国労・JR東日本の「包括和解」問題
この変質を許すな!
11月6日、国労本部・東日本エリア本部とJR東日本が「包括和解」で合意し、調印した。国労が申し立て、中央労働委員会や地方労働委員会に係属している全ての不当労働行為救済事件(配転・出向差別、組合バッジ着用による処分事件等61件)について一括「和解」したのである。
「これは土下座だ」
その理由は、「不幸な紛争状態の克服が必要だととの認識に基づき」「健全で良好な労使関係を確立するため」だと説明されている。こんな美名のもとに、謝罪も、原状回復も、実損回復もなしに、61件の不当労働行為事件を全て取り下げたのだ。全61事件の救済対象者は数万人、不当処分等で受けた損害額は400億円を越えるという。それを、差別され、処分された当事者には何の相談もなしに取り下げてしまったのである。現場からの「これは和解ではない。土下座だ!」という怒りの声が上がっている。まさにその通り、全面屈服に等しいものだ。
「健全で良好な労使関係」とは一体何のことだ。国労の幹部たちが、会社とうまくやりたいというだけのことだ。そのために、まさに土下座して、「国労とJR東日本との間には一切対立はありません」と頭を下げたということだ。そのために、不当な差別や処分を受けながら闘い続けてきた組合員を切り捨て、売り渡したということだ。
出向協定・総合労働協約も
しかも国労東日本エリア本部は、10月11日付で「出向協定」まで締結したという。さらには12月中にも「総合労働協約」まで締結する約束になっていると言われている。「総合労働協約」の締結とは、JR発足以降の20年間余りにわたってJR東日本から提案された無数の合理化攻撃の全てに一括して承認を与えることを意味する。乗務員勤務制度の改悪も、全面的な業務外注化も、業務の融合化等による大規模な要員削減も、諸手当ての切り捨ても、全てを認めるということだ。「包括和解」や総合労働協約締結は、国鉄分割・民営化の過程で吹き荒れた未曾有の国家的不当労働行為や今日に至るその継続、民営化体制の下での激しい合理化攻撃の全てを認めるということだ。
全面屈服・最後的変質
そればかりではない。今JR東日本は、駅業務の全面的な外注化攻撃や、「ライフサイクル」提案、館山運転区の廃止はじめとした運転基地の大規模な統廃合攻撃など、「第二の分割・民営化攻撃の新段階」というべき攻撃をしかけている。そうした激しい攻撃のさなに、こうした全面屈服が行なわれようとしているのだ。言うまでもなく「総合労働協約」締結は、あらかじめ一切の闘いを放棄し、その全てを容認することをも意味する。
これは、国労の最後的な変質・御用組合化に他ならない。国労執行部は、国鉄労働運動の絶滅=国鉄分割・民営化攻撃の貫徹をめぐる現在の攻撃に膝を屈したのだ。
1047名闘争の危機
そして国労本部は「最後に残されたのが1047名問題だ」という。しかし、今回の「包括和解」を見れば、国労本部が1047名問題をいかに「処理」しようと考えているかは明らかだ。それは、1047名闘争団の切り捨てに他ならない。
問題は、鉄建公団訴訟原告団や、支援共闘会議など、4党合意の際には統制処分を受けながら、激しく国労本部と対立し、独自の裁判闘争を提起してきた仲間たちまでが、国労本部とともに「政治解決路線」に埋没していることだ。
教基法や憲法改悪が現実化する現在の情勢、「日教組や自治労を壊滅させる」と公言してはばからない自民党の構え、国労本部の現状等を見れば「年内政治解決」などという条件が存在しないことは明らかだ。にも係わらずこんなことを繰り返していたら、足元を見すかされ、闘いが決定的な打撃を被ることは明らかである。
労働運動全体への攻撃
国労本部のこの変質は、単に国労だけの問題で済むものではない。そもそも、国鉄分割・民営化攻撃の本質は「国労を潰し、総評を解体して新憲法を安置する」ことにあった。以降20年に及ぶ1047名闘争を軸とした攻防は、それを許すのか否かをかけた闘いでもあった。今回の「包括和解」は、国労本部が、最後的にその攻撃に屈したことを意味する。これは、国鉄にとどまらず、日本の労働運動全体が直面する重大な課題である。
とくに国鉄1047名闘争は、連合傘下、全労連傘下を問わず、全国の数十万の労働者が、自らの課題として、労働者と労働運動の未来を左右する課題として、労働運動再生への熱い思いを込めて支援をし続けてきた闘いだ。これは、教基法改悪攻撃と一体の闘う労働運動の芽を徹底した叩き潰そうという攻撃であり、国労本部はそれに屈し、裏切ったのである。今こそ、1047名が真の意味で闘いの主体となって、改憲−戦争と民営化−労組破壊攻撃への怒りの声を結集し、労働運動の再生に向けた闘いをつくりだそう。
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