高山俊吉弁護士講演(労働学校実践講座)

裁判員制度廃止-改憲阻止へ!
高山俊吉弁護士講演(労働学校実践講座)

講演する高山弁護士

 8月28日労働学校実践講座において、「改憲阻止闘争について」高山俊吉弁護士による講義が行われた。反裁判員制度闘争を柱に行われた講演は、憲法とは何か、法とは何かを問いながら、今日の政治・経済情勢をどう見るかによって、改憲阻止闘争も階級的視点をもって闘わなければならないことをはっきりさせた。以下、内容を紹介します。(編集責任 日刊編集委員会)

日本国憲法の基本性格

 近代憲法とは、そもそも独立戦争の結果できたアメリカ合衆国憲法をはじめ、フランス革命後のフランス憲法、ロシア革命後のソビエト憲法など、いずれも闘いの到達点を確認し、旧勢力を押さえ込む理念を明確にする性格をもっています。日本国憲法をみてみると、こうした近代憲法の基本性格を備えつつ、特異な性格を持っています。それは、資本主義体制を前提とし、前近代的な制度である天皇制を「維持」しつつ、民主主義と基本的人権を強調し、反戦・恒久平和の思想と態勢を持つブルジョア憲法だということです。この特異性は、憲法が戦後革命情勢の中で生まれ、国内外人民の闘いと列強・権力の妥協上の産物だという背景にあります。

憲法9条の縛り

 憲法9条は、「戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認」を定めていますが、具体的には2項で、「戦力を保持しない、交戦権を認めない」としていることで、いわゆる「自衛」のための戦争もできないような縛りがかけられています。これは、戦後革命期の労働運動の嵐のような爆発のなかで、反戦闘争が労働運動の大きな課題として掲げられ、権力とのせめぎあいの一つの到達点の結果生まれたことによります。闘いに大いに使える武器となる面をもっていました。当時の吉田首相でさえ自衛権に関して、次のように言わざるをえませんでした。「戦争放棄に関する本条の規定は、直接には自衛権を否定して居りませぬが、第9条2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も放棄したものであります。従来近年の戦争は多く自衛権の名に於いて戦われたのであります。…故に我が国に於いては如何なる名義を以てしても交戦権は先ず第一、自ら進んで放棄する」(1946年6月26日衆議院)

改憲阻止闘争の立脚点

 高山弁護士は、ここで改憲阻止闘争の立脚点を明らかにするなかから、いわゆる憲法擁護運動との違いを鮮明にさせました。現実の社会情勢をみない抽象的な平和論や憲法美化論ではなく、戦争政策の縛りとなっている憲法をこれとの決定的武器として使い、社会情勢を直視し、現実の闘いとして闘うこと、政府が再び戦争を起こすことを許さない行動に現在、立ち上がること、他力本願ではなく敵の弱点や危機を捉え自ら決起すること、反裁判員制度闘争など具体的な中身で闘うことなどを提起しました。

裁判員制度の本質

 裁判員制度の本質は、司法制度改革審議会意見書(2001年)のなかでも明らかです。「司法制度改革は、政治改革、行政改革、規制緩和など経済諸改革の最後の要」、「裁判員制度は、被告人のためというよりは国民一般にとって重要」、「裁判員制度として重要であるために導入する」など、新自由主義路線の産物であり、司法、裁判のあり方を根本から変えることが目的です。また、「犯罪がどのように起こるのかを考えるきっかけを作る」「社会に何が必要かを自分のこととして考える、昨日までとは違う自分になる」(最高裁・法務省・日弁連共同の全国紙面広告)など、国民に治安意識を植え付け、その担い手にしようとする人格改造攻撃です。しかし、実際に制度が始まって1年以上が経過しているにも係わらず、反発と批判はより強く広範囲になっています。8割を超える人々が制度に背を向けています。125万通出された裁判員候補者の通知に返信する人はわずか35万人、しかもその内の2割が「大病、大けが」で「辞退」を表明しています。不出頭者が続出し、処罰することもできず、事件は超滞留し、半分しか判決が出ていません。裁判所のなかからも悲鳴が上がっています。裁判員制度は権力の危機をリアルに示しています。裁判員制度反対闘争を改憲阻止の闘いと結合しよう。工夫をすれば多くの人が応えてくれる情勢が生まれています。

「市民派」菅内閣の危険性

 菅内閣は、これまでの自民党系や2世議員の首相と違い、初めて「市民派」として登場したことは重要です。所信表明演説で「新しい公共」を主張して、道州制や公務員制度改革などを推進し、民営化・規制緩和、公務員の雇用保障解体を「市民派」として行おうとしています。ナチスの「新体制運動」を彷彿とさせます。
 すべての闘いを戦争国家化阻止の闘いに結びつけて闘おう。10・20裁判員制度反対集会へ!

「攻めの改憲阻止闘争」 で憲法改悪攻撃と闘おう

第Ⅷ期労働学校実践講座-第3回講義(8/23)
「攻めの改憲阻止闘争」 で憲法改悪攻撃と闘おう!

「裁判員制度は権力の危機をリアルに示している」 と訴える高山俊吉弁護士

「裁判員制度は、中曽根行革の最後の要であり、改憲攻撃そのものだ!」
高山俊吉弁護士の講演で、勝利の展望をつかむ

 8月23日、DC会館において、労働者学習センター主催の「第Ⅷ期労働学校実践講座」の第3回講義が開催され、動労千葉の各支部代表や東京・関東から参加した受講生が結集する中、憲法と人権の日弁連をめざす会代表の高山俊吉弁護士から、「改憲阻止闘争について」と題して講演が行われた。

「自衛のための戦争」を否定する憲法9条2項

 講演において高山弁護士からは、まず近代憲法について、権力を獲得した新勢力が旧勢力を押さえ込む理念を明確にし、その理念を実現するために構築する国の仕組みなどを規定する基本法である、との性格が明確にされた。そして、日本の憲法の性格として、戦後革命という激動情勢の中で労働者階級の闘いが勃興し、これに恐怖したGHQなどが9条の戦争放棄を入れる代わりに象徴天皇制を維持するという、妥協の産物として制定されたことを明らかにした。そのため、労働者・人民にとって必要な戦争放棄等がある一方で、決して受け入れることができない天皇制等も含まれていることをハッキリと捉えなければならないと指摘した。
 そして、憲法9条2項の重要性に触れ、
これまでの戦争は、全て「自衛のため」と称して行われてきた歴史的事実があること、しかし、9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定しているため、いかなる戦争もできなくなる。極論的ではあるが改憲問題は憲法9条2項の問題に収斂されるとの立場を鮮明にした。

「 改憲」 前の改憲攻撃との闘いが、決定的に重要だ!

 次に、「攻めの改憲阻止闘争」とは、憲法の性格を無視した抽象的な「 平和論」 や「 憲法美化論」 のような曖昧さを残したままのこれまでの憲法擁護運動を否定し、労働者・人民が自らの闘いとして改憲阻止の闘いに起ちあがることであり、改憲攻撃とは明文改憲だけではなく、改憲に向けた全ての態勢作りが改憲攻撃であること、こことの闘いを徹底的に進めることが重要であることを訴えた。すでに海外派兵恒久法のように、国連決議なしに政府判断での派兵が可能で、先制攻撃も可能な法律の制定が狙われており、すでに改憲前の改憲攻撃がすでにはじまっており、こうした攻撃との闘いが決定的に重要だと熱烈に訴えた。
 そして、弁護士の立場とすれば、司法改悪との闘いこそ改憲阻止闘争そのものであることを明確にした。

改憲阻止闘争の中心に、裁判員制度反対の闘いを!

 一方、司法改悪の最大の攻撃として裁判員制度の導入が来年5月から施行されようとしていることについてふれた。
 司法改革とは、中曽根行革の最後の要であり、改憲と戦争国家化に向けた総仕上げの攻撃であることを指摘した上で、制度の本質は、「現代の赤紙」で労働者・人民を権力の下に動員し、「公」=国のために自らを犠牲にさせ、お互いを監視させる現代の「隣組」であることを明確にした。
 また、裁判員制度は「市民の司法参加」という宣伝が行われているが、戦前にはヒトラーが「密告」という方法で「市民参加」を推進していたことなどに触れて「司法への市民参加」自体ウソであること、「司法の市民参加」の本来の意味は、不当な裁判制度に対して批判し、弾劾する立場で参加し、正当な裁判を行わせることにあることを鮮明にした。
 そして、裁判員制度は、資本主義の統治形態が極限的に崩壊する状況の中で出てきた制度であること、裁判員制度の持つ矛盾や不合理(裁判を拒否できない、裁判内容の守秘義務等々)が多くあり、しかも今年5月のアンケートでは80%以上が消極的な意見であること、当初は導入に賛成していた既成政党が延期や凍結に転じるなど翼賛体制破綻し、権力も狼狽するなど、勝利に向けた全ての条件が整ってきたと説明した。
 最後に高山弁護士は、裁判員制度反対の闘いを改憲阻止闘争の中心に据えて闘うことの重要性を訴えるとともに、まとめとして①裁判員制度ほど権力の危機をリアルに示すものはないこと、②「 貧困・格差」 「 蟹工船」 「 秋葉原事件」 等々、全ての闘いを憲法9条2項の関係で捉えること、③そして全ての闘いを戦争国家化阻止の観点で捉えることの重要性を訴えて、講義を終了した。