新自由主義ー分割・民営化攻撃の破たんと廃線化攻撃 (下)
(2) 新自由主義大崩壊と鉄道廃線化攻撃の構図 A
「エリア一括」廃線化?
デジタル田園都市国家構想には、「地方公共団体が・・・交通事業者に対して、エリア一括して複数年にわたり運行委託する場合に、・・・複数年にわたる長期安定的な支援に向け、実効性ある支援等を実施する」と書かれています。「エリア一括して」廃線化すれば国が支援するというのです。
驚くことに、そのために独占禁止法の特例をつくるとまで言っています。Aというバス会社、Bというバス会社、Cという鉄道会社がカルテルを組んで国交省に届け出れば、独占的な運賃などを決めていいことにするというのです。
でも、そんなことで公共交通を再構築できる地方などいくつもありません。久留里線の亀山でどうやれというんですか? エリア一括とは、間違いなく久留里線を全部一括して廃線化しろということになっていきます。
その際の「安定的な支援」のためのカネをどこから出すのかをめぐって、国交省内で激しい対立が起きています。
国交省の鉄道関係予算は全体の2%しかないのです。それで、空港・港湾など他の予算から持ってくることで一応合意されています。しかし今度は、有事に向けて特定重要空港・港湾を整備することになった。そのための予算をどうするのかは、未だ明らかにされていません。
こうした矛盾や対立をいたる所に生み出しながら、大きくは「戦争のできる国」に向かってつき動かされていくというのが日本の現状です。
一般バス路線の崩壊
第6に、新自由主義攻撃の渦中でいったい何が起きているのか、いくつか具体的な例をあげておきたいと思います。
一つは、一般バス路線の崩壊という問題です。06年から22年の間に、2万5464`が廃止されています。これはJRの全営業`をはるかに超えています。
とくに、去年くらいから「運転手不足」という問題が重なって猛烈にエスカレートしています。千葉市でも、ある団地と駅を結ぶバスが、1日10本走っていたのが1本になってしまうとか、陸の孤島化がガンガン進んでいます。北海道などは都市部からもバスが消えようとしている。
地方に行くと、タクシーが唯一の交通手段となり、自治体が補助して生活が成り立っている地域が多くありますが、そのタクシーすら撤退してしまう。
廃線・バス転換などと言っていますが、地域切り捨て政策の中でそれすら現実性がなくなろうとしているのです。
バス運転手数の推移
学校、病院など
二つ目に、学校も病院もですが、1990年から22年の間に、小学校が5666校、中・高校が1945校廃校になっています。驚くべき数です。それでも今起きているのは「教師不足」で、授業に穴が開いたり担任すら決まらなかったりということが当たり前になっている。まさに支配の末期症状です。
病院も、1999年から21年の間に1081病院が廃院になっており、やはりその事態はエスカレートしています。
鳥取県郡部の調査では、「住み続けるために必要な機能」の第1位が「買物支援」(57・4%/複数回答)だったという結果が出ています。
こうした現実は、私が調べたのではなく、全部、リ・デザイン実現会議の資料に出されているものです。彼らはそれを「仕方ない現実」として、「鉄道に展望はない」と引きずり込もうとしているわけです。
国家財政破綻から軍需依存経済へ
最後に、日本の最大の破綻点は、異次元緩和と称して危機を先送りし続けた結果、世界最大の借金国に転落していったことです。国家財政の破綻や日銀破綻が目の前に迫り、もはや打つ手がない状態です。しかしこの問題はここでは全面的に省略せざるをえません。 一点だけ述べておくと、その結果、これも安保3文書ですが、「防衛装備移転」とか「防衛産業保護」とか言って、全面的に軍需経済にのめり込もうとしているということです。
あらためてJRの位置
こんな現実の中で、すべてをなぎ倒しながら、43兆円の大軍拡が進められようとしているのです。
JRは、それを千載一遇のチャンスとして見ているのだと思います。そして、 国家構想実現会議やリ・デザイン実現会議、経団連経営労働政策特別委員会(JR東・冨田が審議員会議長)の中心に座って、国家改造攻撃の急先鋒を担っています。国家改造攻撃の先頭に立つことで、企業としての自らの利益を貪欲に追求していると言ってもいいかもしれません。
ちなみに、かつては、葛西が安倍首相のフィクサーのようになって立ち回っており、それはそれで重大なことだったわけですが、今はそれとも次元が変わって、JR東日本資本が、政府や財界の中心中の中心に座っています。
(3) 労働運動の再生をめざして、
分割・民営化攻撃に決着をつけるとき
新自由主攻撃の限界ー社会に満ちる怒りの声
新自由主義攻撃、あるいは新自由主義的鉄道政策の限界が完全にあらわになっています。それは災厄しかもたらさなかった。どこかを手直しすれば済むといった問題ではないのはこれまでの話で理解して頂けたと思います。求められているのは百事一新です。そのためには、今こそ労働運動が力を取り戻さなければならない。
怒りの声は満ちています。京葉線快速廃止問題で、一宮町の町長は「生命維持装置を外されたようなものだ」とまで言っています。沿線住民からは「暴動ぐらい起こしてもいいんじゃないですか」といった電話がかかってきます。新自由主義の崩壊と戦争政策に断を下すことのできる労働運動の創造をかけて、地域ぐるみの闘いを組織しなければなりません。
日本の労働運動は、新自由主義攻撃に立ち向かうことができずにここまで後退してきました。動労千葉が模索してきたのは、そうした攻撃の渦中で団結を拡大することができる階級的運動・労働組合はいかにあるべきかということでした。廃線化反対闘争の中からその展望をつかみとる正念場です。
攻撃は必ず破綻する
この攻撃は必ず破綻します。第1に、安全・鉄道の崩壊という形をとって破綻します。第2に、鉄道を運営するのに必要不可欠な技術力が崩壊して破綻します。第3に、鉄道を動かすのに必要な人員を確保することができなくなって破綻します。第4に、職場から怒りの声が噴き上がる形で破綻します。若年退職者が急増するという形をとってその兆しはすでにあらわれています。第5に、地域の怒りの声の爆発・大反乱が始まって破綻します。第6に、AI神話の崩壊という形をとって破綻します。
連合支配をうち破れ!
もう一点、デジタル田園都市国家構想実現会議等には連合が深く関与しています。例えば、昨年の春闘の後に、JR連合の幹部が雁首を揃えてUAゼンセンに頭を下げにいっています。理由は、UAゼンセンが地域の街づくり運動を進めているから協力を仰いだというのです。
私は詳しいことは知らないのですが、国家構想にかんで政府と一体化して動いているとしか考えられません。
連合はこの間の原発、大軍拡政策などすべてに深く関与しています。廃線化反対闘争は、連合支配を打ち破って、階級的労働運動を甦らせる重要な一翼を担う闘いでもあります。
国鉄分割・民営化に反対して立ち上がった2波のストライキから39年、いよいよ戦後最大の労働運動解体攻撃に決着をつけるときです。労働運動の変革と社会の変革、そして絶対に戦争を止めること、今年それを一つにして進む年だと思っています。
去年の11月集会は、「戦争を止め、社会を変える力がここにある」をメインスローガンに、ウクライナ、ガザ、そして中国侵略戦争を阻止することが最大の課題であることを明確にして新たな一歩を踏み出しました。廃線化阻止、労働運動再生の闘いを全力で強化していきたいと思います。
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