検修・構内全面外注化を許すな
外注化攻撃の本質
外注化は究極の合理化、労組破壊攻撃だ。民営化と外注化によって多くの労働者が非正規職に突き落とされてきた。現在の労働者政策の核心的攻撃だ。これに立ち向かえなかったら、労働運動の復権など空語だ。
アウトソーシングの時代?
『アウトソーシングの時代』という本がでている。筆者は村上世彰。「村上ファンド」の村上だ。彼が通産省の企画官をやっていた時に書いた本である。前書では「通産省がアウトソーシング(外注化)について行なった調査を一般向けにわかりやすく書き直したものである」と書かれている。つまり、内容は通産省の調査報告そのものと言ってもいいものである。この本からわかるのは、外注化が「国策」として進められたということだ。
村上はその中で、「アウトソーシングとM&A(企業の合併・買収)の活用こそ資本主義への回帰だ」と言って役所を辞め、財界の後押しを受けてファンドをつくり、M&Aに手を染めて逮捕されたのである。
90年代、アメリカでは、「外注革命」と呼ばれて全面的な外注化攻撃が進められた。企業にとっては濡れ手に粟のように利益をもたらす「革命」だったといことだ。「このままではアメリカに負ける」という論理で、財界と通産省の手で進められたのが外注化攻撃であった。次のように言っている。
丸投げ・転籍、企業の進化?
▼「米国で典型的なアウトソーシングとは、いわゆる『丸投げ』と言われる、フル・アウトソーシングをさす」▼「アメリカでは今、資産をまったく持たない経営に転換を図り“バーチャル企業“と呼ばれる状態まで進化している」▼「従来の企業の枠組みは、その輪郭を失うことになる」▼「かつて『半導体は産業の米』と言われたが、これからは『アウトソーシングは産業組織の米』と言えるのではないか」 |
これぞ「革命」だというわけである。
それに比べて日本の場合は、「巨大な体躯(たいく)を持て余し、迫りくる絶滅を前にのたうつ瀕死(ひんし)の恐竜を思わせる」などと言って、アウトソーシングを進めなければ、日本は国際競争に負けるというのだ。そして、「日米のアウトソーシングにおける最大の相違点は、人員の転籍にある」「アメリカでは数千人規模の転籍がよく見られる」と総括している。
NTTなどがやったことはまさにこれであった。NTT本体の労働者はすでに民営化時点の1割を切り、347の子会社 孫会社に分割され、労働者のほとんどが外注会社に突き落とされたのである。そして、今JRがやろうとしていることも同じだ。
雇用・賃金・年金・労組破壊
さらにこの報告書は、「日本においてフル・アウトソーシングを阻害している要因」は、「終身雇用」と「年金制度」「日本的雇用慣行(長期安定雇用・年功賃金制・企業別組合)」だと言う。そして、阻害要因を取り除くために、「慣行を支えている諸規制の見直しを、行政も早急に進めていく必要がある」というのだ。
ここで言われているのは、雇用の流動化や社会保障制度「改革」が進展すれば、フル・アウトソーシング(丸投げ・全面外注化)が成長し、それが、雇用・賃金・年金制度の解体をさらに促進し、労働者の非正規職化や労組破壊を一気に進めることができるという論理である。外注化攻撃はすべてにわたって万能薬のような役割を果たすと位置づけられている。
特徴的なのは、「企業別組合」すら妨害物だと位置づけていることだ。ほとんど資本の手先に転落してしまっているのが現実なのに、それすら潰さなければいけないというのである。
さらに村上は「行政のアウトソーシング」を主張し、「行政でアウトソーシングが進まない最大の理由は、雇用問題にある」「雇用問題を解決するには、公務員制度の改革が必要」と言う。それは、「公務員も生クビを飛ばせ」という掛け声のもとに、今まさに菅政権が進めていることだ。
「優勝劣敗の原則」が支配
こうして生まれるのが「ぬるま湯体質」から脱却した成果主義の社会だというのがこの報告書の結論である。
最後は次のように結ばれている。
「成果主義とは、『頑張った者が報われる』反面、『頑張らなかった者はもちろん、(能力的に)頑張れなかった者も報われない』のだ。ある意味で、優勝劣敗の原則が支配する緊張感の高い社会と言えよう」 |
要するに外注化とは、無数の労働者を生きることもできない現実に突き落とす攻撃だ。その発想の中には、人間の姿は消え失せている。あるのは「コスト」とか「国際競争力」といった企業と国家の利益だけである。その結果生まれたのが何十億人もが飢餓に苦しみ、一握りの者が莫大な富を手にする現在の世界であった。外注化阻止闘争は労働者の未来をかけた闘いだ。
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