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シリーズ「正社員ゼロ━解雇自由」社会を許すな@ A

「正社員ゼロ━解雇自由」社会を許すな B


東京新聞 2015年6月12日


日経新聞2013年3月29日付、4月19日付)

労働者派遣制度の合理化

 第三に、「労働者派遣制度の合理化」と称して、派遣法の抜本的改悪が検討された。具体的には、「常用代替防止」の原則を崩すことに焦点があてられた。実際、昨年9月には、この方針に基づいて労働者派遣法が改悪されている。それは、マスコミが「1985年以来の転換」と報じるほどの大改悪であった。
どういうことか。派遣法は1985年の制定以降何度も改訂を繰り返し、当初は13の専門的業種に限られていた対象業務がどんどん拡大され、ついには製造業も含め原則自由化されるところまで改悪が進んでいた。しかし、「派遣を導入できるのは『一時的・臨時的業務』に限る」「常用雇用を派遣に置き換えることはできない」ということだけは「原則」として維持されてきた。それは当然のことで、そこまで崩してしまえば、この社会の雇用は全部「ハケン」になってしまいかねないからだ。しかも、労基法の根幹のひとつをなすのが「中間搾取の禁止」である。「常用代替防止」の原則を破棄することは、労基法の最後的崩壊を意味するものでもある。
安倍政権はそれを突き崩そうとした。そして、昨年9月の派遣法改悪では、それが強行されたのだ。さらにそれを突破口にして、「民間人材ビジネス」なる奴隷商売を社会に蔓延させ、成長戦略の一つの柱にしようとしているのである。戦後労働法制はまさに歴史的岐路に立ったのだ。

「常用代替防止」破棄のペテン

 しかも、その際に掲げられた理由は驚くべきものであった。「『常用代替防止』は、正社員を派遣社員との競争から保護する、諸外国にはない規定であり、対等な立場での競争条件を保障するべきである」というのだ。ここでもこれまでの労働法制の考え方が完全に逆転されてしまっている。規制改革会議は、「常用代替防止は正社員の保護を目的としており、派遣労働者の保護と必ずしも相容れない」と言うが、このような言い方はペテンに他ならない。事の本質が意図的にすり替えられている。正社員であろうが、非正社員であろうが、中間搾取をしてはならないことが労基法の大原則なのだ。「常用代替防止」はそこから発している規定であり、正社員を保護しているわけではない。
こうして、企業の側は、どんな業務にでも、3年毎に人さえ入れ替えれば恒久的に派遣を使い続けることができるようになった。派遣労働者の側から見れば3年毎に首を切られ、使い捨てられていくということだ。

就業規則の万能化

 第四に、就業規則を万能化し、その一方的な不利益変更が合法化されようとしている。それは、団体法・社会法としての労働法を解体し、団結権・団体交渉権・団体行動権を否定し、労働者個々人の単なる契約関係にバラバラにしていこうとする攻撃だ。
さらに、前号でも述べたように、「正社員改革」=限定正社員制度の導入とも一体の攻撃である。あらかじめ就業規則に勤務地や職務を限定しておけば、その仕事や職場が無くなったり、縮小したときは、就業規則によって自由に解雇できるようにする。こうした企みは、2007年の労働契約法制定をもってその突破口が開かれていた。労基法から労働契約に関する部分を切り離して労働契約法が制定されたのだ。
産業競争力会議では、就業規則の不利益変更の正当化について、「2007年労働契約法は挫折した」という議論がされている。そして、「労働条件変更を正当化しうる従業員代表法制が必要」「労働条件の不利益変更の効力が裁判が確定しない限り不明というのは望ましくない」と言って、就業規則を万能化し、その一方的変更を合法化しようとしているのだ。
(つづく)

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