千葉支社管内では、カーブの速度制限に対するATS−P地上子は設置されていない!
ATS−P万能?
尼崎事故について、福知山線へのATS−Pの導入が遅れていたことが指摘されている。ATS−Pさえ導入されていれば、あの大惨事は起きなかったというのが全体の論調になっている。だが、事実は全く違う。
JR西日本が、利益優先の余り、安全対策への投資を徹底して抑制してきたことは強く弾劾されなければならないが、ATS−Pが万能であるかのような論調はもっと危険なものだ。
そもそも、仮に福知山線にATS-Pが導入されていたとしても、あの300Rのカーブの速度制限に対応した地上子が設置されていた可能性は無かったと見て間違いない。なぜそのことを誰もふれないのか。
カーブには無し!
JR東日本は「東京100q圏には、ほぼ100%ATS−Pを導入している」と言って、安全対策は万全であるかのような主張をしている。だが現実は、JR東日本でも、カーブの制限速度に対するATS−Pの地上子などごく一部を除いて設置されていない。支社管内も同様だ。団体交渉でも、カーブの速度制限に対しては基本的に設置されていないと回答している。
つまり、あの大惨事は、それひとつとっても、東日本で起きていてもおかしくなかったということだ。
なぜそのことを率直に語らないのか。なぜこういう現実だと言わないのか。こうした現実にふまえた安全対策を直ちに実施しないのか。107名の犠牲者をだしたあの大惨事を前にして、それが誠実な対応だと言えるのか。それが鉄道事業者としての安全確立に向けた真摯な対応だと言えるのか。
何という無為無策
そもそもATS−Pは、基本的には、停止信号に対し、運転士に何かあった場合でも自動的にブレーキをかける保安装置である。断じて万能ではない。東日本では、ポイントの速度制限に対しては、比較的ATS−Pの地上子が設置されているが、カーブの制限速度に対しては全く設置されていない。
にもかかわらず、JR東日本は、
基本動作や安全確認の徹底を指示しており、乗務員らの健康にも留意している。現状でも安全性に問題はない。(原田千葉支社長) |
とごう然と言い放つのだ。ここには、尼崎事故を真剣に教訓化しようという姿勢は微塵もない。この感覚は一体何なのか。あまりに酷い。
実際、尼崎事故の後、現場で指示されたのは、今日に至るまで、「基本動作の徹底」だけである。あれだけの大事故を目のあたりにしながら、社長名での安全確立に向けた呼びかけひとつ出されていない。何という無為無策、鈍感さ。「基本動作」と言っていれば事故が起きないのであれば、これまで全ての事故は起きなかったであろう。
これは尼崎事故を自らの問題としては何ら考えていないということだ。
保安度を下げた!
それどころではない。千葉支社の場合、昨年、保安装置をATCからATS-Pへと、わざわざ保安度の低いものに交換するということまでやっているのだ。総武快速線の錦糸町〜東京間(地下ルート)である。
理由はATCでは過密ダイヤが組めないからだ。総武快速線地下ルートは、当初からATCが導入されていたが、それをATS−Pに交換してしまったのである。ここには営利優先−安全無視の経営姿勢が如実に示されている。
そして処分の恫喝
こうした現実のなかでわれわれは、安全運転行動にたちあがった。これは本来ならば会社がやるべきことだ。
だが、千葉支社はそれを「違法行為だ」「違法争議だ」と言って、処分をもって鎮圧しようというのだ。「安全確保のためには職責を越えて一致協力しなければならない」「疑わしいときは、手おちなく考えて、もっとも安全と認められるみちを採らなければならない」のではなかったのか。断じてこんなことが許されていいはずはない。
会社に異義をとなえる奴は処分して叩き潰してしまえという姿勢こそが、尼崎事故の奥底にあるものだ。今われわれが提起しているのは、まさに「安全」という問題だ。安全に関する行動まで組合潰しの対象としか考えないという姿勢。尼崎事故は東日本と関係のないことだとして、様々な問題に蓋をし、隠そうという隠ぺい体質。これこそが安全を脅かす元凶に他ならない。
労組の社会的責任
安全を守り、自らと乗客の生命を守る闘いは、ゆずることのできない労働組合の社会的責任である。われわれは痛恨の思いで尼崎事故を受けとめた。そして二度とこのような惨事を起こさせてはならないと決意した。これは引くことのできない闘いだ。
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