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非常識にもほどがある!
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だが、この社内報で何よりも許すことができないのは、「在来線と連携した競争力強化」と称して、その最も優れた例として、「庄内空港便と対抗するため」の「MAXとき313号」と「いなほ3号」を乗り継ぐ、昨年12月ダイ改で実施した列車設定が、図入りで掲げられていることだ。「東京〜酒田間を改正前比較で34分も短縮した」という。
一体どういう神経をしているのか!昨年12月25日、「いなほ」の転覆事故によって5名の乗客の生命を奪ったという自覚など全くなく、得意げにこんな記事を掲載する感覚は一体何なのか。安全という課題への真剣なまなざしなど欠けらもない。非常識にもほどがある。こんな社内報が出されていることを遺族の方々が知ったら一体何と思うのか。
直接関係があったか否かはともかくとして、羽越線での大惨事は、昨年12月ダイ改直後のことだ。それを誇らしげに語るとはどういうことか!
さらにこの社内報では、「ひとりのお客さまに(航空機ではなく)新幹線を選んでいただくことは以下のような意義があるのです」と言って、下記のような計算式まで掲げられている。乗客を1人飛行機から新幹線に乗り換えさせることができれば、年間1千万円以上の増収になるという計算だ。
資本主義社会において、企業の目的はつまるところ利潤の追求だとはいえ、尼崎事故、羽越線事故を引き起こし、それから何ヵ月もたっていないというのに、平然とこんなことをあおる感覚は信じられないものだ。JR西日本の「稼ぐ!」と全く同じだ。こんな感覚で鉄道が経営されたら、安全が崩壊するのは当然である。
これは何も、新幹線運行本部だけの問題ではない。JR東日本は、口先では謝罪を繰り返し、「究極の安全をめざす」とか言うが、職場の現実は180度違う。
何よりも、安全という問題を真剣に考え、コツコツと努力し、進言するような管理者が皆無と言っていいほどいなくなっている。
これは何よりも、国鉄分割・民営化攻撃以来20年余もの間、東労組と手を結んだ異常な組合潰しを一切に優先させる異常な労務政策によって生み出された、組織の恐るべき歪みだ。とくに「完全民営化」以降は、徹底した競争原理、コスト削減−利益優先政策があおりたてられた。鉄道事業部門では業務の全面的な外注化攻撃が激しく進められ、鉄道事業部門などそっちのけにしてステーションルネッサンスだとか、電子マネー事業だとか事業の中心がシフトされたのである。
こうしたなかで、安全の確立という地道な努力をするような管理者は評価されず、排斥され、一掃されていった。
そして、東労組をはじめ、労働組合までもがそれに加担していったのである。闘いなくして安全なし。この原点を今一度胸に刻まなければならない。