動労千葉鉄建公団訴訟 一審判決と二審判決の対照表(要旨)

●動労千葉鉄建公団訴訟

一審判決と二審判決の対照表(要旨)

12年6・29東京地裁・白石判決 13年9・25東京高裁・難波判決
国鉄による不当労働行為の認定 国鉄当局としては、いったんは原告らを含む動労千葉所属組合員をも基本的には採用候補者名簿に記載する方向で動いていた(少なくとも、これを排除する明確な方針をとっていたものではなかった)にもかかわらず、改革労協側の姿勢に触発されるなどして、動労千葉等、分割・民営化に反対する労働組合に属する職員を不当に差別する目的、動機の下に、本件名簿不記載基準を策定したと推認するのが相当である。国鉄が上記のような不当な目的、動機に基づいて本件名簿不記載基準を策定したことは、本件採用基準を解釈・運用する立場にある国鉄に与えられた裁量権の逸脱ないし濫用に当たるというべきであって、このような本件名簿不記載基準を策定して、原告らをJR東日本の採用候補者名簿に記載しなかったことは、原告らに対する不法行為を構成すると認定するのが相当である。 国鉄当局としては、当初は、一審原告らを含む動労千葉所属の組合員をも基本的には採用候補者名簿に記載する方針で同名簿の作成の準備を進めていた(少なくとも、これを排除する明確な方針をとっていたものではなかった)にもかかわらず、改革労協側の姿勢に触発されるなどして、国鉄分割・民営化に反対する姿勢を示していた労働組合に属する職員を、このような労働組合に所属していること自体を理由として、差別して不利益に取り扱う目的、動機(不当労働行為意思)の下に、本件名簿不記載基準を策定し、一審原告らに対しても、これに従ってJR東日本の採用候補者名簿に記載しなかったものと推認するのが相当である。そして、これを覆すに足る証拠はない。
JRに採用されたか否かについて(賃金相当額) 本件名簿不記載基準が策定されなければ、原告らは採用候補者名簿に記載され、その結果、JR東日本に採用されたはずであるといいうるから、上記不法行為に基づく損害として、原告らがJR東日本に採用されたであろうことを前提にした経済的利益(逸失利益)を観念する余地があるということはできる。
しかしながら、不法行為に基づく損害賠償請求権と、雇用契約関係の存続を前提としたいわゆるバックペイ(無効な解雇後の賃金)の請求権とは、もとよりその性質が異なるものであり、上記不法行為の実質は、原告らに対する国鉄によるJR東日本への採用妨害行為というべきものであって、原告らが労働能力を喪失したわけではなく、上記不法行為と相当因果関係のある損害としては、原告らが他に再就職する可能性を念頭に置いて、一般的、客観的見地から再就職するのに相当と考えられる合理的期間の賃金相当額のみを認めるのが相当であると解される。〔清算事業団において再就職促進法が定める〕3年という期間が再就職に要する期間として十分なものといえることに照らすと、上記合理的期間としては、3年間と認めるのが相当である。したがって、上記3年分の賃金相当額に限られるというべきである。〔清算事業団在職中の収入を損益相殺して、逸失利益を算定。原告1人当たり約242万円~127万円〕
仮に、一審原告に対して本件名簿不記載行為が行われなかったと仮定した場合でも、一審原告がJR東日本の採用候補者名簿に記載された上、同社に採用されたはずであるとの証明はいまだなされていないというべきである。
JR東日本は、国鉄とは別個独立の新法人であり、経済活動の一環として雇用契約締結の自由を有しており
、自己の営業のために労働者を雇用するに当たり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、自由にこれを決定することができる以上、採用候補者名簿に記載されることが、直ちに同社に採用されることを意味するものではない。
JR各社(その設立委員)は、採用候補者名簿に記載された国鉄職員を全員採用したが、これは、国鉄において、本件基準に照らして採用することが不相当であると判断する職員を採用候補者名簿に記載しないとする方針の下に同名簿を作成していたことを前提としたからである。仮に、採用希望者の全員を同名簿に記載する方針の下で同名簿が作成された場合においては、上記JR各社(その設立委員)が同名簿記載の者全員を採用したか否かは明らかではないというべきである。
慰謝料について 国鉄による本件名簿不記載基準の策定は、設立委員会へ採用候補者名簿を提出する直前に急遽策定されたもので、その結果、原告らはJR東日本に採用されなかったものであり、不採用となった当時、原告らに対しその不採用の具体的理由すら明らかにされなかった。原告らが、長年国鉄に勤務を継続しており、その職場に愛着を有していたのは想像に難くないこと、他方で、原告らは、第1波スト、第2波ストという動労千葉による公労法違反のストライキに関与しているもので、そのこと自体は否定的に評価せざるを得ないこと、その他の諸般の事情を総合的に考慮して、前記財産的損害とは別に国鉄による前記不法行為による慰謝料としては、一律に各300万円と認めるのが相当である。 一審原告らは、国鉄がJR東日本の採用候補者名簿を作成するに際し、国鉄から本件不記載行為により違法に不利益取扱いを受けたことで、国鉄から正当な評価を受けて、JR東日本の採用候補者名簿に記載され、JR東日本に採用されることに対する期待をそれぞれ侵害され、また、動労千葉に加入していることによりかかる差別を受けたものである。上記期待については、本件不記載行為がなければ一審原告らがJR東日本に採用されたはずであるとまでは認められないものの、本件の事実関係の下では、一審原告らが採用された可能性は相当程度あったことも否定できないから、不法行為の侵害の対象となる法的利益として認めるのが相当である。上記精神的損害に対する慰謝料は、本件違法行為の態様、被害の重大性等を総合考慮すれば、1人当たり500万円と認定するのが相当である。