運転士を対象とした「ライフサイクル」提案絶対反対
ライフサイクルの意図は
JR東日本は「『ライフサイクル』の深度化について」と称して、一定期間運転士の業務に従事した後、5年間駅に異動するという提案を行なってきた。
提案された内容は概略次のとおりである(細部は下記参照)。
@ 運転士職に就いた者について、全員が40歳までに駅に異動する
A 駅で5年間勤務した後、6〜8割が運転士に復帰し、2〜4割が駅等の配置となる
B 対象となるのは、東京・横浜・八王子・大宮・高崎・水戸・千葉の首都圏7支社
C 賃金の取扱いにについては、成案ができ次第別途提案する
D 実施時期は07年10月1日 |
一体、これは何を意図し、何を目的としたものなのか。提案資料には具体的説明は何もない。ただ「採用開始後15年が経過し、一定の見直しをすべき時期が来ている」「お客さま視点に立脚したサービスの必要性」「輸送業務全般に習熟した人材の育成」「鉄道輸送業務全体の安全レベルの向上」という、どうとでも言える一般的なお題目が並べてあるだけで、なぜこのような「ライフサイクル」にする必要があるのかは、何も明らかにされていない。
背景に駅の要員パンク
だが、直接的な背景にあるのは、駅の要員需給がパンクしようとしていることである。だから、運転士から駅に回して何とか駅の要員需給をもたせなければいけないというのが直接の動機であることは明らかだ。
しかも、駅の要員状況は、それたけでは到底間に合わないほどピンチだから、それと併せて、来年4月から、駅業務の全面的な外注化を強行しようとしているのだ。乗降客2万人以下の駅は一括委託(まる投げ外注化)し、大規模駅は全面的に契約社員に置き換えるという攻撃だ。来年4月時点だけで千名もの駅要員の合理化・削減が強行されようとしていのだ。
首都圏7支社の駅要員は、広域異動で成り立ってきた。だがそれも限界に来ている。東北地方等からの広域異動が出せなくなった時点で、駅要員はいっぺんにパンクするのだ。今回の「ライフサイクル」や外注化提案が首都圏を対象としているのもそのためだ。
労働者のたらい回し
しかし、「駅要員が足りないから運転士から回せ、外注化しろ」というのは余りにもメチャクチャな攻撃だ。計画的に必要な要員を確保することもなく、全てを場当たり的に進めようというJR東日本のこの間の経営姿勢がここにも端的に現われている。
そもそもJR東日本は、この20年間、営業関係の専門職を全く養成してこなかった。こうなることは始めから目に見えていたことだ。今回の提案はそのツケを現場の労働者に回しているだけのことだ。
だが、運転士には要員の余裕があるというのか。否。千葉支社では運転士の要員もギリギリで、休勤で何とか業務が回っているのが現実である。大量退職はこれからも約5年間は続く。それを駅に回すようなことをやったら、職場がどんな状態になるかは、火をみるよりも明らかだ。
しかも、「全員が40歳までに駅に」などというが、このような状況のなかで、そんなことが将来にわたって維持できないことは始めからはっきりしている。
問題は必要要員の確保
労働者をロボットのようににあっちへこっちへと好き勝手に回そうというのも酷いことだが、そんなことでは問題は何ひとつ解決しないのである。コスト削減一本槍で、必要な要員を確保しようとせず、「ライフサイクル」とか、外注化でその場をのり切ろうとする経営姿勢そのものが問題だ。
国鉄分割・民営化の矛盾は、何よりも「安全の崩壊」となって噴き出した。そして今度は「要員問題」となって噴き出そうとしている。こんなものを認めたら、運転職場に居ようが、駅に居ようが職場は地獄になる。
何よりも、机の前だけに座っていて現場の実態を何も知らない者が、運転士という業務の大変さをナメきって見ている。40歳までに駅に下ろして45歳までにまた運転士に戻すなどということが簡単に通用するほど甘い仕事だと考えているのか。45歳と言えば、昔で言えば外勤や内勤、指導員におりていた年令である。そもそもこんなことをやったら、車掌から運転士を希望する者も激減するだろう。
駅では、労働者ごとまる投げ外注化で、その駅に働いている労働者は強制出向という攻撃が来年4月から始まろうとしている。現場の労働者が将棋の駒のように扱われる事態が来ようとしているのだ。 【つづく】
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