新春インタビュー 田中委員長に聞く
組織拡大に全力を!
組織拡大への勝負の年
― あけましておめでとうございます。新たな年の抱負や課題についてお聞きします。
田中 つきつめて言えば「この1年、組織拡大の一点にかけて闘いぬこう」と決意しています。それを組合員にも訴え、私もその先頭に立ちたい。昨年1年間、全力を尽くして情勢に立ち向かい、大きな飛躍を実現したからこそそう言い切ることができると思うのです。
― それはどういうことですか。
田中 何よりも大きかったのは、1〜3月、春闘・ダイ改阻止闘争で、外注化や特急列車廃止反対を訴えて職場で闘いぬき、地域にもうって出たことを通して、第二の分割・民営化攻撃に対する闘いの構えをつくれたことです。
第2に、現場の必死の奮闘によってCTSの仲間たちが動労千葉に結集し始めた。画期的なことです。まだ14人ですが、16年に及ぶ外注化反対闘争がこうした形で実を結び始めたのです。
第3に、1047名解雇撤回闘争に下された上告棄却決定に対し、組織内外での数か月の議論を通して、断固として闘いを継続する闘争体制を確立することができたことです。
第4に、9月の定期大会で三役・執行体制を刷新し、直ちに強制出向から3年目をめぐる10・1〜 2ストや千葉運転区廃止反対闘争、そして11月労働者集会に総決起していったことです。
第5に、7〜9月安保戦争法強行採決をめぐる国会闘争に全力で立ち上がったことも大きな意味をもったと考えています。「わたしたちはストライキで闘う」と訴えましたが、それは国鉄闘争を軸にこの時代に真正面から立ち向かう動労千葉の決意表明でした。 第6に、年末に開かれた動労総連合の全国大会で「次期大会までに三桁の組織拡大を実現して結成30周年を迎えよう」という方針を決定したことです。
― そうした闘いをやりぬけた力はどこから生まれたのでしょうか。
田中 やはり国鉄分割・民営化攻撃について絶対にあいまいにしなかったことが大きかったですね。それによって敵の攻撃の本質をつねに鮮明につかみ続けることができたし、職場で起きていることも安倍政権が進める総非正規職化攻撃と一体のものとしてとらえることができた。だからどんな困難があってもぶれずに進むことができた。
第2に、検修・構内外注化をめぐる運動的、組織的、路線的困難に真正面から立ち向かいぬいたことです。この3年間は、すべてを尽くして闘いぬいて強行されたことへの悔しさの中から新たな闘いの展望をつかみとるために必死の努力を続けた過程でした。外注化が組織の中に生み出す分断や対立について徹底的に議論し実践的にのりこえてきました。そして、CTSにも闘いを拡大するなど新たな挑戦を続けた。それをやりぬいたからこそこの1年の前進がありました。
そして第3に、大量退職問題を逆手にとった組織破壊攻撃を真正面から見すえて、2年かけて意志統一し、闘争体制を確立したことです。
時代が動きはじめた
― 2016年は大激動の年になろうとしています。
田中 何もかもが噴火山の上に乗っているような状態です。ISをめぐる戦争の拡大、難民問題の爆発、EU諸国での極右勢力の台頭や国家破綻の危機の拡大、原油価格暴落、中国バブル崩壊、米利上げ、朝鮮半島ー東アジアをめぐる軍事的緊張など、資本主義体制の矛盾が出口を失って爆発しようとしています。
アメリカやフランス、ロシアはイラクやシリアに無差別の空爆を続けています。でもISのような集団を産み落としたのは彼ら自身です。石油を支配するために数十年にわたる戦争と殺戮を繰り返した。その結果生まれた鬼子がISです。そしてそれが新たな戦争を生み出そうとしている。経済的にも、エネルギーなどをめぐっても、もはや成長の余地を失って潰し合いが始まっている。
安倍政権は安保戦争法を強行して改憲と新たな戦争に踏み出している。とくに、あらゆる手段を総動員して7月参院選挙で「勝利」することにすべてをかけている。数を頼りに改憲、戦争に突き進もうというのです。
しかし、時代は明らかに動き始めています。安保戦争法の審議をめぐり3ヵ月余りにわたって無数の怒りの声が国会前を埋め尽くした。数十年ぶりのことです。日共や連合派などは、国民連合政権だとか、立憲主義だとか言って問題を国会の中だけに閉じこめようとしていますがそうはいかないでしょう。
時代の大転換
― 同じ国会で労働者派遣法の改悪も強行されました。
田中 マスコミですら「1985年以来の大転換」と報じました。1985年は派遣法が制定された年です。われわれ的に言えば今回の派遣法大改悪で、国鉄分割・民営化以来の社会の大転換が開始されようとしていると見なければならない。安倍政権は「成長戦略」の名の下に、社会を丸ごと民営化し、労働者を全部非正規職に突き落とそうとしています。ついに非正規職が4割をこえた。通常国会では残業代ゼロ法が審議され、臨時国会では「解雇金銭解決」を法制化すると言われています。国家戦略特区もいよいよ動きだす。でも、すべてがもう限界です。怒りの声が爆発し、間違いなく全部破綻します。
― 韓国ではゼネストが闘われている。
田中 「労働関係構造改革」と呼ばれていますが、攻撃は日本と全く同じです。年金改悪や雇用延長を口実とした賃金ダウン、より安易な解雇、全面的な外注化や生涯非正規職化。こうした攻撃への怒りの声が爆発し、ゼネストとなり、パククネ政権打倒闘争となって燃え上がっています。民主労総ハンサンギュン委員長には逮捕状が出され、騒擾罪が適用されても一歩も引かずに闘いが続いています。全世界の労働者の先頭を担う歴史的な闘いです。
第二の分割・民営化攻撃
― JRをめぐる情勢も大きく動いていますが。
田中 重大な事故が次々に起きています。その多くが民営化・外注化、技術継承の崩壊に起因したものです。「分割・民営化政策の破綻」が社会的な共通認識になろうとしている。JR東日本もついに多発する事故の背景には、鉄道システムチェンジ、水平分業、大量退職問題があると自認しています。民営化と外注化が原因だと認めざるを得なくなった。それほど深刻だということです。
しかしJRは、「水平分業」と称して鉄道業務すべてを外注化・別会社化してしまおうとする攻撃に突進しています。それは労働者の総非正規職化と安全のさらなる解体を意味するものです。それだけでなくJRは、鉄道輸出、各地で進められている超大規模開発、「選択と集中」「ダウンサイジング」と称して進められている地方切り捨て等、再び国家戦略の担い手、安倍政権の先兵として登場しています。それが第二の分割・民営化攻撃です。
労働運動の再生を
― 2016年の闘いの課題について伺います。
田中 この時代に求められているのは労働運動の変革です。安保戦争法をめぐる攻防も、憲法改悪への怒りの声が吹き上げるのもこれからです。沖縄でも非和解的な闘いが燃え上がっています。動労千葉の原点とも言える三里塚闘争も正念場です。国際連帯闘争を発展させ絶対戦争を止める。安倍政権を打倒するために闘いぬきます。
また、非正規職・貧困問題が爆発的に矛盾を噴出させようとしている。安倍政権は、連合を産業報国会化させることによってこの危機を乗り切ろうとしている。UAゼンセン会長との極秘会談や官製春闘など全部そのためにやっている。それは、国鉄分割・民営化―総評解体につぐ労働運動解体攻撃です。つまり、情勢がひと回り大きく回って、あらゆる条件が煮つまって、分割・民営化以来後退を続けた日本の労働運動がもう一度力を取り戻す時が来ているということです。
解雇撤回闘争を継続する
― そのためにも国鉄闘争が大事ですね。
田中 そうです。全国の仲間たちに呼びかけて新たな段階の闘いをつくりあげたい。昨年末、全国運動の呼びかけ人会議では、1047名解雇撤回に向けた新たな署名運動を始めることを確認しました。今度はJRに対する署名運動です。最高裁判決では採用候補者名簿は不当労働行為意志の下につくられていたことが確定し、それを指示していたのがJR設立委員長だったことも明らかになっている。そして国鉄改革法23条には「設立委員会が行なった行為はJRが行なった行為とする」と書かれている。つまり、JRは採用差別について明確に法的責任を負っていることが明らかになったのです。「解雇を撤回し1987年に遡って採用しろ」という新たな闘いの始まりです。
さらにこの闘いを、派遣法大改悪や残業代ゼロ法、解雇金銭解決、総非正規職化攻撃、さらには改憲と戦争政策への反撃の闘いとして組織したい。敵の側が「国鉄分割・民営化以来の大転換」を狙っているわけですから、もう一度勝負のときがきたということです。
外注化粉砕・運転保安確立
― 職場的にはやはり外注化阻止闘争が中心ですね。
田中 そうです。闘いの軸は外注化粉砕闘争を軸とした第二の分割・民営化粉砕闘争です。外注化は矛盾だらけになっている。しかも、誰もが「JRは鉄道業務全てを外注化して俺たちを放り出すつもりだ」と気がつき始めています。JR―CTSを貫く組織拡大を何としても実現して外注化を粉砕する手がかりを絶対につかみたい。
さらに、安全・事故問題こそ第二の分割・民営化攻撃のアキレス腱だということを明確にする必要があると感じています。新たな反合・運転保安闘争をつくりあげたい。この1年を通してそれを具体的な形にする。必ず大きな武器になるはずです。地域の怒りの声の組織化は今も波紋を広げ続けている。反撃の糸口は間違いなくつかみとれると感じています。
全力で16春闘に立ち上がる
― 「CTS春闘」という方針が打ち出されていますが。
田中 第二の分割・民営化攻撃の中でグループ企業の大再編が進められています。何万人もの関連の労働者がまともに生きることもできない状況に突き落とされている。我慢のならない現実です。しかもそれは日本の労働者全体が置かれている現実の象徴でもある。だから本気になって統一要求を掲げて立ち上がろうと訴えたい。CTSとJR貨物を軸に全力で16春闘に立ち上がる決意です。
大量退職問題と対決し
組織拡大へ
― そうした闘いを組織拡大に結びつけるのが課題ですね。
田中 その場合、大量退職問題を絶対に軽視してはいけないと考えています。JRはそれを逆手にとって組織破壊攻撃として仕組んでいる。JR総連も国労もなす術なく屈している。だけどわれわれはそれに真正面から立ち向かおうと腹をくくった。今年定年を迎える組合員は20名です。「外注化ではなく定年延長を」「65歳まで働き続けることのできる労働条件の確立」「本線運転士の高齢者対策の実施」を求めストライキを構えて闘いぬく決意です。
水戸の仲間たちもライフサイクル攻撃に対して年頭からストライキに立ち上がっています。被爆労働や常磐線全線開通をめぐる闘いも今年が勝負です。そうしたすべてを組織拡大の観点から闘う。あらためてこの1年、組織拡大の一点にかけて闘いぬこうと訴えたいと思います。
― ありがとうございました。
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