東海道新幹線 保守用車追突・脱線事故
信じがたい安全の崩壊
運転士は首の骨を折る重傷
7月22日に発生した東海道新幹線での保守用車両の追突・脱線事故について、JR東海は「原因と対策について」とする、マスコミ向けで重要な要素がほとんど抜け落ちている文書を8月5日に発表した。
そもそもの事故の経過は、豊橋駅〜三河安城駅間上り線において、東京方の豊橋保守基地に向かう途中の保守用車(砕石運搬散布車編成)が、合流するために待機していた別の保守用車(マルチプルタイタンパ)に衝突し、両車両の一部の車軸が脱線したというものだ。この事故で4人の労働者が負傷、運転士は首の骨を折る重傷を負っている。
当初、「ブレーキ操作は問題なく行われたが何らかの原因でブレーキが効かない状態になった」と説明された。
今回の発表では「ブレーキの点検方法を誤っていた」「メーカーに判定方法の確認を行っておらず、認識が異なっていた」「誤りは車両を導入した2010年から続いていた」「一部車両はブレーキがほぼ利かない状態で本来なら使用停止」などと説明されている。
JR東海報道発表資料(8/5)より
- 軌道モータカーに牽引された6両の砕石運搬散布車のうち少なくとも3両のブレーキ力が大きく低下した状態だった(その他3両は破損のため確認不能)
- ブレーキシリンダーのストローク量が限界になり、ブレーキの効きが大きく低下した状態だったと推定
- ストローク量を確認する際、最大圧力(10ノッチ)でブレーキをかけた状態で行うべきところ測定時の圧力が小さく(7ノッチ)、14_程度の誤差が生じた
- 判定位置を示すテープの右端で測定すべきところ、左端で測定していたため、さらに10_の誤差が生じた
- ストローク量の確認は7月20日にも行われたが、本来なら使用停止すべきところ、「使用可能」と判断した
また、計30両ある砕石運搬散布車のうち事故車以外にも5両がブレーキ力不足であり、約3分の1に問題があったとされている。
いつ事故になってもおかしくない状態のまま作業が続けられた結果、労働者の命に関わる重大事故が引き起こされたのだ。
何が起こっていたのか?
「約14年もの間、ブレーキの点検方法を誤り続けていた」「3分の1の車両がブレーキ力不足だった」――にわかには信じがたい事態だ。
ストロークの確認は車両検査の中でもイロハのイにあたることだ。それが14年も間違い続けていたとすれば、技術力の崩壊以前の問題だ。鉄道会社の体をなしていないと言っても過言ではないレベルだ。
しかも、制輪子の摩耗が14年間も点検されていなかったというのか? 貨車検・仕業や出区の点検はいつ、どのように行われていたのか?
この事態には業務の外注化が間違いなく影を落としていると考えられるが、どこに問題が生じていたのか? 重要なことは何も語られていない。
そもそもストローク量の点検方法を誤った理由を「メーカーとの認識の違い」「説明書に記載がなかった」「確認していなかった」というが、こんな素人のようなとんでもない事態がなぜ起きたのか?
合理化・外注化攻撃許すな
合理化・外注化は安全を破壊する。だが今、JR東日本は改めて検修部門の全面外注化と派出検査の解体に踏み出している。それは鉄道の安全破壊であり、労働者の権利の破壊だ。この攻撃を許すわけにはいかない。
改めて外注化攻撃粉砕の闘いにたちあがろう。JR・グループ会社大再編攻撃をうちやぶろう。 |