韓国 世界を揺るがす23日間のスト 新自由主義打ち破る歴史的闘い

 韓国で、世界を揺るがすストライキが闘われています。
 パククネ政権による韓国鉄道の民営化に対し、韓国鉄道労組は昨年12月、23日間に及ぶ過去最長ストを貫徹し、組合員の士気も高いまま団結を強化して第一波ストを集約し、2014年以降も新たな闘いを準備しています。
 世界有数の戦闘力で知られる韓国の労働組合のナショナルセンター全国民主労働組合総連盟(民主労総/組合員約70万人)も全面支持し、年末12月28日にソウル市庁前広場で開かれたゼネスト決意大会には全国から10万人が集まりました。 2月25日に民営化中止とパク政権打倒のゼネストが計画されています。

 今回の鉄道労組の長期ストは、「民営化反対」の社会的共感を生み出し、強硬一辺倒だった政府の労働政策にブレーキをかけたと評価されています。
 1980年代から世界に吹き荒れた新自由主義は、英国サッチャー政権による炭鉱ストの圧殺、米国レーガン政権による軍隊を導入した航空管制官スト弾圧、日本の中曽根政権による国鉄分割・民営化の強行を出発に猛威をふるってきました。
 今回の韓国鉄道ストは、新自由主義と民営化に対する乾坤一擲の、世界を揺るがす歴史的なストライキです。中曽根政権の国鉄分割・民営化に対して、このようなストが闘われたならば、その後の歴史が変わったことは間違いありません。今回のストには語りつくせぬ意義があります。
 新自由主義による、経済のグローバル化・製造拠点の世界的な移転は、韓国や中国、アジアに巨大な製造拠点と巨万の労働者を生み出しました。そして民主労総のような戦闘的労働運動を登場させ、労働者の闘いの歴史的な転換と可能性を生み出しているのです。
 韓国政府は、現在の鉄道公社を持株会社に転換し、鉄道部門を旅客や貨物など5つの子会社に分割して、将来的には民営化しようと画策しています。手始めに、来年開通予定の高速鉄道KTXの新路線(ソウル郊外を起点にプサンや木浦を結ぶ)で、この方式を採用して、全路線に拡大する計画なのです。

外注化と事故続発に大きな危機感

 韓国の鉄道民営化の出発点は、1998年にさかのぼります。前年のアジア通貨危機で深刻な打撃を受けた韓国では、キムデジュン政権が鉄道庁の民営化を画策しました。しかし、02年、鉄道労組によって阻まれ公社化にとどまりました。職員の身分も公務員のままでした。
 しかし、直接の整理解雇は行われませんでしたが、鉄道公社は、猛烈な合理化を進め、要員を補充せず人員削減を強行しました。さらに大きな問題は、外注化(アウトソーシング)が導入され、非正規雇用の規模が一挙に拡大したことです。鉄道公社の子会社コレイルテックでは、正規職49人に対し、非正規職1279人。正規率は4%に満たないのです。
 今回のKTX新路線の子会社化では当初、1700人の要員が必要と説明されていましたが、今では400人で会社を運営すると言っています。残りの1300人は外注化です。労働者の賃金は月15万円に満たず、メール一本で解雇できる雇用に労働者を突き落とそうというのです。 鉄道公社は、施設維持や保守業務の大半をすでに外注化しています。線路維持補修会社は3社、建築物や付帯施設の管理会社は5社、電車用の電力関係は16社で合計24社の外注業者が入っています。鉄道庁の時には正規職職員が責任を持っていた業務を子会社に分割し、アウトソーシングして、人件費を削減しているのです。
 外注化の拡大が事故やトラブルを増加させ、現場労働者には危機感が募っています。鉄道労組の民営化反対ストを支持する韓国世論の背景には、日本のJR北海道の事故多発報道があるのです。

非正規職の撤廃と民営化粉砕一体で

 1997年のアジア通貨危機の後、韓国社会では民営化と整理解雇、非正規雇用化の嵐が吹き荒れ、韓国労働運動は必死で闘ってきました。1999年には非正規率は53%に及びました。韓国通信など9つの公的企業が民営化されました。以来、民営化と非正規雇用の問題は、韓国労働運動の最大の問題となります。
 1997年から数年間の民営化と整理解雇との激しい衝突の後、多くの職場で日常的な「構造調整」が始まりました。アウトソーシングと非正規雇用の導入です。正規雇用と非正規雇用が分断され、正規雇用の労働者が非正規を雇用の安全弁と考える雰囲気さえ生まれました。
 このことは韓国の労働運動に大変な葛藤と苦闘をもたらしました。非正規職の散発的な闘いは、正規職の共闘・連帯を得られないまま、職場占拠や焼身抗議など激しく展開されたこともありました。
 苦闘の中から02年頃から韓国労働運動の戦略的課題として「非正規職撤廃」の組織的な闘いが展開されるようになりました。自動車産業などで社内下請労働組合が結成され、KTXの女性乗務員の外注化阻止の闘いなどが展開されました。
 09年、量販店ホームエバーの労働者400人が解雇撤回を求めて500日を超えた闘ったイーランド争議が勃発しました。勤務期間が2年を超えた非正規職の労働者を「期限の定めのない雇用」に転換することを嫌い、レジ係などの外注化を決め、働いていた女性労働者を大量に解雇したことが発端でした。闘いの中心は、非正規の女性組合員。売り場を占拠して会社側に対抗。機動隊による強制排除、幹部の逮捕などを経ながら、長期の闘いを続けました。
 こうした苦闘の中で、パククネ政権の全社会的な民営化と非正規化の攻撃を打ち破る鉄道労組の23日間のストが貫徹され、団結を強化して、次の闘いに向かっているのです。非正規職撤廃と民営化粉砕の結合こそ労働運動の進むべき道です。
 韓国の鉄道労組の闘いは、日本における国鉄分割・民営化反対の闘いの意義を鮮明に浮き彫りにしています。四半世紀を超えて1047名解雇撤回闘争は継続し、動労千葉の鉄建公団訴訟は「国鉄改革の真実」を暴き出し、国鉄闘争の新たな可能性を開いています。さらに現場では10年を超える外注化阻止の闘いが非正規職撤廃の闘いと一体で、労働運動の新たな挑戦として闘われています。
 韓国の労働運動と連帯し、国鉄闘争を先頭に労働運動の再生を!

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