「新自由主義を終わらせる労働運動の再生を」
7・16討論集会の成功かちとる
7月16日、国鉄闘争全国運動「新自由主義を終わらせる労働運動の再生を」 討論集会が開催された。浅川雅己・札幌学院大教授、河野晃興・さくら交通労組委員長、菊池晴知・ユニオン習志野委員長の報告から、浅川教授の提起内容を一部紹介する。
浅川教授は、JR北海道研究会のメンバーであり、関生支援北海道の副代表でもある。
JR北海道研究会
16年11月にJR北が全路線の約半分を「単独では維持困難な線区」と公表した。鉄道の維持を事実上放棄し廃線をめざす宣言。北海道がもっとも分割・民営化の矛盾の焦点にあることを示した。北海道の研究者で「JR北海道研究会」を発足させ、研究活動とともに鉄路存続の運動にも取り組んできた。
JR北海道研究会は、全道各地の住民運動団体に「北海道の鉄道の再生と地域の発展を目指す全道連絡会」の結成を呼びかけ、数次にわたる全道集会・シンポジウムを開催。道、道議会、全道自治体首長、商工会議所などとの話し合いや申し入れを行い、様々な道民団体や労働組合の協力をえながら全道10万人署名なども行ってきた。
最近の動き
21年12月6日、北海道知事に全道連絡会として公開質問状を送付。届出だけで路線廃止ができる鉄道事業法の見直しを求める提言に知事も賛同しているが、道の受け止めを聞いたところ、「 JR北の経営努力と国の支援に期待」と回答。「主体は自分たちではない」「負担は沿線自治体で」というものだった。
線路が自治体の所有であっても、地方交付税の算定の基礎となる基本財政需要額はもちろん、その根拠となる測定単位の対象にもされない。
道路と港湾は整備費と維持費の両方が、空港は該当期間における整備費が基本財政需要額として認められている。同じ社会資本であることを考えると大いに不公平。上下分離に沿線自治体が難色を示したのは当然だ。決して地域エゴやわがままの結果ではない。
【総務省の見解は?】
Q:なぜ鉄道は対象外なのか?
→総務省:「地方交付税は、各自治体の財政力に応じて財源を再配分する仕組みなので、道路のようにどの自治体にも広く存在する社会資本でなければ算定対象にできない」
Q:しかし、海に面した自治体にしか存在しないはずの港湾は対象とされている。港湾は良くて鉄道がダメな理由はどこにあるのか。
→これ以降、総務省からの回答無し。
相次ぐ雪害による運休は、人減らしの結果。大雪時の対応のみでなく、雪の前の対応もできなくなっている。
札幌新幹線ホームも、札幌駅との接続を考えていない。新幹線で札幌に来ても各地へは車で行く。新幹線ホーム周辺の商業施設開発などでゼネコンとともに利益をむさぼれればいいという発想。新幹線建設は有害な残土問題もあり行き先は決まっていない。候補とされる地元はもちろん反対している。
今後の展望
北海道に次いで地方路線の赤字が深刻な中国地方5県を中心に、21年8月、全国23道県知事が連名で鉄道路線の廃止を認可から届出に変更した鉄道事業法改正を求める要望を国交省に提出。
廃線の影響を最も強く受けるのは地域住民、とりわけ子どもたちや高齢者といった交通弱者。存廃協議が鉄道事業者と行政だけの密室で決められ、住民参加の道がないことも大きな問題。
今年に入り沿線自治体の「存続断念」が相次いでいる(1月28日「根室線富良野―新得間」、2月3日「函館本線長万部ー余市間」)。道と国の責任放棄と、「地元負担」の殺し文句。
すでに法的には、自治体の合意がなくても届出だけで廃止は可能。協議を行うのは社会的体面等もあるが、それ以上に住民運動を抑え込むため。労働運動、住民運動などの規制力も重要。
路線を区間ごとに分割して沿線自治体の協議にゆだねる手法自体、鉄道のネットワーク機能を無視している。道や国は北海道全域の交通体系に責任を持つべき立場だが、そうした姿勢が全く見られない。環境、食糧輸送、地域再生等々に関わる鉄道の公共性を踏まえた総合的交通政策を要求すること。
新自由主義による地域生活の再編支配の端緒として国鉄の分割民営化があった。北海道商工会議所連合会、沿線の町で提言が出ている。内容に賛否はあるが、分割・民営化について地域住民や全国の人が関心を持ち、議論を交わし、行動を起こす機会にしていく必要があると考える。 |