日本政府の決定になった。それに基いて、現在、政府として、あるいは国鉄内部においても極めて急ピッチな作業が進められています。
このような状況の中で、私たち国鉄労働者にとってなんとしても悔しいのは、この国鉄分割・民営化の攻撃が、その本質というか、狙いというか、中曽根や亀井、自民党や財界の連中の意図がなにひとつ明らかにされないまま進められているということです。国鉄が今日のような危機になったのは、なにか国鉄で働く労働者の働きが悪いからだとか、労働組合がストライキばかりやってきたからだとか、まったく関係のない、事実に反する話だけが横行して、それをひとつの「国民世論」として、この攻撃が強引に進められているということです。私たちは、なによりもまず、このような状況そのものに激しい怒りをもつわけであって、国鉄労働者が怒りをこめて起ちあがることを通して、このような状況をうち破っていかなければならない。今度のストライキを準備する過程で、私が一番考えていることはそこなんです。
もちろん労働組合ですから、いろんな要求をかかげて闘いまずけれど、なにか今日、国鉄問題が敵の側の一方的なペースで、なにひとつ真相が明らかにされないまま進められている、まずここをなんとかしなければならない。しかし、そのためには、なによりも三人に一人の首が切られようとしている、1年数ヵ月後には一〇万人が職場から放逐されようとしている国鉄労働者が、ここで本当にハラを固めて起ちあがる以外にない。それがあってはじめて、さらに広はんな、他の職場の仲間の支援も得られるし、一切の事態がきりひらかれるんだと思うんです。
そこで今日は、私たちが直面している国鉄分割・民営化とは一体どういう攻撃なのかという点について、七月二六日の再建監理委の答申を検討しながらお話しし、ともにストライキにむけて決意をかためていきたいと思います。
七・二六答申のペテン
そもそも国鉄を分割・民営化しようという話の最大の理由は、今日国鉄がたいへんな赤字をかかえている点にあります。昨年度の決算を見ますと、国鉄の累積債務は二二兆八千億にのぼっています。
組年度までの借金の残高がこれだけになっている。八五年一年間の国鉄の収支を見ると、営業収入が約三兆五千億円ある。そしてこれで労働者の賃金や毎日電車を走らせる営業費を出しているわけですが、支出がこれだけなら、いまの国鉄は毎日赤字をたれ流しているとかなんとかいわれているけれど、ほとんどトントンでやっていけるんです。しかし問題は二三兆円にのぼる累積債務で、この膨大な借金の利息が昨年1年間だけで1兆三千億円にのぼっている。これはとても通常の営業収入の中からは支払えないから、この借金の利息分はさらに新たな借金をして支払わねばならない。そうすると、その分だけ翌年度の累積債務はふくらみ、支払わねばならない借金の利息も雪だるま式にふくらむということになるり国鉄の赤字という場合、なんといっても一番大きいのは、この膨大な借金の問題なんです。じゃあこの借金はなぜ生まれたのか。国鉄再建監理委員会の答申を見ますと、問題は国鉄公社制度にあったと書いている。そして、そういう制度が「外部勢力の介入」を許してきたからこうなったといっている。しかし、外部勢力」とはなにか。時の政権党である自民党とその背後にいる財界以外にはないんですね。国鉄の経営に、国鉄の労働者が介入したことは一度もないし、国鉄を利用しているお客さんたちが介入したこともない。そういう仕組みはまったくっくられていない。自民党と財界だけがやりたい放題のやり方で国鉄に介入してきたわけです。
国鉄が単年度収支で赤字になるのは一九六四年、東京オリンピック、東海道新幹線がつくられてからです。三〇〇億円赤字だった。しかし同じ年の減価償却費が1000億円。減価償却費というのは、国鉄のあらゆる設備の価格を耐用年数で割って、その分を毎年積みたてて、将来の設備更新にそなえるというものですから、これが一〇〇〇億ということは、この年だって、帳面づらは赤字だけれど実質は赤字じゃなかった。こういう状態が七〇年ごろまで続くんです。
国鉄が、減価償却する前に赤字になったのは1971年からです。六〇年代の後半から国鉄では、赤字を理由に国鉄労働者にたいするたいへんな合理化攻撃がかけられます。五万人合理化計画で、たとえばここで機関助士が全部廃止された。地方では、国鉄は赤字だから設備投資をおさえろということがいわれ出します。これがちょうど、日本の高度経済成長が鈍ってきたころのことです。それでも国鉄の経営はだんだん苦しくなって、七一年はとうとう減価償却前に赤字に転落する。そして日本の経済は、オイルショックなどを契機にさらに危機を深めていきます。
ここで、その立てなおしを狙って登場するのが田中角栄ですね。
田中は日本列島改造ということで、公共部門に対する膨大な設備投資を進めた。内需拡大を狙った。その最大の担い手にされるのが国鉄なんです。たとえば新幹線ひとつつくれば、膨大な金が必要だし、モノも人も動く。
あの当時、実におもしろいのは、昨日まで合理化を進めるために、赤字だ、赤字だとわめいていた国鉄当局が、一転して、「国鉄のみなさん、いままではあまり赤字、赤字といってきたから職場も暗くなった。しかし借金しても国鉄の財産はどんどん増えているから心配する必要はない」なんていい出す。つまり支配者の方針にあわせてパッと変わるわけですよ。そして国鉄に対する野放図な設備投資がはじまったんです。
その結果、七一年当時、国鉄の長期債務はせいぜい一兆円程度だったのが、その後一〇年間ぐらいで一五、六兆円になる。それはそうですよ。もういたるところで線路の開発につぐ開発をやった。しかもその大半億鉄建公団というところが勝手にやる。国鉄は、その線路が必要なのかどうか、採算にあうのかどうかを自分たちで判断して決めることもできない。自民党の政治家や財界の都合で、鉄建公団が勝手につくったものを、国鉄は、それが国鉄にとって損であろうがなんであろうが全部ひき受ける、そういうシステムを当時つくった。だから国鉄の借金がうなぎのぼりに増えてゆくのは当然です。
私は国鉄の官僚連中、本社で偉くなったような連中もいっぱい知っています。七九年にわれわれが動労本部から分離・独立した際、連中とよく話したときも感じたけれど、国鉄の首脳部の人間が、この借金のことを真剣に考えていたかといえば、全然考えてないですよね。みんな公費を湯水のごとく使ってへっちゃら。国鉄が赤字になったってしょうがないとみんな思っていた。当時すでに十数兆円の借金をかかえていたんですよ。だから借金がふくれあがるのはあたりまえ。その責任が、自民党や財界、そのいいなりになってきた国鉄官僚たちにあることは明白なんです。
ところが、三年ぐらい前から、臨調とか自民党がマスコミを使って、国鉄労働者がなまけたり、ストをやったりしているから、国鉄赤字はこんなにふえたというような宣伝をどんどんはじめるわけです。しかし、私はよくいうんですが、最近五、六年間で、国鉄の中でストライキをやったのはうちだけなんですね。八一年三月の、例の三里塚ジェット燃料輸送の延長に反対してやったストライキですね。ところが千葉鉄道管理局は全国でもめずらしい黒字局なんですよ。新幹線総局と東京西局と千葉局の三つだけ黒字。われわれがストライキをやっても黒字。じゃあわれわれがそんなに働きがいいかというと、全国の人たちとそんなかわらないと思うんだよね。とりたてて働きがいいともいえない。サボっているとはいわないけれど。みんな同じ。じゃあなんで千葉局は黒字なのか。やっぱり動労千葉があるから黒字なのか(笑)。関係ないんだよね。働きが悪いから赤字だなんていうのはまったくペテンだということがこれだけで、もうわかるわけ。
ところがマスコミを使って、そういう宣伝がまことしやかにくりかえされると、「ああ、そういえば駅に立っていた奴は、お客に切符を持たせたままハサミを入れていた」とか、ありとあらゆることがいわれるようになる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い式で、なんか、すべての責任を国鉄労働者におっかぶせるような、そういう雰囲気がどんどんつくられてきた。この三年間。
だけどわれわれもこれだけははっきりさせなくちゃいけないけれど、われわれ国鉄労働者は、そんな何十兆円もの赤字を生み出せるほどの給料をもらっているのか。もらってないですよ。国鉄労働者は天下に冠たる安月給ですよ。これは、みなさん、とくに奥さんなんかよく知っていると思うよ。二〇年勤めたって、カアちゃんに二〇万円の給料をわたせないんだから。その労働者がどうやってそんな借金をつくれるのかとわれわれはいいたくなる。
ところが世の中の人たちというのは、こういう中曽根の世論工作にすぐひっかかる。それで「ああ、民営にすればサービスがよくなる」とか、「運賃が安くなる」とか実にたあいのない話.「小田急に乗るとおしぼりが出る」とかね、そんなことで民営化賛成となってゆく。いま国鉄の分割・民営化賛成が世論の七〇%もあるんです。
そこでは、分割・民営化の真実というのがまったく見えなくなって、 幻想だけがまんえんしているわけですね。
二三兆が三七兆の赤字に化ける
それでは、再建監理委の答申は、この二三兆円もの借金をうまく解決する方法でも出しているのかといえばとんでもない、そんなもの出せるはずがないんです。
それどころか、これは本当に腹がたつことだけれど、奴らは、きわめてずるいやり方をしている。国鉄の借金は八四年度末で二三兆円弱ですが、答申によると二年後の八六年度末には三七兆円で、二年間で一四兆円も借金が増えることになっている。なぜこんなことになるのか。さっきもいったように、現在の国鉄は、毎年約一兆五千億円の利息を払えず、新たな借金をしているので、二年間で借金の残高が三兆円ぐらい増えるのはわかる。しかしそれにしても二年後の長期債務は二六兆円程度ですよ。それがなぜ三七兆になるのか。
鉄建公団がつくった青函トンネルとか、本州と四国を結ぶ本四架橋とかの建設費を全部上のせしちゃったんですね。青函トンネルや本四架橋は国鉄と関係なく作っているんですよ。しかも北海道と本州、四国と本州は分割するといってんだから、そんなもの作ったって、そこに鉄道を走らす保証はまったくないわけだ。それでも鉄建公団が作ったものは文句なしに国鉄が背負うんだというわけですよ。
もうひとつは、年金の問題。国鉄年金というのはいまたいへんな危機にある。それでこの問、かつての電電公社、専売公社、そして国家公務員の共済年金をいっしょにしてなんとかならないかということになった。そのため国鉄労働者は過去二年間にわたって毎年三千円ずつ掛金が高くなっている。だからベースアップゼロです。それで、なんとか年金が統合されるまで息つこうという話になった。
そのときの基礎人員、つまり共済掛金を払う職員の数は三二万だった。ところがそれがあと二年後には二〇万になつちゃう。十何万もの人が掛金を払う側からもらう側に移るんだからやっていけるわけがない。当然財政的に補填しなければならない。なんと四兆円から五兆円も足らないんですね。しかしこれも分割・民営化のために一〇万人の首を切ることによって必要となる経費です。そんなものもすべて上のせすると、二年後の国鉄の累積債務は三七兆円になるというんですね。それで。さあ三七兆円の借金になりますよ、というんだからひどい話だ。
それで三七兆円のうち一七兆円は国民に負担してもらうというんでしょ。本来だったら青函や本四なんて、勝手に作った奴らが金を出せばいい。それを国民負担にする。しかしそういうと問題になるから、それを全部国鉄の借金ということにしてしまう。そうすると国民は。なんだ鉄道の野郎と思うようになる。そういう極めて巧妙かつえげつないやり方をやっているわけですよ。しかしそれはいまにはじまったことではない。こういうやり方をずっとくりかえして、それが原因で国鉄はいまのようになったんですね。そのやり方をいまにいたるも変えていない。それで国鉄の改革だとか、再建だとか、まったくちゃんちゃらおかしいですよ。
あいつらは国鉄の赤字を解決しようなんてことはテンから考えていないんだよ。答申によれば、三七兆円という借金のうち、いまいったように一七兆円は国民負担にする、それで六兆円は国鉄の土地を売ってあてる、六千億円は株を放出する、そして分割された新しい民営会社の本州の三会社に、新幹線リース料というのを含めて一四兆二千億の長期債務をひきつがせるというんですね。この新幹線リースというのがまたおもしろいというか、非常に巧妙な話でね。
新幹線だけ保有する会社をつくるんですね。そしてこれだけは国が握ろうと思っているらしいんですね。そういう噂があるんです。国鉄の財政危機がここまできたのは、新幹線をはじめとする野放図な設備投資の結果でしょ。しかし自民党も財界もそんなことは全然反省していないんですよ。この前テレビに出たでしょ。北陸新幹線は安中を通るとか、どうとかね。奴らはいま、幾つかの新幹線を計画しているんですよ。統年度も、政府はそのための予算をちゃんと組んでいるんです。
だけどね、いまの新幹線で黒字なのは東京一大阪間だけ。博多まで行けば赤字だから。東北も上越ももちろん赤字。仮に建設費を全部国がもっても、毎日毎日の営業費で赤字なんだからね。だから北陸だろうがどこだろうが赤字になるのははっきりしている。しかしこれまでは国鉄があったから、鉄建公団が勝手につくってきたものを全部おしつけることができた。民間会社になったら採算にあわないものなどひきうけるわけがない。ところが、彼らは新しい新幹線をどうしてもつくりたい。そこで新幹線リース会社なんてのをつくって、民間会社にそれを貸し出し、その貸料を長期債務にするというやり方をとろうとしている。要するに、国鉄は解体しても、自分たちの利権に結びついた、そういうシステムはちゃんと残しておく。イカサマでしょ。
だいたい国鉄をなくそうとしながら鉄建公団は残そうというわけでしょ。再建監理委は国鉄の赤字をここまでふくらましてきた従来のシステムを変えようなんて全然考えていないんです。ただ形式を変えようとしているだけ。あいつらは国鉄をここまで喰い物にして借金を残しておいて、国鉄分割・民営化という国鉄解体劇でまたもうけようとしている。そして、先きゆきまたもうけようとしている。
そのためのシステムをちゃんと残している。新幹線リース会社とか
なんとかいって。こんな腹の立つことはないよね。
国鉄資産の分捕り狙う。分割・民営化
ところがあの連中は、口先きでは分割・民営化したら、毎年一〇〇億円ぐらいの黒字になるなんて吹いているんです。だけど、それははっきりいうけどね、ウソなんです、ウソ。なぜウソかというとね、彼らもさすがに北海道、九州、四国は黒字になるとはいえない。本州三会社は黒字にできるというんだけれど。この本州三会社にさっきいったように一四兆二千億円の借金をひきつがせるわけでしょ。
その利息だけで年間五千億ですよ。しかもこの一四兆余りの元金を三〇年間で全部返すというんだから、毎年一兆円を借金返済にあてなくちゃならない。そんなもの払えるわけがない。なぜなら、本州三会社の総収入は、年間二兆八千億しかないと再建監理委がいっている。その三分の一以上を借金返済にあてる会社が黒字になるわけがないんです。分割・民営化したって、いまの国鉄と同じように借金の利息に四苦八苦する会社ができるだけというのははっきりしているんです。
はっきりしているのに、なぜこういうことをやるのか。ここに連中のものすごい陰謀があるんです。貨物列車について、再建監理委は、これだけは分割しないで、全国統一の貨物会社をつくるといっている。しかしみなさん、昨年度の貨物の赤字は六千億をこえているんですよ。その貨物を、それだけとり出して、どんなに合理化したって、やっていけるわけがないでしょ。ところがこれを独立させるという。そしておもしろいことをやろうとしているんです。貨物会社は貨物専用の土地だけをもつ、それで機関車も貨車も、それに機関士まで旅客会社の方においでおいで、これまたリースで借りるというんだな。こいつらはね、貨物会社がすぐつぶれることを知っているんだよ。そしてつぶれたときは、土地という財産だけは自分らのものにしようというわけですよ。そのためのしかけをいまからつくろうとしている。考えているんだよ、奴らは。うすぎたない連中がいっぱいいるんだから。
だけど、貨物会社には一万五千人の労働者が行くと再建監理委はいっている。国鉄当局の方針だとこれをさらに一万人くらいまで削るということだけれど、それにしたって、この貨物関係で働いている一万人の人たちはどうするんですか。どうしろっていうんですか。たいへんなことですよ。
分割・民営化なんていっても、すべてこういう状況なんです。それをあたかも夢も希望もあるかの如き話をしているわけですね。そしてこういうからくりを国民の人たちは何も知らない。せいぜい、六兆円もの遊休地をめぐってたいへんな利権が渦まくんじゃないか。このくらいはみんなわかる。マスコミもいっている。これもたいへんな問題です。しかし私はそれだけではないといっているんです。
日本の最も悪い奴らは、この国鉄のもっている全資産を分捕ろうと思っているのですよ。分割して、分捕ろうと思っている。国鉄はいま土地だけで一〇〇兆円もっています。それはそうです。国鉄は日本一の地主、一等地を全部もっているんだから。ところがこれも帳面づらは八千億円にすぎない。時価になおすと一〇〇兆円はくだらないといわれています。それに加え、新幹線があり、ビルがあり、何万という車輌がある。これを全部あわせると、国鉄の全資産は二〇〇兆円といわれています。二〇〇兆円、たいへんな資産です。これを、どうしょうかということを奴らは考えているんです。だから民営・分割なんです。
今回の答申でも特徴的なことは、国鉄の現状をいろいろ検討して、打開の道を検討して、それで分割・民営というんじゃないんです。
まず最初に分割・民営化が決っていたんです。あとは結論にあわせた辻つまあわせをやっているだけ。臨調のときもそうです。全部そうです。
それじゃ、なぜ分割・民営化なのか。民営化というのは、運賃が安くなることではないんです。直営店を開いたり、ステーションビルを建てたりできるから民営化じゃないんです。そんなことは今だってやってる。そんなことじゃないんです。民営化というのは、株式会社になるということなんです。株式会社になるということは、その会社の株を五一%以上握った奴が、その会社を自由にできるようになるということなんですよ。
再建監理委の答申によれば、分割・民営化の時点で六〇〇〇億円の株を放出しろと書いている。しかしこれだけじゃない。分割・民営化で生れる新事業体は資産はたくさんあるけれど、どこでも最初から赤字で四苦八苦して進まなければならない。民間の企業が赤字になったらどうするか。銀行で金を借りるでしょ。いまは国鉄公社ですから、大蔵大臣が裏書きすれば鉄道債を買ってくれる。国の信用で。民間会社になったら、銀行は担保を入れなければ金は貸さないですよ。で、左前になれば必ず介入してくるのが銀行。あっという間に、専務や常務の首のすげかえ一。そういう嵐にならないなんて誰が保証できますか。
そうすると、国鉄の資産は二〇〇兆円でしょ。それからくらべれば一四兆円なんて借金はどうってことないんですよ。簡単にいっちゃえば、一四兆円で二〇〇兆円の会社を、日本の一番悪い奴らが、幾つかのグループが牛耳れるということですよ。だからいいかえれば、・国鉄にいま三七兆円の債務があります。この肩代りをしてくれる人がいたら、国鉄を自由にしていい`っていったら、手を上げる奴はいっぱいいる。しかしそれではばれちゃう。.国民の財産をなにするんだ`ってことになる。だから分割・民営化なんです。そういうふうにいって国鉄労働者の首を一〇万も切って、新しい民営会社を発足させて、何年か後にそういう道を開こうとしている。それで中曽根は、その功績で財界と太いパイプをつくり、ゼニをいっぱい集め、自民党総裁三選を狙っている。これは大陰謀だと思うんです。なぜこんなことをやろうとしているのかということについては、もっと大きな、日本の危機という問題がありまずけれど、きょうは時間もないから省きます。しかし、奴らがこういうふうに事を運ぼうとしているんだということについては、みなさんはっきり記憶しておいていただきたいと思うんです。
私たちが、九月の大会でストライキをうち出してから、いままでは組合の幹部とは会わないなんてぬかしていた当局の官僚が、私に会いたいといってきた。私は会いました。ここの千葉局の局長とも会いました。,ストライキを止めてくれっていうんだね。だから、“冗談じゃない”といったんです。“あんたは国鉄官僚としてやっているけれど、こんなことになって悔しくないのか。これは自民党と財界の大陰謀じゃないか。あんたはその手先きみたいなことをやって、どうなんだ。オレたちはこんなこと絶対許せない。だからストライキをやるんだ”といったんです。そうしたら、私が、分割・民営化なんかやっても必ずこうなるといったことについて、全然否定しないですね。そうだといいますね。いうんですよ。わかっているんです、連中だってね。それは、論理的に、必ず否応なしにそうなってゆくという問題なんだから。
いま日本の資本主義経済は、いわゆる貿易摩擦問題でたいへんな危機におち入っています。もうこれ以上いかない。トヨタなんか、世界でいちばん大もうけした企業かもわかんないけれど、これ以上どうやってのばすんですか。危機ですよ。で、あいつらが目をつけたのが、国がやっている様々な事業、国鉄とか、電電とか、専売ですね。ここを民間活力の導入などといって、資本の手を入れて、要するに分捕ちゃおうということですね。それでいまの危機をのりきろうと奴らはハラを決めた。そして、マスコミなんかを使い、計画的に宣伝をくりかえし、これにちょっとでも抵抗する奴は、仁杉みたいにバッと首を切っちゃう、わけですよ。そういう形でこの陰謀は進めてきた
労働運動壊滅もくろむ大陰謀
彼らの国鉄分割・民営化には、これと並んで、これと同じぐらいの力量をそそいだもうひとつの陰謀があるんですね。労働運動をたたきつぶしちゃうということです。いま、総評労働運動はたいへんな危機にある。とくに民間の組合はおしなべて右よりになり、同盟系などといっしょに全民労協なんかをつくっている。簡単にいえば、労働者の利益を代表する労働組合じゃなくて、資本や権力の側の意向を代弁する労働運動です。これから危機が深まるにつれて、中曽根らにとってはそういう労働運動がますます必要になってきます。
いずれにせよ労働者がこの日本を支えているのは間違いない。何千万という労働者-国鉄であれ、民間であれ、どこであれ一が毎日働いているから、日本は毎日動いている。しかし、労働者はおしなべて長時間労働で低賃金です。いつも不満があり、いつ反乱をおこすかわからない。中曽根らにとってはこれがいちばんこわいわけですよ。だから彼らはいつも労働運動のことを頭に入れておかなきやなんないんです。で、民闘はかなり右よりになった。しかし官公労、とくに国鉄労働運動は簡単に行かない。しかし、これをつぶさないかぎり総評労働運動にトドメを刺すことはできない。だから中曽根は、戦後政治の総決算は国鉄労働運動をたたきつぶさないかぎり終らないと、そういっている。国鉄分割・民営化をしても、国鉄労働運動をたたきつぶそうとしているんです。一〇万人の首を切って、国鉄労働者に。去るも地獄、残るも地獄’の状況を強制して、その中で国鉄労働運動をつぶそうとしている。
いま国鉄職員の数は、正確にいうと三〇万七千人です。そのうち10万人余りをあと一年数カ月後に追い出そうとしている。八六年一一月に国鉄最後のダイヤ改正をやってそこで決めようとしている。そしてそのための準備が着々と強権的に進められています。労働組合を重箱の隅をつつくようなやり方で追いつめ、労働者の誇りを失わせるような攻撃を強めています。ところでこの一〇万人ですが、これはなにもいますでに一〇万人労働者が余っていて、これを八七年の四月に追い出すというんじゃないんです。これから、一〇万人の労働者の要員削減・合理化をやって、それを首にするんですね。
いま、いわゆる「余剰人員」といわれているのは二万五五〇〇人です。しかしこれは、八六年三月と八七年三月に定年をむかえる三万人の補充要員としてペイされる数なんです。
それでは、これから一年の間に一〇万人もの要員合理化をどうやってやるのか。これは一〇万人という数という点でも、三分の一という点でも国鉄の歴史にないことです。それだけではない。重要なのは、昭和五七年四月一日から六〇年四月一日までの過去三年間に、国鉄はすでに一〇万の合理化をやっているんです。それにプラスしてさらにもう一〇万人要員削減をしょうというのだからたいへんです。一体どこを合理化するんですか。
いろいろやろうとしている。たとえば労働者の勤務体系を根本的にかえちゃう。国鉄の仕事は特殊状況がありまして、総武線の場合、ラッシュ時は緩行線二分間隔、快速四分間隔で走っている。それでもお客さんをさばききれないぐらい忙しい。ところが昼間になると、これが五分間隔とか、一〇分間隔で、当然ヒマになる。そこで当局
は、朝と夕方だけ勤務して、昼間は帰っていいというんですよ。朝の一〇時に帰って三時ごろまた出てこいというんです。労働者はその間何をやっていろというんですか。
あるいは八六年の三月ころには基地の統廃合問題も大きくクローズアップされます。たとえば、山手線の場合はこれまで池袋電車区と品川電車区が担当していたけれど、これを一つにまとめちゃう。総武線の場合は中野電車区と津田沼電車区だけれど、これもどっちかをつぶしてまとめる。その場合、どっちをつぶすかの基準はなんだと思いますか。どっちの土地が高く売れるかということです。だから山手線の場合は池袋電車区をつぶす、乗務員は残しますがね。
総武線では電車の基地としては中野をつぶす。ただし乗務員は残す。これとあわせて、八六年の三月には京葉線開業に伴って千葉管内が二五〇〇キロぐらいふえるため、その分東京に仕事をまわせということで、津田沼電車区の乗務員の仕事を中野にもっていこうという画策もされている。ともかく、労働者が抵抗しないから、どんどん労働者をなめて、矢つぎ早に攻撃をしかけて、徹底的な合理化、労働強化で一〇万人もの要員削減をやろうとしているんですね。
だけどね、われわれは、毎日何万もの人間の生命をあずかって、しかも二、三分間隔で一〇〇キロものスピードでつつ走っているんです。そこでこんな無茶苦茶な労働強化をやったらどうなりますか。
これは大変なことがおきるという気がしてならないんです。私たちは電車の運転士、機関士、あるいはその修繕をしたりしている労働者の集団ですから、人一倍そういう問題については敏感です。われわれの言葉でいうと運転保安。ところがこの一〇万人の合理化というのは、要するに一〇万人の余剰人員を生み出すためにのみやる要員削減で、それでは、列車を安全に運行するためになにが必要かなどということはまったく念頭にない。要するに切りつめるだけ切りつめるという、恐るべき内容の代物なんです。だからわれわれは、こんどのストをうちぬくにあたっても、・国鉄を第二の日航にしてはいけない’ということを訴えているんです。われわれはこの点にとくに強い危機感をもちます。
もちろん、労働条件も相当悪くなる。監理委員会の答申では、新しい民間会社に行っても、国鉄の在職年数だけは認めると書いてある。勤続二〇年の人は、行っても勤続二〇年から出発する。残りのことは、退職金のこともふくめて新しい会社で決めなさいと。そうするとどうなるのか。国鉄は退職金だけは、一応勤続三五~四〇年になると大体二〇〇〇万円位いになります。これが民間なみ、経営の苦しい民間なみだから約八○○万か一〇〇〇万程度になるでしょう。賃金も、国鉄の場合は基本給だけの生活者でしたが、民間になれば基本給はほぼ三分の二位になるでしょう。むこうは最初から時間外労働を考えていますから。だから新しい事業体に行っても賃金はそのままだろうなんて幻想をもってはいけないんです。
敵は徹底的にやろうとしているんだから、そんな幻想をもってはダメなんです。
それでは、一年数カ月後に鉄道の職場を放逐される一〇万人の仲間たちはどうか。敵さんは就職をあっせんするなんていっているけれど行く先なんかあんまりありません。たとえば国鉄関連企業が二万人を引きうけるなどといっているけれど、あれは実態と大きくかけ離れているそうです。国鉄関連企業というのはどういう話で成り立っているかというと、国鉄のOBを安い賃金で雇用して、それで成り立っているんですね。退職する国鉄労働者がそれまで三〇万の賃金をもらっていたとする。それが退職して二〇万の年金をもらえるようになったとする。そうすると、この差額の一〇万円をもらって再就職するというシステムになっているんです。国鉄関連企業は、熟練の労働者を高卒そこそこの賃金で雇えるわけだから、全部成り立っているんです。この近くの、京葉臨海鉄道とかなんとか、みんなそうです。だから、三陸鉄道という第三セクタ!は非常に営業成績がいいと新聞が書いているけれど、あそこも全部国鉄のOBがやっている。それをものすごく安い賃金で雇っているんだからやっていけるはずなんです。だけどそれは年金があるから成り立つ話で、そんなものがない普通の労働者が、女房、子供をもっていたら一〇万円の給料でやっていけますか。やっていけるはずがないんですよ。
そういうからくりがありますから、関連企業が二万も三万もうけ入れることができるはずがないんです。
まあ、いま確実視されているのは、中曽根の号令で各省庁が無理矢理引きうける一五〇〇~二〇〇〇人ぐらいでしょう。地方自治体だって、行革で人べらしをやっている一方で、国鉄からたくさんの人を受け入れる余裕なんてまったくない。結局はそういう中で、多くの労働者がちゃんとした就職先も見つけられず放つぽり出される。
そういう形になるにきまっているんです。それまで、もうあと一年数カ月きりないんですね。三人に一人と口ではよくいうけれど、三人で一杯のみにいけば、そのうちの一人は終りだということなんだよね。しかもほかの二人にはさっきいったようなたいへんな強制労働の地獄が待っている。まさに「去るも地獄、残るも地獄」です。
労働者の魂を売る動労
ところがこのときに、国鉄の労働組合の中に、オレたちだけは当局のいうことを聞くから、オレたちだけは新事業体に行かせてくれという奴が出てきた。国鉄動力車労働組合という組合ですね。革マルという党派が牛耳っている組合。中曽根と闘うんじゃなくて、そのお先棒をかついで中曽根さんのいうことはなんでも聞くからオレたちだけは勘弁してくれという路線を歩みはじめた。
しかし私にいわせれば、じゃあテメエだけ助かれば、他の国鉄労働者はどうなってもいいのかということです。そんなことをするんだったら労働組合なんか必要ないんだよね。そうでしょ。総評も県労連も必要ない。地区労も共闘会議も必要ない。労働組合は産業別、企業別に組織されている。しかしこういう首切り攻撃なんかに対しては、最大限、手を結んで共闘してゆく。これが労働組合でしょ。オレの労働組合だけはなんとかしてくれ、他の労働組合はどうなってもいいなんていうのが労働組合なのか。こういうのが総評に加盟しているんだからいやになつちゃうよ。これは労働組合の原則の問題だよ。
たとえばオレたちは.国鉄千葉動力車労働組合という独立した組合だけれど、テメエだけよければいいなんて思わないですよ。やつばり同じ職場で働く国労の仲間も同じようによくならなきやなんないと思っている。あたり前でしょ。そうじやなきゃ労働運動なんて成りたたないもの。テメエだけよければいいなんて絶対思わないよ。
資本は、常に労働者をそうやって差別・分断するわけね。そのために一時的にあるグループだけ頭をなでる。しかしそれで労働者がバラバラになって力が弱くなったら必ず全体を徹底的にいためつける。これが長い資本主義の歴史じゃないですか。その中で、ちっとは労働者もりこうになったかと思ったら、まだまだ全然わかっていない。雇用安定協約の問題で彼らはなんといっているか。“われわれはこれだけ当局のいうなりになって、組合員の二割も出向に行かせてきた。こんなに骨折っているのに、全然骨を折らない労働組合一国労のことですが一と同じ協約を結ぶんじゃ、われわれはがまんできない。正直者がソンをする世の中でいいんですか”こういうふうにちやんと書いている。それで社会党にまで申し入れているんだ。現実にやっているわけですよ。こうやって労働者の魂まで敵に売って国鉄労働者の団結がいまほど求められているときはないにもかかわらず、職場の労働者を本当にズタズタに引き裂いて、敵の好き勝手な攻撃を容易ならしめていることについて、私たちは強く弾劾しなければならないと思います。
三人に一人の首が切られる、きのうまでつきあっていた仲間が首を切られるときに、オレだけよけりゃいいという連中がいたら、私はもう国鉄をやめてくれといっているんですよ。いますぐに。わが動労千葉にはそんな組合員はいないはずだ。だが、よその組合にはたくさんいますよ、本当のこといって。当局におべんちゃら使って、テメエだけはいい子になろうとしている。それは誰だって助平根性がないわけじゃない。僕だってね、卒直にいって、八七年四月一日まで、動労千葉二〇〇名、なんとかうまく泳ぎわたっていければいいなと思ったことがなかったわけじゃなかったよ。あえて流血も辞さず、なんていってるけどさ、それはそんなことやらないでうまくいけば、それに越したことはないんだもの。
だけど、どう考えてみても、なにをやってもやられるということがはっきりしたんだよね。どんなことをしてもやってくる。敵は相当強固な意志をもっている。そうである以上、これはもう決然と起つ以外にない。それがさしあたり、われわれ一一〇〇名だけであっても、ここからしかいまの状況を変えることはできないんだよね。
敵はいま、国労も結局なにも出来ないと読んで好き勝手にやってきている。しかし労働者だって人間だ。家に帰れば女房、子供もいる。
生活しているんですよ。その労働者が、こんな簡単に10万人も首をヒョンと切られて、それでも怒れないようだったら、それはもう奴隷になればいいんだよ。
しかし、それだけでもすまない。私はきょう、国鉄分割・民営化の陰謀についていろいろ話してきましたけれど、中曽根は、こういうやり方で、国鉄だけじゃなくて社会のあらゆるしくみをすべてつくりかえようとしているんです。教育問題しかり、防衛問題しかり、社会福祉の問題しかり。すべての問題をこの論法でやられた場合に、われわれは一体どうなるんですか。私はそう思えてなりません。
きょうは、国労の組合員の人も参加してもらっています。だから、あえていうけれど、いまの状況の中で、国労なんかが本当に起ちあがってほしいと私は常々思ってきました。いまも思っている。だけど最近はもうかわいさ余って憎さ百倍。本当に頓死するよ、このままいったら。国鉄労働組合でございますなんて、どこに行ってもデカい面していたくせに、デカい面をしているんなら、こういうときぐらい、ちっとはやることをやったらどうだっていうんだよ。国労の山崎委員長は、雇用安定協約を結ぶために、「三ない運動」をやめるといい出した。「三ない運動」というのは、派遣に応じません、一時帰休に応じません、五五才になってもやめませんという運動です。これをやめるという。じゃあなんですか、派遣に応じましょう、一時帰休に協力しましょうとやるんですか。そんなの労働組合じゃないですよ。うちではそんなことはやりません。だから、うちの若い者はみな晴々としている。私が、動労千葉の中でかたっぱしから組合員つかまえて、“おまえらクロネコヤマトに行け”“おまえはディズニーランド”とやったらたいへんでしもそんなことで骨身を削って苦労するというんなら、われわれは国鉄労働者として骨身を削ってでも闘わなければならないんです。だからわれわれは、来たる一一月二九日にストライキをやります。
骨身を削ってでもストライキを闘う
これはたいへんなストライキになると思います。私も二五年間労働運動をやって、いろいろな修羅場を経験してきましたが、いつも最悪の場合を想定することにしています。二九日は、津田沼や千葉転(千葉運転区)は機動隊に制圧され、われわれは職場からたたき出されるかもしれません。いろいろなことが想定されます。しかしそれも先刻ご承知のうえで、われわれはそれに対応する戦術で闘います。私は単純なストライキ主義者ではないけれど、いまは本当にストライキをやらなければいけないと思っています。本当にそう思っている。ストなんかやっても処分を受けるだけだろうに、なんでいまごろ国鉄労働者はストライキなんかおっぱじめたのか、と世間の人が考えはじめるなかから、はじめて、この分割・民営化という大陰謀の本当の狙いが全体の中に明らかになってゆくのではないか。
いずれにせよこの1年間、私たちはたいへんな暴風雨、なんとも形容しがたいような嵐の中に立たされる。その中で、いまいちばん大事なことは、三人に一人の首が切られる当該の国鉄労働者が本当に怒りにもえて立ちあがることなんです。
国鉄の労働組合を中心に、いま総評をあげて五千万署名というのがやられています。これはこれで重要です。動労千葉は先頭切ってとりくんでいます。津田沼支部にももっともっとがんばってもらわなければいけない。しかし地区に行くと、国労はなにをしているんだという声が強い。分割・民営化はたいへんだけれど、しかし国労の連中はなにを考えているんだ、やる気があるのか、オ口オロしているだけじゃないかと声が大きい。これじゃあどうしょうもないです。私はいつもいうんだけれど、本当に応援がほしかったら、まずテメエが真剣に、本気になって闘うことなんだよ。そのときはじめて、その姿にうたれて労働者が結集してくれるんですよ。
われわれは、来たる二月二九日のストを第一波とし、八六年一一月にむけて数波のストライキを決行します。これによって分割・民営化の大陰謀と一〇万人首切りと死力をつくして闘います。いま、三人に一人の首が切られようとしている、誰よりも追いつめられている国鉄労働者がここで本当に闘って、闘って、闘いぬいてやる。そのハラを固めて起ちあがったとき、はじめて、一切の事態が開かれるんです。二月二九日のストをやったら、三〇日からうまくいくとは思っていませんよ。しかし、その闘いによってしか、いまわれわれをおおっている暗雲を徐々にでも払いのけることはできない。
それぬきに口だけで何をいってもだめなんです。
いま起たなかったらどうなりますか。職場では一〇万人合理化がどんどん進みます。国会では一三〇本の法案がつぎつぎ通ってゆく。
それで八六年の二月になったら準備万端整って、そうすれば片っぱしから差別、選別されて、“はい、お前はいうこときかないからあっち”“お前はいい子だからこっち”と勝手にやられるわけ。全員。そうでしょ。そうなつちゃう。そのときになって、“一人の首切りも許さない”なんていってストライキができますか。できない、いまからやんなかったらできないんですよ。
われわれはそう思っている。それはこの闘争をやったら、どのくらい首を切られるかわからない。オレなんかもうとっくに首切られている方だけれど、ヤマちゃん(山下幸津田沼支部長)なんか絶対に首だよ。支部長なんだもの。組合の幹部はここまできたらもう逃げるわけにいかないんだよ。
東京でおもしろいことが起っている。
国労東京の上野支部というのがあるんだけれど、常磐線をもった結構大きい支部で革マル系が強かった。ところが今年の大会で革マルが全部役員から降りちゃった。なぜだと思いますか。国労の役員なんかやっていると四万一千人の中に入れられちゃうかもわからない。
それでなんていっているか。“出向に行こう、出向に行こう”といっている。出向に行けば首がつながるんじゃないかといっている。国鉄労働者の三人に一人の首が切られようとしているときに、いままで組合の幹部でございます、委員長でございます、書記長でございますなんて威張っていた奴らが、いまになって自分の身がかわいいからといって、組合役員をやめるんだったら、それで一体労働者はどうしてくれるんだといいたくなる。そうでしょ。
わが組合にはそういう人はいませんよ。九月の大会でスト方針を決めた後、各支部大会をやった。すこし心配だった。だいたいストライキをやれば支部長は首になる。これは誰でもわかる。だから交代が出るんじゃないかと。だけどそんなことなかった。昔から、こんどの大会で交代が決っていた人以外に交代した人はいなかった。全部執行部はかわらない。動労千葉にはそういう強さがあります。
大会以来われわれは、このスト方針をみなさんに訴えて、そしてみなさんも、よし、それでいこうということになってここまできた。そうである以上、どんな反動も恐れず、このストライキを最後まで貫徹するということでがんばっていただきたい。この一一・二九ストをやりきったときにはじめて、その次のこともいろいろ考えられると僕は思っています。いまはそうじやない。考えようがないんだ。
このままだったら負けることしか考えられない。これをやりきってはじめて次の展望も出てくる。このストライキで、あの不遜で労働者をなめきっている中曽根や権力者に労働者の怒りをぶつけることに成功したときはじめてわれわれは対等の関係にたっていくことができるんです。そうやって、いまの、このどうしょうもない関係をかえたとき、はじめて分割・民営化の正体も暴露され、それじしんたいへんな矛盾とごまかしをふくんでいるあの答申を粉砕できるんじゃないか。このままいったらだめですよ。絶対だめです。
そういうわけで、みなさんがんばりましょう。この津田沼支部は、いずれにしても千葉転とならんでわが動労千葉のエースなんだから、これはしようがない。リリーフじゃない、先発完投型のエースなんだから、ぜひがんばってもらいたい。
それに家族のみなさんにもお願いしたい。ご亭主がたいへんなところに追い込まれているんだということをぜひご理解いただきたい。奥さんも、みなさん結婚するとき、好きだとか嫌いだとか、顔がいいとか悪いとか、いろいろあったかもわからないけれど、やっぱり鉄道員というのは商売が固いと。そういうことがやっぱりあったでしょう。とくにムコさんなんかそうだよ。だけどそうじやなくなってきたんだよね。変らないのは給料が安いことだけ。あとは全部かわった。首はいつ切られるかわからない。あてにしていた老後の年金もダメ。退職金もダメ。楽しみだったパスもとりあげられた。取柄がなくなつちゃったんだね、本当のこといって。やっぱりここまでやられたら起ちあがってがんばりましょうということを最後の言葉にして、私の話を終ります。
(なかの・ひろし国鉄千葉動力車労働組合委員長)