駅間での列車故障時に、「閉そく指示運転」で救援?
運転士には「伝令法」しか教育されていない
「救援列車と故障列車の間に他の列車がいないことを確認したから、何ら問題ない」−千葉支社回答
閉そく指示運転は、先行列車があった場合信号を超えて運転することはできない−千葉支社の取扱いは間違いだ!
動労千葉は、5月23日に成田線(我孫子線)・下総松崎〜成田間において発生した車両故障に関して、「 閉そく指示運転」 により列車を救援した問題について、8月2日、千葉支社と団体交渉を行った。
訓練センターでは「 伝令法」 により訓練
これまで千葉支社では、駅間で列車が故障して走行不能になった場合は、「伝令法」を施行し、救援列車により故障列車を救援する取扱いが行われてきた。そして、運転士が訓練センターで受ける2日間の教育の中でも、模擬列車を使って実際の「伝令法」と同じ取扱いが半日間かけて行われてきたのだ。
しかし千葉支社は、我孫子線で発生した車両故障時には、「伝令法」ではなく「閉そく指示運転」により列車を救援するという、これまで千葉支社内では全くやったこともない取扱いを行った。
本来教育とは、規程に則って行われ、全ての運転士が理解し、故障等が発生した場合には間違いなく取扱いができるようにするものだ。今回の千葉支社の取扱いは、規程を無視し、教育もされていない取扱いを運転士に行わせたという意味では、極めて重大な事態だと言わなければならない。
無茶苦茶な規程の読み替え、拡大解釈
5月23日に発生した車両故障の経過は次のとおり。
14時50分 857M 故障により下総松崎〜成田間停車
15時17分 後続の859M 安食抑止 乗客を降車させる
15時32分 成田は出車技到着、成田方2両目で漏気発見
15時43分 857M 車掌に列車防護の指示
16時00分 859M 第2閉そく信号機停車
16時10分 859M 閉そく指示運転の通告を受ける
16時30分 857M 併結終了、ブレーキ試験
16時45分 857M 119分遅延し、運転再開
今回千葉支社が、駅間での車両故障を救援するために「閉そく指示運転」を行った根拠について、「省令でも運転士の注意力で運転する方法が確立されており、閉そく信号機を超えることは何ら問題ない」「故障列車と859M(救援車)との間に他の列車がいないことを確認したから、何ら問題ない」「運転作業要領bQ00では、『故障のため列車が停車場間に停止して自力での運転ができなくなった場合、後続列車が更にその後方に停止したときは、その旨を輸送指令員に通告して、輸送指令員の指示により、状況により後続列車と併結すること』としており、この取扱いを行った」との回答を行ってきた。
閉そく指示運転の前提を欠く規程違反だ
しかし、千葉支社の回答は、規程を無視し、安全をないがしろにする極めて重大なものだ。
そもそも運転取扱い実施基準に定められた「閉そく指示運転」は、「輸送指令員又は駅長は、理由が判明しない閉そく信号機の停止現示があった場合、1分を経過したことの通告を受けた場合、列車の運転を開始しても支障がないことを確かめた後、閉そく指示運転を指示する」としている。これは、あくまでも閉そく信号機が原因不明により現示しない場合であって、列車が故障した場合の救援方法としては全く想定されていない。
しかも千葉支社作成の異常時取扱いマニュアルでは、「閉そく指示運転」について「先行列車が見えた場合は、先行閉そくによる停止信号のため、そのまま停車」と明確に記されているのだ。そして、これに基づいて運転士には、次の閉そく区間に列車の存在が確認された場合は、絶対に閉そく信号機を超えて運転してはならないということが徹底されてきた。
こうした規程を無視し、「故障列車と救援車との間に他の列車がいないことを確認したから問題ない」などと言うこと自体、JR東日本が安全をないがしろにしているとしか言いようがない。
また、千葉支社が言う「運転作業要領bQ00」は、「後続列車との併結による応急処置」であって、山手線などのように連続した閉そく区間に列車が入り、そこで故障が発生した場合身動きがとれなくなってしまうために、あくまでも応急処置として後続列車を併結するというもので、今回の事象とは全く異なるものだ。
しかも、通常行われている教育と全く異なる取扱いを行うこと自体、一番危険が伴うものであって、絶対に行ってはならないことだ。
そして、今回のような取扱いを認めた場合、何でも有りの状況になってしまい、規程が存在する意味すら無くなってしまいかねない状況だ。
千葉支社は、今回の取扱いについて、「反省すべき点はある。今後は、積極的に行うということではない。しかし、指示する場合もある」との回答に終始した。
千葉支社は、「尼崎事故」を教訓化し、規程違反の取扱いを止めろ!安全運転行動に対する不当処分を撤回しろ!
運転保安確立に向け、安全運転行動を貫徹しよう!
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