動労千葉のひとつの作風 ーー「本音で語りかけて、本音で話し合って、いっしょに進もう」『甦れ労働組合』(中野 洋著)より

どんなことでも悩みや苦しみを相談に乗れる、話し合える仲間がたくさんいる。そこで団結ができる。
僕は、動労千葉を結成した時など猛烈に言っていた。日本の労働運動の悪しき神話、つまり「闘えば分裂する」という悪しき神話を絶対に打ち壊さなければならない。労働組合というのは、「闘えば分裂する」という悪しき神話を絶対に打ち壊さなければならない。労働組合というのは、いざという時に力を発揮する存在でなければならない。もちろん労働組合だから敵の攻撃を全部はね返すことはできない。しかし、どんなことでも悩みや苦しみを相談に乗れる、話し合える仲間がたくさんいる。そこで団結ができる。お互いに助けあえる。こういうものに労働組合をしていかなくてはいけないと思ってきた。そして「労働者である彼らに徹底的に依拠して、絶対に信頼する」と思ってきた。
だから労働者というのは相当のところまでやる、実際にニンジンなどぶら下げなくても、一銭の得にもならないことをやるのが労働者であって、そこをとことんまで信頼する。口では「労働者階級を信頼しろ」とよく言う。しかし、そんなことを言っている人間に限って信用していない。だから動労千葉は、動労千葉の組合員を、徹底的に信頼する。なぜなら、信頼しなかったら、向こうも信頼するはずがない。人間一対一になって、こいつは僕を本当に信用しているなということにならないと、そいつを信用しない。だから、「死なばもろとも」というところまで、「お前らがずっこける時は僕もずっこけるんだ」「僕がずっこけた時はお前らもずっこけるんだ」と。そういう関係で、ずっと闘ってきた。
あの国鉄分割・民営化反対の闘争をとおして、結局、清算事業団も含めると四十人もの首を切られた。そして組合員の三分の二くらいが処分を受けた。それでもみんな腹を決めて闘ったから、国労のように二十万があっという間に三万人になってしまうことにはならなかった。

世の中は、動労千葉は特別な組合だと思っている。だが、中に入ればすぐにわかる

そして今でも動労千葉は、団結してことに当たっているということができる。闘って団結を強めていく、闘って敵の攻撃を最小限に食い止めていくことができたわけだ。それは動労千葉ではなくても、どの労働者でも、労働組合でもできることだと思っている。動労千葉だけがきわめて特別な組合ではないわけだ。世の中は、動労千葉は特別な組合だと思っている。だが、中に入ればすぐにわかる。動労千葉の組合員とつき合ってみればよくわかる。よその組合員と何が違っているか。何も違わない。ここに来ればみんなびっくりするわけだ。動労千葉は、みんな活動家のゴリゴリばっかりが集まっている存在だと思っているから。動労千葉のような組合は、外から見ているだけではわからない。

僕は、徹底的に労働者に依拠してきただけ

労働者の戦闘性について、いろんなことを理屈では言うわけだが、実際は労働者の言うことよりも資本のことを信用したり、別のところに依拠したりする日本の労働組合があまりにも多い。
しかし僕は、徹底的に労働者に依拠してきただけだ。労働組合というのはそれ以外に生きていけない。だから僕は別に変わったことを行ったつもりもない。それだけのことだ。それがよく「動労千葉って何でこんなにできるんですか」と言われるけど、特別のことを行ってきたわけではない。
だから何を行ってきたかというと、組合員に隠さない。ストレートにものを言う。そうすると、それはわかってくれる。今まで、かくかくしかじかのことやります、少しはわれわれの労働条件がこれだけ前進するとか、そんなことを言わないと組合員が納得しないようなところもあった。
それは労働組合だから、労働条件を維持・改善していくということは大きな目標だから、それはやる。やるのはあたり前だけど、それだけで、労働者が立ち上がるわけではない。
往々にしてそうだ。マルクスも言っている。「労働者というのは、百のうち九十九は負けるんだ」と。だからやはり負ける戦(いくさ)をやらざるをえない。だけどその中で僕たちの獲得目標をどこに置くかということを、相当はっきりさせてやる。九三年十二・一のダイ改阻止のストでも、具体的な目標は掲げているけれど、それが取れなかった。それはJR当局が、われわれの要求に対してビタ一分譲らないから。そして、組合員はそれを全部知っているわけだ。だけどこの闘争をやって、どんな情勢を切り開こうというのか、いったい何のためのストライキかということを、相当言うわけだ。ほぼ本音を言って、これでやろうぜ、とはっきり言う。
だからそこで初めて、組合員の労働者と指導部との間の信頼関係もできる。やはりうそを言ってはだめだ。ごまかしはだめ。口先でちょろまかすやり方、それが日本の政治家、労働組合のリーダーにも多い。それはやらない。本音で語りかけて、本音で話し合って、いっしょに進もうということを、動労千葉のひとつの作風として、ずっと行ってきた。

新版-甦る労働組合
中野 洋 著
◆第1部 労働運動の復権
・国鉄1047名闘争の危機と動労千葉の前進/・甦る労働組合/・青年労働者こそ主役だ/・新自由主義と闘う労働運動/・反戦と改憲阻止を闘う労働運動/・55年体制の崩壊と新たな労働者の党/・労働者階級の自己解放
◆第2部 分割・民営化と国鉄労働運動
・国鉄の分割・民営化/・動労革マルの歴史的裏切り/・正念場のストライキ/・分割・民営化以後のJR体制/・国鉄闘争勝利の道

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